クレオ、人と人を結ぶハガキ作成ソフト「筆まめ」

特集

2008/09/22 11:02

萩原義博 執行役員 コンシューマサービス事業担当 筆まめサービス事業部長<br /><br /> 毎年、9月の中旬あたりから葉書・毛筆ソフトの新製品がメーカー各社から発表される。ここから年賀状を軸とする商戦が始まるのだ。筆まめサービス事業部長の萩原義博は、販売戦略面の陣頭指揮をとる立場にある。

●『人と人とのお付き合い』を大切に

萩原義博 執行役員 コンシューマサービス事業担当 筆まめサービス事業部長

 年賀状を送る枚数が一番多い干支は「戌」、逆に少ないのは「巳」など、という傾向にあるそうだ。「18年もの間、葉書・毛筆ソフトを手がけていると、自然に分かる」と萩原は言う。その違いは消費者の、年賀状の「つくりやすさ」にあるのだとか。

ケータイで年賀のメッセージを贈る人が増えるなど、昔ながらの年賀状は減少傾向にある。だが、「筆まめ」はシェアを落とすことなく、今もトップを走り続けている。

トップシェアの要因は「顧客の声を製品に反映し続けてきた」ことにある。ユーザーにアンケートをとると、上位にあがるのは「簡単に○○したい」という要望だ。「筆まめVer19」の売りの一つとして説明書いらずの「分かりやすさ」を前面に押し出した。

年ごとにニーズは変わる。毎年行っている消費者へのアンケートの結果、購入する際に重視するポイントとして「写真入り年賀状を簡単に作成できる」や「デジカメ画像の編集・加工ソフトが付属している」がともに40%ほどだった。使いたい写真を指定するだけで、写真入り年賀状が即座に作れる「デジカメデザイナー」を搭載したことでニーズをつかむ。

トップシェアは維持しているとはいえ、葉書・毛筆ソフト全体の市場が年々小さくなっていることは確か。店頭販売やオンラインでのダウンロード販売のほか、年賀印刷などのサービスも展開しているが、「近い将来を見据え、現在の販売形態を変えたらどうなるかといったことを思案中。例えば定額課金にするのか、ASPによる提供なのかも含めて試行錯誤している」という。

クレオは長らくPC用のソフトを手がけてきた。だが、時代の流れにより、デスクトップPCから、モバイルPC、携帯電話、iPhoneなどのスマートフォンやゲーム機、さまざまな端末の多機能化が進んでいる。「従来どおり、PCだけにとどまっていてはいけないと考えている」。利用シーンにより、筆まめと遠からぬ領域で得意分野を持つソフトメーカー、ハードメーカーとタイアップを図る。こうした積極的な提携は「競合との差別化になる」と萩原は判断している。

今年は出荷ベースで60万本、シェア50%を狙う。「筆まめには『人と人とのお付き合い』というメッセージがこもっている。PCを開くのは年1回、プリンタを使うのも年1回というユーザーもいるが、もっと高い頻度で日常的な付き合いのなかで使ってもらえるようなソフトでありたい」と願いを込める。(文中敬称略)(BCN・鍋島蓉子)

週刊BCN 2008年9月22日付 Vol.1252より転載