見積書や請求書はもちろん、1000件を超える住所録を1枚のスプレッドシートで管理している会社は珍しくない。しかし、入力作業やレポート作成、検索などの効率を考慮すると、表計算ソフトで大量のデータを扱うのには無理がある。そこで注目したいのが、データベースソフトだ。ファイルメーカーの「FileMaker Pro 10」は、業務にも使える本格的な機能をもち、豊富なテンプレートなどの“即戦力”を備えている。今回は、表計算ソフトからのデータ移行を中心に、バージョン10で導入した新機能を紹介しよう。

データベースソフト「FileMaker Pro」とは?



 FileMaker Proの歴史は古く、四半世紀前の1985年までさかのぼる。当時、PC向けのデータベースソフトといえば、dBASEのようにGUI(グラフィカルユーザーインターフェイス)をもたないものがほとんどだった。しかし、米Nashoba System社が「NutShell」というMS-DOS向けデータベースソフトをMacintoshへ移植、GUIを備えた「カード型データベース」という新ジャンルを拓いた。このNutShellのMac版が、FileMaker Proの原型だ。

FileMaker Pro 10

 その後、製品はアップルのソフトウェア部門である米クラリス(現ファイルメーカー)が買収。現在のFileMaker Proへと名称を変更した。1995年発売のバージョン3ではリレーショナルデータベースへと進化。バージョン7では、1フィールド2GB、1ファイル8TBに対応し、実質的に容量の制限がなくなった。

 さらにバージョン9では、外部SQLデータソース(ESS:External SQL Data Source)の参照が可能となり、ユーザー数が100人を超える事業所でも導入できる基本性能を獲得した。いまやユーザーがMacよりもWindowsのほうが多くなっているという事実は、このようなFileMaker Proの製品特性が企業で受け入れられているからだといえる。

住所録や請求書、見積書などの作成に力を発揮する

 一方で、データベースであることを意識させない洗練されたデザインなどは、アップルのMac OS用ソフト「HyperCard(ハイパーカード)」の影響を受けている。「HyperCard」とは、複数のカード状画面にレイアウトした文字や画像をリンクで結び、データベースやゲームなどのコンテンツを作成する業務用ソフト。既に開発とサポートは終了している。

個人向けデータベースソフト「Bento 2」「Bento 3」のデータベースをインポートできる
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手軽にデータベースを構築できる「FileMaker Pro 10」



 それではさっそく、「FileMaker Pro 10」の使い勝手をみていこう。一般的に、データベースをつくる作業は、なかなか難しいものだ。在庫管理データベースを例に挙げると、メーカー名や商品名、在庫数といった要素を表の形(テーブル)にまとめ、それを結びつける(リレーションシップ)ことで、どのメーカーの何という商品の在庫がいくつあるか、という情報を管理するデータベースが作成できあがる。こうした要素に加え、データ入力用画面(フォーム)や、データを出力するときの帳票(レポート)のデザインも必要になってくるので、初めて取り組むときの負担は相当なものだ。

クイックスタート画面には30種類のテンプレートを用意する

 FileMaker Pro最大の特徴は、こうしたノウハウがない初心者でも、データベースを手軽につくることができる点だ。起動直後に表示するクイックスタート画面には、30種類の「Starter Solutions」というテンプレートが登録してある。これを選択するだけで、一般的なデータベースを作成できるのだ。時間は数分程度あれば十分で、テーブルの作成もフォームのデザインも、一から作る必要はない。

 他のアプリケーションで作成したデータをもとに、データベースを新たに作成することもできる。最新バージョンのFileMaker Pro 10は、Microsoft ExcelやCSVファイルなど表計算ソフトで作成したファイルのほか、同社の個人向けデータベースソフト「Bento 2」「Bento 3」で作成したデータベースにも対応した。

付属のテンプレートで作成した事例(CDデータベース)

Excelブックからデータベースを作成、画像の挿入もカンタン



 Excelブックを例に、ファイルインポートの手順を追っていこう。インポート作業を開始すると、フォーム形式の「レイアウト1」と表形式の「レイアウト2」を自動で作成する。そのうち、FileMaker Proとしての真骨頂を発揮するのは、フォーム形式だ。

Excelブックをアイコンにドラッグするか、クイックスタートから開けば、インポートを開始する

 Excelの「行」に相当する「レコード」に、画像データを挿入する手順をみながら説明しよう。インポートしたExcelブックに画像のデータをもつ列は存在しないので、そのままの状態ではデータベースに画像を登録できない。そこで、データベースの管理画面を表示し、「フィールド」のタブにタイプ「オブジェクト」を追加すればよい。

 途中、データベースの保存を促すダイアログボックスが表示されるが、これで通常の作業画面に戻り、「レイアウト1」を表示した状態で「レイアウトの編集」ボタンをクリックすれば、先ほどのフィールドが表示されている。あとは周囲をドラッグするなどして表示領域を決定し、「レイアウトの終了」ボタンをクリックすれば、ドラッグ&ドロップなどの方法で画像データを登録できるようになる。

住所データをもとにGoogleマップの表示が可能

 この「レイアウトの編集」モードを利用すると、Webとの連動ができる。例えば、ウインドウ内にWebページを配置する「Webビューアツール」を利用すれば、顧客の住所データをもとにGoogleマップを表示したり、関連する語句をWikipediaで検索した結果を表示したり、といった使い方ができる。レイアウトの自由度も高い。FileMaker Proならではの機能といえるだろう。
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操作性を高める新機能――外部ソフトいらずのメール送信など



 このほか、FileMaker Proには、データの閲覧・入力を行う「ブラウズ」、指定した条件に一致するデータを探し出す「検索」、ブラウズモードの画面デザインを加工する「レイアウト」、データを帳票として印刷・エクスポートするときの確認を行う「プレビュー」という4つのモードを揃える。このうち最も利用頻度が高いと考えられるのは、データ入力に使うブラウズモードだ。

ダイナミックレポート機能によって、ブラウズモードで入力したデータがすぐに集計結果に反映する

 FileMaker Pro 10の新機能「ダイナミックレポート」は、ブラウズモードの使い勝手を向上したもの。同モードで入力したデータの内容を直接集計結果に反映するので、プレビューモードとブラウズモードを行き来してデータを確認・修正する必要がない。

 また、メール送信も便利な新機能の一つだ。従来のバージョンでは、外部メールソフトで送信しなければならなかったが、FileMaker Pro 10は直接SMTPプロトコルを扱えるようになり、ダイレクトにメールを送信できるようになった。メールソフトとの相性問題を考慮する必要がなくなり、メール送信の利便性が向上した。顧客データベースに蓄積したアドレスあてにメールマガジンを一括送信する、といった処理がスマートに処理できるようになったのだ。

外部メールソフトを使わずに直接メールを送信できる

 このように、FileMaker Pro 10は表計算ソフトの移行に便利な機能を豊富に備える。OracleやMySQLなど外部SQLデータソースを参照するといった、エンタープライズ向けRDBMS(リレーショナルデータベース管理システム)との接続も可能で、企業で活躍する拡張性を十分確保している。オンラインストアの価格が、Mac/Windows両対応のダウンロード版(9クライアントまで同時接続可能)で3万9900円という価格も、表計算ソフトからの移行を検討するユーザーには手頃といえるだろう。(ライター・海上 忍)