シャープ、プラズマクラスターがインフルエンザウイルス低減、臨床試験で実証

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2010/11/09 18:34

 シャープは、11月9日、高濃度プラズマクラスターイオンが、インフルエンザウイルスの人間への感染率を低減する傾向があると発表した。生物統計学を専門とする大橋靖雄・東京大学大学院医学系研究科教授監修の下、透析病院で行った臨床試験で実証したもの。

 シャープは、これまで試験機関で高濃度プラズマクラスターの浮遊ウイルスの感染力抑制効果検証を行ってきたが、人間を対象とした臨床試験は初めて。太田賢司・シャープ取締役専務執行役員は、「メーカーが臨床試験を実施するのは難しく、ヒトへの効果検証が課題だったが、今回、文部科学省の橋渡し研究支援推進プログラムを通じて、大橋教授の協力を得ることができた」と経緯を語った。 

太田賢司・シャープ取締役専務執行役員

 臨床試験は、東京都・神奈川県内の透析病院44施設、患者3407名の同意を得て、2009年12月1日から2010年6月30日まで行った。治療薬の薬効を客観的に調べる「二重盲検法」を用い、透析室の各フロアのエリアを、1000個/cm3の高濃度プラズマクラスターイオンあり/なしのエリアに分けて実施。その結果、インフルエンザウイルスは、イオンありのエリア1154例のうち9件(名)が発症、イオンなしのエリア1274例のうち14件(例)で発症した。これによって、高濃度プラズマクラスターエリアのインフルエンザ発症件数は、イオンなしのエリアに比べて30%低減し、発症低減の有効性を確認した。 

大橋靖雄・東京大学大学院医学系研究科教授

 試験を監修した大橋教授は、試験結果について、「ヒトへのインフルエンザウイルス感染低減の傾向が確認された。今後、疫学・臨床研究による検証が必要ではあるが、うがい・手洗いと同じような日常の対策として期待できる」と評価。さらに、「ダニ・花粉などによるアレルギー疾患、カビによる感染症のリスク低減効果についても研究テーマとして検討したい」と、プラズマクラスターへの期待を述べた。

 シャープは、今後もプラズマクラスターの臨床研究を強化し、技術開発を進めていく。太田専務は、「世界の人々の健康を守ることに貢献していく」と力強く語った。