32V型で下げ止まりの兆候、サイズ別でみた薄型テレビ動向とメーカー勢力図

特集

2008/05/26 02:23

 北京オリンピックを直前に控え、薄型テレビメーカーは各社とも「特需」を見込んだ最新モデル投入している。一方、価格の下落は各サイズで進んでいるものの、下げ止まりの兆候も見え始めた。そこで、「BCNランキング」を使って画面サイズを軸にした人気モデル動向や価格推移をまとめながら、サイズ別のメーカー勢力図を描いてみた。

●売れ筋サイズはやはり32-37V型、個室・1人暮らし用の20V型モデルも順調

 まず、液晶テレビやプラズマテレビ、有機ELテレビなども含めた薄型テレビ全体で、サイズ別の売れ筋動向をみてみよう。4月の1か月間で販売台数シェアが最も高かったのは、人気の32V型を含む30V型台。全体の40.1%を占めた。


 次いで多いのが20V型台で、29.7%を占めた。20V型台は個室や1人暮らし用として購入されるケースが多く、新生活のスタート期である3-4月は販売台数が伸びる傾向にある。1.3%を占める10V型未満のクラスは、ワンセグテレビなどを中心とするポータブルタイプが多い。

 一方、大型モデルでは40V型台が17.4%、50V型以上は2.5%。合算すると約2割を占めている。オリンピックイヤーの今年は、大画面で観戦したいというニーズの高まり、このクラスが伸びることも予想される。

●20V型台ではリンク機能非対応のAQUOSが1位、安さが決め手か!?

 それでは5月第1週(5月5-10日)の週次データで、画面サイズ別の売れ筋をチェックしてみよう。今回は売れ筋の20V型台、30V型台を紹介する。まず、20V型台では、上位10モデル中8モデルが20V型。上位4モデルがシャープ製と、同社の人気が高い。


 1位はシャープの20V型モデル「LC-20EX3」で、販売台数シェアは15.3%。昨年夏に発売したモデル。5月22日にBCNが集計した市場推定価格(以下同)は7万400円だった。解像度は1366×768、輝度は450cd/m2、コントラスト比は1200:1。地上アナログチューナーのほか、地上・BS・110度CSデジタルチューナーを内蔵する。なお、シャープ製のDVDレコーダーなどをテレビのリモコン1つで操作できるリンク機能「AQUOS ファミリンク」には対応していない。


 2位にはグリーン、ベージュ、ブラック、ホワイト、レッドの5色のカラーバリエーションで展開しているシャープの「D30」シリーズのブラックモデル、「LC-20D30-B」だ。サイズは20V型で、シェアは10.5%。解像度は1366×768、輝度は450cd/m2と1位の「LC-20EX3」と同じで、コントラスト比は1500:1。しかし、「LC-20D30-B」は「AQUOS ファミリンク」に対応している。市場推定価格は8万4900円。

●激戦区の30V型台ではシャープ以外のメーカーも健闘

 一番人気の32V型を擁する30V型台では、トップ10では32V型、37V型が仲良く5モデルずつランクインしている。1位はシャープの32V型モデル「LC-32D30-B」で、シェアは8.9%。20V型台で1位のモデルは15.3%と2桁のシェアを獲得できているが、30V型台では1位でもシェアは1桁。競争の激しさを物語っている。


 「LC-32D30-B」の解像度は1366×768のハイビジョン対応、輝度は450cd/m2、コントラスト比は1500:1。地上・BS・110度CSデジタルチューナーも搭載するほか、「AQUOS ファミリンク」にも対応している。2位はシャープの37V型モデル「LC-37DS3-B」で、シェアは6.6%。解像度は1920×1080のフルハイビジョン(フルHD)対応で、輝度は450cd/m2、コントラスト比は2000:1、視野角度は176度。


 液晶テレビが上位を占める中、5位には松下電器産業の37V型のプラズマ「TH-37PX80」がシェア4.1%でランクインした。解像度は1024×720で、コントラスト比は15000:1。

●強いのは、20・30型台でシャープ、40V型台でソニー、50V型以上で松下

 それでは、薄型テレビ全体のサイズ別で、メーカーの勢力図をみてみよう。全サイズの合計ではシャープが41.1%で1位。2位がソニーで19.4%、3位は松下で15.4%、東芝は10.4%で4位だった。


 次に20V型クラスで過半数のシェアを獲得したのはシャープで、シェアは51.9%だった。以下、2位はソニーで21.2%、3位は松下で10.9%だった。


 30V型クラスでも、1位はシャープで42.1%。続く2位は東芝だが、シェアは17.3%とシャープと大きな差がついた。3位はソニーで16.1%、4位は松下で13.7%と健闘している。

 ひとまわり大きな40V型クラスでは、ソニーが頭角を現し33.2%で首位を獲得した。2位はシャープで30.3%、3位は松下で19.3%だった。

 最後に大型の50V型以上の勢力図をみてみよう。1位はプラズマにも強い松下が獲得。シェアは47.4%だった。2位はシャープで32.4%。なお、日立製作所は20V型クラスではシェア0.4%と控えめだが、30V型台、40V型台・50V型以上それぞれ7%を超えるシェアを確保している。

●平均価格が上昇に転じた32V型、下げ止まりの兆候か?

 最後に32V型、37V型、40-42V型の07年7月から08年4月までの税別平均価格推移をみてみよう。一頃「1インチ1万円」といわれたのも今は昔。3年前に比べ半額ほどまで価格が下がっている。


 32V型、37V型、40-42V型とも、07年夏から緩やかに価格が下がり続け、年末商戦期には32V型で10万6000円台までになった。ところが、今年に入って下落率はやや緩やかになっている。特に、32V型モデルの08年4月の平均価格は08年1月と比べると逆に約4000円も上昇している。各社が投入した新モデル効果によるものだと思われる。しかし、一時的とはいえ平均価格の上昇は珍しい現象。どこまでも下がり続ける印象が強かった薄型テレビだが、原油高を始めとする材料費の上昇もあり、ボリュームゾーンの32V型からそろそろ下げ止まりの兆候が出始めているようだ。(BCN・山下彰子)


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