<インタビュー・時の人>日立マクセル 理事 商品開発本部本部長 松岡建志

特集

2011/07/27 10:48

 日立マクセルは、カセット型HDD「iVDR」の普及を目指し、2009年にデジタルチューナー搭載の「iV(アイヴィ)レコーダー VDR-R1000」を投入し、力を注いできた。6月25日に発売した後継機「VDR-R2000」には、HDDやダブルチューナーを搭載し、長時間録画やDLNAに対応するなどして機能強化を図っている。飛躍的な進化を盛り込みながらも、価格をBDレコーダーのシングルチューナーモデル並みの4万円前後に抑えた戦略商品だ。松岡建志・商品開発本部本部長に新製品のコンセプトを聞いた。(取材・文/田沢理恵)

◎プロフィール
(まつだ けんじ)1955年、広島県生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。79年、日立マクセルに入社し、コンシューマ営業を担当。関東支店副支店長、九州支店長、記録メディア業務部長、マーケティング部長、宣伝部長、営業企画本部長、コンシューマ販売事業部長などを歴任。2011年4月から現職。

iVDRレコーダーをエントリー価格で発売
使い勝手のよさを伝えたい



Q. iVレコーダーの新製品「VDR-R2000」は、前モデルから大幅に機能が向上した。開発のコンセプトを教えてほしい。

A.
 たとえれば、超高級マグロが回転ずしで食べられるようなイメージ。つまり、レコーダーとしてど真ん中の製品に仕上げたうえで、多くの人に使っていただきたいという願いを込めて、低価格を打ち出した。正直いって、採算は度外視している。250GBのHDDや、地上・BS・110度CSデジタル放送のダブルチューナー、長時間録画、DLNAのホームネットワーク対応など、最新機能を満載している。また、独自のアルゴリズムで、録画番組履歴から自動でオススメ番組を表示する機能や、連続ドラマを2回以上録画すると自動でフォルダを作成するなど、録画の操作性も追求した。 


Q. ユーザーのターゲットは?

A.
 手軽に録画したい人からヘビーユーザーまで、幅広いユーザーをターゲットにしている。今使っているちょっと古いテレビに不満をもっている人は、「VDR-R2000」をつなぐことで操作性が確実に向上する。テレビメーカー各社のリンク機能のように、テレビと操作を連携することもできる。DVDやBD(ブルーレイディスク)は規格が複雑なので、どれを購入したらいいのか迷ってしまう人も少なくない。一方、iVDRは規格で迷うことがなく、ビデオカセットのように簡単に扱えるので、デジタル機器が苦手な方にもお勧めできる。HDD容量に制限がないというメリットもある。

Q. 外付けHDDに録画ができるテレビが増えているなかで、カセット型HDD「iVDR」の優位性は何か。

A.
 iVDRは特別なものと思っている人々が多いが、そんなことはない。外付けHDDでテレビ番組を録画すると、著作権の関係でそのテレビだけでしか再生できないが、当社のiVDRカセット「iV」は、コンテンツ保護に対応しているので、他のテレビに接続している「VDR-R2000」や、iVDRスロット付きの日立の録画対応テレビでも番組が再生できる。また、「iV」に使用するHDDには車載用のものを採用し、耐久性にすぐれたガラス繊維を配合した特殊樹脂のボディによって、信頼性の確保に力を入れている。

Q. iVDRのよさをどのように訴求していくのか。

A.
 前モデルの「VDR-R1000」は、チューナー売り場での展開が中心だったが、今後はこれに加えてBDレコーダー売り場にも広げていく。「iV」についても、以前は500GBが1万5000円前後だったものを9800円に下げ、購入しやすいようにした。年末に向けてレコーダーやプレーヤーなどラインアップの拡充を図り、「iV」を広く普及させたい。

・Turning Point

 「もともとは営業マンだった」という松岡本部長。「営業は、どうやったらユーザーが買ってくれるのか、喜んでくれるのかを考えて、売れる仕組みをつくるのが仕事。セールスではなく、クリエイティブ」をモットーに取り組んできた。その後は宣伝を担当。2007年に放送したマクセルDVDのテレビCM「ずっとずっと。新留小学校篇」を担当したことが、転機になった。

 CMは、廃校になる小学校で、最後の卒業生となった3人の生徒を主人公にした作品。後に「第47回ACC CMフェスティバル」のテレビ部門で「総務大臣賞/ACCグランプリ」と「ジャーナリスト賞」を受賞し、大きな評価を得た。「マクセルが考える“思いを残す”ということを凝縮して伝えたかった」という。クリエイティブをモットーに取り組んできた営業経験が、宣伝を担当することで試され、受賞に結実した。

※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2011年7月25日付 vol.1392より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは