伸び続くデジタル一眼、10万円切る低価格機がユーザーの裾野広げる

特集

2007/06/20 23:56

 レンズ交換式のデジタル一眼レフカメラの人気が高まっている。「BCNランキング」で、デジタルカメラ全体に占めるデジタル一眼の割合を見ると、販売台数シェアが06年6月の3.6%から07年5月には8%まで上昇。特に初心者向け機種で低価格の小型軽量機が登場し始めており、年配の初心者層にも市場が広がりつつあるようだ。

 レンズ交換式のデジタル一眼レフカメラの人気が高まっている。「BCNランキング」で、デジタルカメラ全体に占めるデジタル一眼の割合を見ると、販売台数シェアが06年6月の3.6%から07年5月には8%まで上昇。特に初心者向け機種で低価格の小型軽量機が登場し始めており、年配の初心者層にも市場が広がりつつあるようだ。

●10万円を切り始めた市場が拡大するデジタル一眼レフカメラ

 数年前には本体だけでも価格が10万円以上で「高い」というイメージがあったデジタル一眼レフだが、メーカー各社が初心者向け機種を拡充。去年秋から次々と新製品を投入したことから競争が激化している。また、実勢価格が8万円前後の機種を投入したメーカーもあり、店頭での価格も下がってきた。「BCNランキング」で算出した平均価格は、06年6月では13万円台後半だったが07年5月には約10万円と、ここ1年で約3万6000円ほど安くなっている。



 現在、デジタル一眼レフを購入する人たちの中でも特に「5-60代の女性の年配層が増えている」(國丘大輔・ビックカメラ有楽町店カメラコーナー主任)といい、市場の裾野が広がりつつある。価格が下ったことが大きな理由だが、それ以外にも特に初心者向けの機種では撮影などの設定がコンパクトデジタルカメラ並みに簡単になった操作性や画素数が上がり画質が良くなったことも背景にある。

 カメラの軽量化も大きな要素になっている。世界最軽量をうたうオリンパスの「E-410」の375gをはじめ、ニコン「D40X」の495g、キヤノン「EOS KissデジタルX」の510gといった、撮影時間が長くても疲れない軽量タイプをメーカーが発売。こうした点も、「コンパクトデジタルカメラにはない美しい写真を撮りたい」と思いながらも、価格や操作性などでデジタル一眼レフには距離を置いていた人たちを引き付けているようだ。

●新規ユーザーの購入ポイントは「価格」と「操作性」

 新たにデジタル一眼レフを買い求める人たちが購入ポイントにしているのは「『操作性』『価格』の2点」(同)。操作性ではシャッタースピードや絞り、露出といった写真の専門的なことを知らなくてもカメラまかせの「オート」をはじめ「風景」「スナップ」など撮影モードが分かりやすい機種が人気を集めているという。

 価格では「カメラ本体とレンズで10万円前後の予算の人がほとんど」(同)で、カメラ本体とレンズがセットになった「レンズキット」を求める人が多いようだ。「BCNランキング」でも07年5月のデジタル一眼レフ販売台数データではレンズキットが75%を占めた。

 また、レンズキットの価格帯別の販売台数シェアは5万円以上-10万円未満が49.5%。次いで10万以上-15万円未満が46.3%だった。9割近くが10-15万円の価格帯の製品が占めている。初めて一眼レフを購入するなら、予算としてはこのあたりが目安になるだろう。


●依然トップの「EOS KissデジタルX」、低価格の「D40X」にも注目集まる

 それでは、「BCNランキング」の07年5月月次データで売れ筋トップ10を見ていこう。なお、ランキングはカメラ本体、レンズキットやカラーバリエーションを合算して算出した。



 1位はシェア27.6%でキヤノンの「EOS KissデジタルX」が獲得した。「画質が良いとユーザーからの評判が高い」(同)ことも、人気の理由になっているようだ。高精細で自然な色を再現する画像処理回路「DIGIC II」を搭載。「全自動モード」「風景モード」「ポートレートモード」などのプログラムモードでは大型モードダイヤルの「簡単撮影ゾーン」を設けており、初心者でも簡単に写真が撮影できるようにした。大手量販店での価格はカメラ本体が10万円前後、レンズ1本セットのレンズキットが11万円前後、レンズ2本のダブルズームキットが12万円前後。

