小型・軽量のムービーカメラに存在感、台数ベースで1割を超す

特集

2010/04/08 11:31

 撮影した動画を動画共有サイト「YouTube」などにアップロードして楽しむ用途に適した小型・軽量の「ムービーカメラ」。PCとつないで使うことを前提とした新しいジャンルのデジタルビデオカメラだ。三洋電機が03年に「Xacti(ザクティ)」を発売した後、09年秋以降には、日本ビクターの「PICSIO(ピクシオ)」やソニーの「bloggie(ブロギー)」が登場したことで活気を帯びてきた。そこで、重さ200g未満のビデオカメラを「ムービーカメラ」と定義して、「BCNランキング」で最新の動きをチェックしよう。

ポケットに収まる軽量・小型のムービーカメラ



主なムービーカメラ(左上が日本ビクター「PICSIO」、左下がソニー「bloggie」、右が三洋電機「Xacti」)

 一般的なビデオカメラは、子どもの誕生日や卒業式、入学式など人生の節目のイベントを記録することが多く、いわばハレの日に活躍するもの。一方、ムービーカメラは、毎日持ち歩いて、まるで携帯電話やコンパクトデジタルカメラで写真を撮るように、日常の何気ないシーンの撮影に向いている。また、ビデオカメラは、撮影時にベルトで手を本体に固定して持つ横型のタイプが多いが、ムービーカメラは本体を握って持つ縦型が主流となっている。

 
 「BCNランキング」で、ここ4年の3月のムービーカメラの割合をみると、07年3月は台数ベースで3.7%、08年3月は4.1%、09年3月が5.5%と1割にも満たない状態だった。しかし、10年3月には11.6%まで成長し、存在感を増してきた。三洋日本ビクターソニー以外にも、参入するメーカーが続々と現れて製品数が多くなったことが構成比を押し上げた。

ムービーカメラコーナーを設ける家電量販店(写真は東京・ビックカメラ有楽町店本館)

 最近では、家電量販店でムービーカメラ専用のコーナーを設置する店舗もある。東京のビックカメラ有楽町店本館は、ビデオカメラの「小型・軽量モデル」を一か所に集め、そこでムービーカメラを展示している。コーナー担当の冨高優氏によると「女性だと20代、男性だと30-50代が購入している」ということで、性別を問わず幅広い世代にニーズがあるようだ。
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首位は三洋電機、2月の「bloggie」発売でソニーが浮上



 ここで、いま売れているムービーカメラをみていこう。なお、売れ筋はカラーバリエーションを合算したシリーズ別で集計した。2010年3月のランキングで1位を獲得したのは三洋の「DMX-CG11」で、販売台数シェア37.2%だった。三洋は03年「Xacti」を発売、ムービーカメラのパイオニアとして力を入れてきた。冨高氏は、Xactiについて「指名買いがほとんど。特に、雪や水を気にせずにレジャーで活躍する防水モデルが人気」と語る。

ムービーカメラ(※) シリーズ別販売台数シェア トップ10
※重さ200g未満のデジタルビデオカメラ、カラーバリエーションは合算して集計
順位 メーカー シリーズ 重さ(g) 発売月 販売台数
シェア(%)
1 三洋電機 DMX-CG11 173 2009/09 37.2
2 三洋電機 DMX-CS1 142 2010/02 15.7
3 ソニー MHS-PM5K 130 2010/02 9.1
4 三洋電機 DMX-CG110 159 2010/02 7.4
5 ソニー MHS-CM5 196 2010/02 5.2
6 Mitsumaru Japan UV-021 39 2009/12 3.9
7 日本ビクター GC-FM1 95 2009/09 3.3
8 サンコー VOPSSM42 30 2010/01 2.5
9 エグゼモード Scooop 85 2009/09 1.6
10 サンコー VOPSSM4G 35 2009/07 1.2
※オレンジは標準(SD)画質、そのほかはハイビジョン(HD)画質
「BCNランキング」2010年3月 月次<最大パネル>

 2位も三洋で、2月に発売した「DMX-CS1」が15.7%。デザインを一新し、ズボンのポケットに収まる薄型ボディに仕上げた。3位はソニーの2月発売の「bloggie」で、回転式のレンズを備える「MHS-PM5K」が9.1%だった。家電量販店では「『bloggie』の発売当時の反響は大きく、予約して買うお客様が多かった」(冨高氏)そうで、これからの売れ行きに期待している。

三洋電機の「DMX-CG11」

 この半年間のメーカーの動きをみると、首位は三洋で販売台数シェア50-60%程度を保ち、3月は61.1%だった。一方、2月に「bloggie」を発売したソニーは14.3%で2位につけた。ソニーは2月に3位以下に差をつけて21.1%まで浮上したが、3月はややシェアを下げた。3位はサンコーで5.4%、4位はエグゼモードで5.3%、5位は日本ビクターで3.3%だった。


 ムービーカメラは、日本では新しいジャンルとして立ち上がったばかりだが、北米ではすでにメジャーな製品として受け入れられている。日本で今後普及するかどうかは未知数だが、首位の三洋は「PCとの親和性を軸に、具体的な利用シーンを提案していく必要がある」(三洋電機コンシューマエレクトロニクス 東京中央営業所 山下博氏)とメーカーの販促活動の重要性を指摘する。現在は、店舗でのユーザーの反応はいいということで、冨高氏は「これから確実に市場は伸びていく」と確信している。

三洋電機は「Xacti」をコンパクトデジタルカメラコーナーに置いている(写真はビックカメラ有楽町店本館)

 ビデオカメラだけでなく、携帯電話や第5世代のiPod nano、コンパクトデジタルカメラなど、手軽に動画撮影ができるデジタル機器が増えたことで、動画が身近になっていることは確かだ。日頃から使うデジタル機器の一つとして、ムービーカメラを選択肢に入れてもよさそうだ。(BCN・井上真希子)


*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店からPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで127品目を対象としています。