3年前、オリンパスのICレコーダーは前年比1割減の憂き目にあっていた。録音機能つきの携帯オーディオプレーヤーに押された。渡邊嘉巳がICレコーダーの営業担当に配属されたのは、ちょうどこのころ。ビジネスマンの会議録音用途がメインという地味なICレコーダーの売り場は、「携帯オーディオにどんどん奪われた」。

基本に忠実、トップシェアへ



――国内営業統括部 営業企画1グループ 渡邊嘉巳 課長

 会議録音だけではICレコーダーに将来はない。まずは「新規の用途提案」に着手。根強い人気がある英会話の復習用途の録音や楽器練習、携帯オーディオ機能、メモ録、学校や各種スクールの授業の録音、ポッドキャスト… 「ICレコーダーならではの高い録音能力」を前面に出しつつ、携帯オーディオの機能も取り込む戦略に出る。有名講師による英会話ポッドキャスト番組も始めた。毎週制作し、配信数はすでに100回を超える。

 ユーザーへの新しい用途提案、製品の開発、販売店への説明と、基本パターンを忠実に実践することでマーケットを創出する。製品開発は、東京・八王子の事業所を行き来して、マーケットのトレンドを伝える。ニーズと製品のギャップを埋めるため営業と開発側との「激しいやりとり」も何度か経験した。

 今年2月には、音楽CDを超える音質で録音できるリニアPCMレコーダーを出した。録音時に音源を圧縮しない方式で、劣化が少ない。録音機能に優れたICレコーダーの特性をさらに伸ばした新ジャンルの製品だ。手のひらサイズで、かつ実売5万円を切る価格帯で他社をリード。動画投稿サイトなどネット上での発表の場が増えたことも後押しし、歌や演奏を趣味にするユーザーを中心に「予想を上回る需要」を引き出す。価格競争が激しいICレコーダーで単価アップにも貢献。音楽だけでなく「高性能ICレコーダーとして汎用的に使うユーザーも増えている」と、より一層の用途拡大も期待できる。

 2008年1-10月のBCNランキングによれば、オリンパスの販売台数は前年同期比42%増、金額は同25%増えた。台数シェアは49%とライバルに差をつける。07年は2年連続トップシェアを獲得しており、今年も「トップを狙える」ポジションについたところだ。(文中敬称略)(BCN 安藤章司)

渡邊嘉巳 課長

渡邊嘉巳 課長


週刊BCN 2008年11月24日付 Vol.1261より転載