年間販売台数第1位のベンダーを表彰する「BCN AWARD」のセキュリティソフト部門で、かつて7年連続トップの座を維持してきたシマンテック。しかし、ここ3年は2位に甘んじている。「今のシェアには満足していない。常にNo.1を目指している」と語るロジャー・ヨーダー コンシューママーケティング統括本部長に、今後の取り組みと目標を聞いた。(取材・文/田沢理恵)

◎プロフィール
米イリノイ州出身。マイクロソフト、ゲッティイメージズ、ゲイトウェイ・コンピュータ、アップルコンピュータでディレクターやシニアマネジメント職を歴任。2008年1月にシマンテックに入社し、コンシューママーケティング部部長に就任。同年より現職。

今のシェアには満足していない
PC本体売り場での露出で拡大を狙う



Q. 2008年の年間シェアNo.1を表彰した「BCN AWARD 2009」以降、ライバルにその座を譲った。

A.
 「ノートン」シリーズは、脅威に強い製品づくりを目指してきた。ただ、最初のコードベースに積み重ねるかたちで開発してきたことで、データが重くなっていた。いくらプロテクション能力が高くても、ベストパフォーマンスを発揮しなければ、ユーザーからは支持されない。08年9月に発売した「ノートン 2009」では設計を大幅に見直し、プロテクション能力はもちろん、パフォーマンスの向上を図ったが、ユーザーに理解してもらえるまでに時間がかかってしまった。もちろん、今のシェアには満足していない。常にNo.1を目指している。


Q. No.1を奪還するための戦略は?

A.
 日本は、世界のなかでもセキュリティソフトの普及率が低い国だ。2年前の調査によれば、セキュリティソフトを使っていないPCユーザーが40%もいた。さらに、60%の利用者のうち、すべてのユーザーが最新のプロテクションを施しているわけではないだろう。推測だが、PCユーザーの50%程度は、最新のセキュリティソフトを利用していない可能性が高い。

 シマンテックは昨年1年間に、2億8600万の新しいマルウェアの亜種を発見した。これは、1秒間に新たに9種類の脅威が発生しているという勘定になる。最新のセキュリティソフトをインストールしていなければ、非常に危険だ。また、サイバー犯罪の手口は巧妙化し、ユーザーが気づかないところで被害にあう危険性もある。われわれは、イベントの場や販売パートナーの力を借りて最新のセキュリティの必要性を訴えていくことで、需要を喚起していく。セキュリティソフトは、PCを購入するときに同時に導入するケースが多い。PC本体の売り場で露出することで、お客様を獲得していく。

Q. 今後の展開は?

A.
 インターネットを利用する環境が、PC以外のデバイスに広がり、またデータはデバイス内だけでなくクラウドにも置かれるようになった。こうした展開のなかで、われわれは今年3月、Android OS向けの「モバイル セキュリティ」を発売した。また、日本ではまだ少ないが、今後は、公衆無線LAN環境が広がり、アクセスポイントが増えていく。デバイスやアクセスポイントが広がるということは、サイバー犯罪の侵入経路も広がるということだ。ノートンは、「あなたの情報をプロテクトする」をテーマに、シリーズ全体をブランディングしていく方針だ。すでに米国の飲食店で行っているように、将来は店内の「Wi-Fi」ロゴの隣にチェックマークデザインの「Norton by Symantec」ロゴを付けて、安全性がひと目でわかるようにしていきたい。

・Turning Point

 2008年9月に発売した「ノートン 2009」で製品の設計を大幅に見直したシマンテック。これによって、従来は弱みだったパフォーマンスを強みに変えた。これは、マーケティング活動をプランニングするうえで大きな自信になる。当時、入社9か月目でコンシューママーケティング部部長の職にあったヨーダー氏にとっても、「2009」の発売は、ターニングポイントだった。

 そして今、再び「新たなターニングポイントがみえてきている」という。キーテクノロジーが、クラウド、モバイル、ソーシャルネットワークへと変化していく環境下で、同社が掲げるテーマ「Norton Everywhere」が、セキュリティに変革をもたらそうとしている。

※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2011年7月18日付 vol.1391より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは