BD陣営がシェア94.7%で圧勝、3社8機種で戦った次世代DVD最初の年末商戦

特集

2007/01/17 23:54

 次世代DVD元年ともいえる06年。対応機がやっと市場に出回り始めた年末、次世代DVDが迎えた最初の商戦期になった。店頭に並んだのは松下のBDレコーダー2機種、ソニーのBDレコーダー2機種、東芝のHD DVDプレーヤー3機種、HD DVDレコーダー1機種の合計8機種。標準規格争いのこれからを占う第1幕の緒戦、はたしてどちらの陣営のどの製品が人気を集めたのか?「BCNランキング」で探った。

 次世代DVD元年ともいえる06年。対応機がやっと市場に出回り始めた年末、次世代DVDが迎えた最初の商戦期になった。店頭に並んだのは松下のBDレコーダー2機種、ソニーのBDレコーダー2機種、東芝のHD DVDプレーヤー3機種、HD DVDレコーダー1機種の合計8機種。標準規格争いのこれからを占う第1幕の緒戦、はたしてどちらの陣営のどの製品が人気を集めたのか?「BCNランキング」で探った。


●規格は「BD」「HD DVD」の2規格、販売台数はまだわずか

 次世代DVDの規格には、松下電器産業やソニーなどが推す「ブルーレイ・ディスク(BD)」と、東芝やマイクロソフトなどの「HD DVD」の2つが存在する。


 2つの規格で異なるのはまず容量。HD DVDは片面2層で30GBなのに対し、片面2層で最大50GBと勝っているのがBDだ。一方コスト面で有利なのはHD DVD。現行のDVD製造ラインが利用できるため製造コストを安く抑えることができる。どちらも現行のDVDに比べ容量が格段に大きく、現状では記録できないハイビジョン映像を劣化させずに録画できるのが最大の特徴だ。

 こうしたハイビジョンコンテンツをそのまま録画できる次世代DVDを楽しむには、対応ドライブ内蔵パソコンや外付け対応ドライブを購入してパソコンで利用したり、次世代ゲーム機を使う方法もあるが、専用の次世代DVDプレーヤーやレコーダーを手に入れるのが一般的だろう。日本で主流になると見られるのは、やはり次世代DVDレコーダー。しかし現状では「20-30万円台とまだまだ値段が高いことに加え、どちらの規格が標準になるかを見極ようとしている人が多い」(佐島光彦・ビックカメラ有楽町店ビジュアルコーナー主任)ようだ。

 「BCNランキング」では、次世代DVD機を、DVDレコーダーとDVDプレーヤーのカテゴリに分類している。12月のDVDレコーダーとプレーヤーを合計した販売台数に占める次世代機の割合はわずか0.6%。現行のDVDレコーダーに比べると、市場規模はきわめて小さく、まだまだこれからの市場といえる。

●06年発売の次世代DVDは8機種、年末商戦ではBD陣営が圧勝

 立ち上がったばかりの若い市場だが、最初の商戦期06年12月では、どちらの規格のどの機種が売れたのか? 次世代DVDのみを対象に「BCNランキング」で販売台数シェアを集計した。


 1位はシェア56.7%で松下のBDレコーダー「DMR-BW200」。大手量販店での実勢価格は約28万円。500GBのHDDを搭載し、片面2層式で容量が50GBのBDディスクに対応。50GBのディスクには地上デジタルのハイビジョン映像で約6時間の録画ができる。


 地上・BS・110度CSデジタルチューナーはそれぞれ2基、地上アナログチューナーは1基内蔵し、デジタル放送の2番組同時録画が可能。「次世代DVDでは一番人気」(佐島主任)だという。

 2位は28.3%でソニーのBDレコーダー「BDZ-V9」。量販店での実勢価格は約30万円。HDDは500GBで、片面1層で容量が25GBの書き換え型ディスク「BD-RE」と追記型ディスク「BD-R」の録画にのみ対応する。25GBのディスクには地上デジタル放送のハイビジョン画質で最大3時間の録画ができる。


 ソニーのBDレコーダーも500GBの大容量HDDタイプが人気だが、対応ディスクが片面1層25GBのみのため、「使い勝手は良いが、ディスク容量が少ないということで松下のレコーダーに流れる人が少なくない」(都内の大手量販店店員)という。

 BDレコーダーでは、ほかにも松下の「DMR-BR100」がシェア7%で3位、ソニーの「BDZ-V7」は、2.7%で5位。2機種ともにHDD容量が少ないモデルで、メーカーを問わず「BDがどんなものか、試しに使ってみたい人が買っている」(佐島主任)という。

 HD DVDでは東芝のプレーヤー「HD-XF2」が、シェア2.9%で4位に入った。実勢価格は5万5000円前後。HDMI端子を装備し、対応の薄型テレビなどと接続すれば、映像・音声を劣化することなくデジタルでハイビジョン映像が楽しめる。本編映像を映しながら特典映像などをサブ画面に表示する「PinP(ピクチャーインピクチャー)」などの機能も搭載する。


 ただ、「再生できるのは専用ソフトだけ。HD DVDレコーダーで録画したディスクは見ることができないため魅力に欠ける。そのため、台数はあまり出ていない」(都内の大手量販店店員)という。

 HD DVDレコーダーでは「RD-A1」がシェア1.5%で6位。1TB(テラバイト=1000GB)のHDDを搭載、HD DVD-R 片面1層ディスク(容量:15GB)で最大約115分、片面2層(30GB)では最大で約230分のハイビジョン映像を録画できる。


 発売当初の39万円前後だった実勢価格も30万円前後にまで下がってきたものの、販売台数シェアは1.5%、ランキングは6位にとどまっている。

 シェア0.6%で7位のプレーヤーの上位機種「HD-XA2」は量販店によると出荷が遅れており、1月中旬には店頭に並ぶ予定。実勢価格は13万円前後の見込みで、現状のシェアは予約分と考えられる。しかし、店頭では「プレーヤーで価格が10万円台では期待できない」(同)という見方がほとんど。また、8位のプレーヤー「HD-XA1」は生産が終了。現在は流通在庫のみが販売されている。

 これらBDとHD DVDの両陣営でのプレーヤーとレコーダーに限って販売台数シェアを比較すると、松下とソニーが製品を展開するBD陣営が94.7%で圧勝。一方、東芝が孤軍奮闘するHD DVDは5.3%と苦難の船出だ。

●次世代DVDはHD DVDの東芝が先行、BDの松下、ソニーが続く

 次世代DVDを巡っては東芝が06年3月に世界初のHD DVDプレーヤー「HD-XA1」を発売して先行。7月には1TBのHDDを搭載したHD DVDレコーダー「RD-A1」を発売した。

 東芝のプレーヤー発売から遅れること8か月、BD陣営では松下が「DMR-BW200」「DMR-BR100」を11月に発売。「録画映像をHDDに仮置きし、すぐにBDに保存してもらう使い方を想定し、HDD容量を抑えた」(杉田卓也・ビデオビジネスユニットビジネスユニット長)ことで、東芝のHD DVDレコーダーよりも実勢価格を安く設定、価格面で勝負を仕掛けた。

 ソニーもBDレコーダーを「放送、映画など家庭に入るあらゆるコンテンツを楽しむための中核となる商品」(西谷清・コーポレート・エグゼクティブSVP)と位置付け、「BDZ-V9」と250GBの「BDZ-7V」を松下に続き12月に発売した。

 BD陣営が攻勢をかける中、東芝でも「次世代DVDのHD DVDを急速に普及させる」(藤井美英・執行役上席常務・デジタルメディアネットワーク社社長)ことを狙い、「HD-XF2」「HD-XA2」を12月下旬から発売すると発表。年末商戦では東芝、松下、ソニーの三つどもえの戦いとなった。


●まず20万円を切ることが普及の条件、10万切れば爆発的普及も

 年末商戦で、次世代DVDを購入したのは「マニア層と40台後半から50代を中心とする年配層」(佐島光彦・ビックカメラ有楽町店ビジュアルコーナー主任)。特に後者は「大型の薄型テレビ購入と同時に買うことが多く、おカネは気にせずハイビジョンの高画質を楽しみたいという比較的裕福な人たちで、今は購入の中心となっている」(同)という。こうした中、シャープはBDレコーダーを春に発売すると発表。他のメーカーも追随する動きが加速すれば、まず「夏に弾みがつき、今年の年末が最大の商戦となる」(別の大手量販店店員)と見る量販店は少なくない。



 一方、規格の標準化争いでは、やや違ったアプローチも見られる。韓国のLG電子はBDとHD DVDの双方のディスクを再生できるプレーヤーを2月に米国で発売すると発表。ソフトでも米ワーナー・ブラザーズがBDとHD DVDを1枚のディスクに収めた映像ソフト「トータルHD」を発表するなど、早くも互換機や互換ソフトの動きが出始めている。

 いずれにせよ、テレビのデジタル化と大型化が進めば、ハイビジョンコンテンツの需要は格段に大きくなる。現行のDVD環境が次世代DVDに移行するのはもはや時間の問題だ。ポイントは「いつブレイクするか」。その条件として、大手量販店では「より多くのメーカーが製品を出して競争し価格が下がること」と、口を揃える。ある量販店の店員は「まずは20万円を切ること。次に15万円を切れば少しずつ売れ始める。爆発的に売れるのは10万円を切ることが必要」と話す。まず、次の山場は夏のボーナス商戦。メーカー各社がどのような戦略で戦いに挑むのか、大いに注目したい。(WebBCNランキング編集部・米山淳)

*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販など22社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。