 4位でシェア13%のニコン「D40X」は注目機種の1つだ。07年3月に発売した初心者向けの普及機モデルで、大手量販店ではカメラ本体が7万円前後、レンズキットが8万円前後、ダブルズームキットが11万円前後で販売されている。他社のデジタル一眼レフよりも価格が安いため、量販店では「デジタル一眼レフの低価格化の火付け役」(同)と説明する。

 低価格とはいえ機能も充実している。有効1020万画素のCCD、プロ用デジタル一眼レフで採用する画像処理アルゴリズムを使った画像処理エンジンを搭載。プログラムモードまかせで簡単に撮影できるほか、設定などのインターフェイスを分かりやすいようにした。そのため、「価格だけでなく、操作性も高いことで人気が高い」(同)という。記録媒体にはSDメモリーカードを採用しており、コンパクトデジタルカメラから乗り換えたユーザーがメモリカードをそのまま転用できる点も支持されている理由のようだ。


 もう1つの注目機はシェア5.1%で5位のオリンパス「E-410」。世界最小、最薄、最軽量をうたったカメラで、サイズは幅129.5×高さ91×奥行き53mm。有効1000万画素の「Live MOSセンサー」を搭載した。コンパクトデジタルカメラのように、背面の液晶モニターを見ながら撮影できる独自の「ライブビュー機能」を装備。露出補正やホワイトバランス設定の効果をモニターで確認しながら撮影できるため、コンパクトデジカメからの乗り換えユーザーや初心者でも簡単に操作できる。

 さらに、ゴミやホコリを取り除き、画像へのゴミ写り込みを防ぐ「ダストリダクションシステム」も特徴。ダストリダクション機能は「EOS KissデジタルX」をはじめ他社でも搭載する機種があるが「一番ゴミを落とす力がある」(同)と量販店では説明しているという。量販店での実勢価格はカメラ本体が9万円前後、レンズキットが10万円前後、ダブルズームキットは12万円前後。

●メーカー別では新製品を続々投入するニコンに勢い、オリンパスも奮闘

 価格が下がってきたことで今後はさらに競争の激化が予想されるデジタル一眼レフだが、現状の勢力図はどうなっているのか。最後にメーカー別販売台数シェアを見ておこう。トップはシェア44.7%でニコン。ニコンは06年9月に「D80」を発売した後、12月にはそれまでトップを保持していたキヤノンを抜き去った。


 その後もデジタル一眼レフ初心者の取り込みを狙い、「D40」「D40X」と矢継ぎ早に新製品を投入。06年12月以降も常に40%以上の高いシェアを確保しており、「今、店頭で一番勢いがあるメーカー」(同)という。

 一方、トップの座をニコンに譲り渡したキヤノンは冴えない。特に07年3月からはシェアを減らしている。06年9月発売の「デジタルX」以降、プロ用のデジタル一眼レフを発表しただけで、ニコンに比べると機種のラインアップが少ないことから苦戦を強いられているようだ。しかし、キヤノンがこうした状況に対し、指をくわえて見ているはずはなく、どのタイミングで新製品を投入し、反撃に転じるかが注目される。

 そのほかのメーカーではオリンパスに勢いが出てきた。07年3月までシェアは1%を切っていたが、4月に発売した「E-410」の効果からか、同月には4.3%までシェアを伸ばし、5月には6.1%まで躍進した。6月下旬には、カメラ本体内の手ブレ補正機構とライブビューを搭載した「E-510」の発売を予定しており、今後はさらにシェアを拡大する可能性もある。コンパクトデジカメに比べ比較的静かだったデジタル一眼市場だが、各社のラインアップも充実し始め、いよいよ競争が本格化しそうだ。(WebBCNランキング編集部・米山淳)


*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など21社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。