<ITジュニアの群像 高校生プロコンへの道>第51回 福島県立郡山北工業高等学校

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2007/06/13 17:06

 福島県立郡山北工業高等学校は、昨年11月に開催された第27回全国高校生プログラミングコンテスト(高校生プロコン)の全国大会に進出した。コンピュータ部に所属する出場メンバーの3人に、全国大会出場の感想とそれに至るプロセス、そして将来の目標について語ってもらった。

好奇心と集中力で全国大会出場!
あと一歩及ばず、上位入賞逃す


 福島県立郡山北工業高等学校は、昨年11月に開催された第27回全国高校生プログラミングコンテスト(高校生プロコン)の全国大会に進出した。コンピュータ部に所属する出場メンバーの3人に、全国大会出場の感想とそれに至るプロセス、そして将来の目標について語ってもらった。(小林茂樹●取材/文)

●授業と部活がうまく連携 予想外の本選進出果たす

 高校生プロコン出場メンバーの所属するコンピュータ部は、情報技術科の生徒を中心に活動を行っている。

 その活動内容はソフトウェア関連、ロボット競技、基本情報技術者試験・シスアド資格取得の3テーマに大きく分かれ、毎日の放課後、パソコンがずらりと並んだコンピュータ室で真剣にそれぞれの課題に取り組んでいる。

 情報技術科の佐藤孝則先生によると、ソフトウェア関連のメンバーにとっての大きなイベントは、プロコンのほかに会津大学主催のパソコン甲子園、そしてマイコンカーラリー(MCR)などがあり、好奇心旺盛な部員は一つに絞ることなく、いくつもの大会に参加するという。

 昨年の高校生プロコンで、全国大会に駒を進めたのは、遠藤祐紀さん、秋山裕紀さん、梅宮将平さん(いずれも情報技術科3年生)の3人だ。ただし、梅宮さんは、エントリーしていたものの、同時期に行われたパソコン甲子園の本選出場が決まったため、高校生プロコンの全国大会には遠藤さんと秋山さんの2人で臨むこととなった。

 まず全国大会に出た感想だが、「当時は2年生でしたし、参加することに意義があるという感じでしたから、まさか本選に出られるとは思いませんでした」というのは秋山さん。遠藤さんも「力試しのつもりで参加したところが、本選に出られることになってびっくりしました」と異口同音に予想外だった様子を話してくれた。遠藤さんたちもマイコンカーラリーにエントリーするなど、プロコンの準備だけに時間を割けず、せっぱ詰まった状況だったという。どうやら彼らの発言は謙遜ではなく本音だったようなのだが、ふたを開けてみたら4位で予選通過。立派な成績だ。

 この年から採用された対戦型プログラム「ターゲットサーチ2」は、自陣からボールを投げて見えない相手に命中させる精度を競い、1ターンごとに相手に投げるか自陣の標的を移動させるか選択しながら、より早く相手のターゲットに命中させたチームが勝ちというルール。このため、各人がプログラムをつくって対戦させ、実戦をこなすなかで改良を加えていったという。

 そして、夏休み中に佐藤先生が「ターゲットサーチ2」の指導者向け講習会に出席し、そこで得たものを3年生の授業で教え、2学期に情報技術科のクラス内で「ターゲットサーチ大会」を開いた。その大会の4強と当時2年生の遠藤さん、秋山さんが対戦し、その結果に基づいて内容をブラッシュアップしたということだ。

 つまり、授業と部活動の内容がつながり、相乗効果をあげたわけである。実際のところ、部活動で知識を先取りして授業に生かしたり、逆に、授業で教わったことを部活動で応用することもあるそうだ。

●強豪校相手に惜敗 悔しさ次に生かす

 さて、本選の1回戦で当たった相手は予選1位通過の金沢北陵。結果的にはその相手校が優勝するのだが、惜しくもスコアは1対2だった。1ポイント先取した後に逆転負けを喫した。

 「1回目は、いきなり相手にボールが当たり、これはいけるかもと思ったのですが、作戦タイムの後、裏をかかれてしまいました。やはり高い壁でした」というのは秋山さん。「3回目はギリギリの勝負でもう少しというところでした。トーナメントではなく総当たり戦だったら、もう少し結果は違っていたかもしれません」と遠藤さんも悔しそうだ。

 それでも、全国大会出場は彼らにとって大きな自信になったことは間違いない。梅宮さんは中学時代からパソコン部に所属していたそうだが、秋山さんと遠藤さんが本格的にプログラミングに取り組んだのは高校に入ってから。短期間のうちに大きな結果を出せたというのは、なにものにも代えがたい経験だったといえるだろう。

 将来の目標を聞いた。秋山さんはパソコンを使う管理系の仕事か研究部門で働きたいという希望を持ち、遠藤さんは大学に進学して工業科の先生かホームページデザイナーを目指したいそうだ。梅宮さんも、大学に進みソフトウェア開発の仕事に携わりたいと話してくれた。

 最上級生になった今年、3人ともプロコンとパソコン甲子園にエントリーする予定だ。進路選択、資格取得、そして下級生への指導などで忙しい年となるが、出場するからには、昨年以上の成績をと意気込みを示している。

●特色ある工業高校を目指す 小菅富士雄校長

 昭和19年創立の郡山工業学校(後の郡山工業高校)と郡山西工業高校が統合され、昨年、創立30周年を迎えた郡山北工業高等学校。機械科、電子科、情報技術科など7学科が設置され、地域に根ざした工業高校として歴史を重ねてきた。

 同校の教育目標は、「調和・創造・特色」。小菅校長は、そのなかでも「特色」にこだわりたいと語る。

 長年、県内企業を中心に多くの人材を輩出し、大きな信頼を寄せられている同校だが、中学校からの認識はいま一つだそうだ。そこで、企業からの好評価に満足することなく、さらに特色ある人間の育成に努めることで学校としての特色をよりアピールしていくことが重要だという。

 その取り組みの一つが、このプロコンであり、そのほか、パソコン甲子園、ものづくりコンテストなどにも積極的に参加して好成績を収めている。また、さまざまな専門資格の取得にも力を入れ、放課後のみならず、朝早く登校してそのための勉強に取り組んでいる生徒も少なくないそうだ。

 生徒のほとんどは、工業科目を学びたい、ものづくりが好きだという気持ちで入学してくるため、真面目なタイプが多い。就職志望と進学志望の割合はほぼ半々だが、いずれの生徒に対しても、ものづくりの基礎とその楽しさをしっかり教えることが大切と話してくれた。


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今年1月26日に開催されたBCN AWARD 2007/
BCN ITジュニア賞2007表彰式の模様


※本記事「<技術立国の夢を担う ITジュニアの群像 高校生プロコンへの道>第51回 福島県立郡山北工業高等学校は、週刊BCN 2007年6月11日発行 vol.1190に掲載した記事を転載したものです。