年末商戦たけなわの家電量販店。店頭で相変わらず客足が絶えないのがデジタルカメラコーナーだ。主役はもちろんコンパクトタイプのデジカメ。最も競争が激しいカテゴリーの1つで、さまざまなモデルが入り乱れ百花繚乱の様相を呈している。なかでも現在の主流は手ブレや被写体ブレ補正防止機能がついた700万画素クラス。新機軸として注目なのが「顔認識」機能だ。そこで、「BCNランキング」をもとに、売れ筋機種のトレンドをまとめた。

 年末商戦たけなわの家電量販店。店頭で相変わらず客足が絶えないのがデジタルカメラコーナーだ。主役はもちろんコンパクトタイプのデジカメ。最も競争が激しいカテゴリーの1つで、さまざまなモデルが入り乱れ百花繚乱の様相を呈している。なかでも現在の主流は手ブレや被写体ブレ補正防止機能がついた700万画素クラス。新機軸として注目なのが「顔認識」機能だ。そこで、「BCNランキング」をもとに、売れ筋機種のトレンドをまとめた。


●圧倒的な強さを見せるキヤノンだが、夏にはカシオが逆転する場面も

 直近の機種別販売台数シェアを見る前に、まず、06年夏以降のコンパクトデジカメ市場の動向をおさらいしておこう。7月第2週(3-9日)から12月第2週(4-10日)にかけて、「BCNランキング」のメーカー別販売台数シェアで最も存在感が大きかったメーカーは、やはりキヤノンだ。とくに10月以降は、他社をまったく寄せ付けない強さで、シェアトップを独走している。このキヤノンの好調を牽引してきたのが、7月は「IXY DIGITAL 800IS」で、10月以降はその後継機である「IXY DIGITAL 900IS」だ。また、「IXY DIGITAL 70」も堅調なシェアを維持しており、キヤノン人気を支えてきた。


 その王者キヤノンを夏、1か月間逆転したのがカシオ。8月第3週(14-20日)から、9月第2週(4-10日)にかけて、シェア1位に躍り出た。原動力になったのは、なんといってもコンパクトデジカメ初の1000万画素で話題を呼んだ「EXILIM ZOOM EX-Z1000」、さらに、600万画素機では安定した人気を保っている「EXILIM ZOOM EX-Z600」である。

 また同じ頃、9月第2週にキヤノンに肉薄し、シェア第2位に迫ったのがソニーだ。カードサイズの薄型ボディに手ブレ補正機能と高感度撮影機能を搭載したことで一躍人気となった「Cyber-shot T9」。その後継機「Cyber-shot T10」が登場したのだ。新製品と処分価格で販売された旧製品の両方が一気に売れた相乗効果がソニーのシェアを押し上げたかたちとなった。12月第2週では、夏以降じりじりとシェアを落とすカシオを抜き、キヤノンに次ぐ2位のポジションにジャンプアップした。

 一方静かなのが松下。広角28mmからのズームと手ブレ補正機能を前面に打ち出した「LUMIX FX01」を今年2月に、その上位機種の「LUMIX FX07」を8月に発売して一時、シェア3位に顔を出すものの、12月第2週には富士フイルムに抜かれ5位までシェアを落としている。かつては松下のお家芸だった手ブレ補正機能と広角28mmを各社が採用し始めたことで、松下のアドバンテージが薄らいでいるのが要因の1つだろう。そうしたなかで、ソニーは薄型・カードサイズ・スライド式レンズバリアという独自のデザインコンセプトで地歩を固めつつあるようだ。また、ここへ来て富士フイルムとオリンパスがじわじわと上昇の兆しを見せ始めているのも要注目だ。


●どうなった画素数競争? 地歩固める700万画素対伸び悩みの1000万画素

 カシオの「EXILIM ZOOM EX-Z1000」が好調に推移するなか、コンパクトデジカメも1000万画素クラスへ一気に移行していくのかと見られた。しかし結果的には1000万画素クラスのデジカメは伸び悩み、10月頃から1割程度の販売台数シェアで頭打ちの状況が続いている。「高画素のコンパクトデジカメ」というジャンルこそ確立したが、1000万画素クラスのデジカメはまだ主流を狙えるポジションにはない。


 それでも全体的な高画素化は着実に進んでいる。この半年で5-600万画素クラスのシェアが大きく下落している一方で、700万画素クラスが一気に半分近くまでシェアを伸ばしている。通常の家族写真で、撮影後L判にプリントして楽しむ程度なら、このクラスの画質で十分でお釣りが来るほどだ。

 小型の撮像素子を使わざるをえないコンパクトデジカメは、ノイズ対策などが難しく、高画素化してもそれほど画質向上には貢献しないという側面がある。今後もコンパクトデジカメの画素数は徐々に増えていく傾向は続きそうだが、そのスピードはゆるやかなものになりそうだ。都内の大手量販店の店頭でも「画素数を気にして買うお客様はほとんどいなくなった」といい、むしろ「使いやすさや大きさ、デザインを基準に選ぶお客様が増えた」という声が聞かれた。

●すべて揃った「IXY DIGITAL 900IS」はやっぱり強い!

 それでは、12月第2週の機種別販売台数シェアをみながら、現在の売れ筋を見ていこう。発売直後に垂直に立ち上がって以来シェアトップを独走しているのが、キヤノン「IXY DIGITAL 900IS」。販売台数シェア8.9%でダントツのポジションだ。販売台数では11月第2週(6-12日)にソニー「Cyber-shot T10」とカシオ「EXILIM ZOOM EX-Z1000」に追い上げられ、直近では松下「LUMIX FX07」が背後に迫っている。しかし、実は販売金額シェアでは2位の機種と3%以上の開きがある。つまり、他社の値下がりに比べ「IXY DIGITAL 900IS」は値下がりのスピードがマイルドだというという実態を表している。しかも、販売台数シェアトップ10のなかでは、平均単価は最も高い。


 IXY DIGITALシリーズで初の広角28mmからの光学3.8倍ズーム、レンズシフト式手ブレ補正、最新の画像処理エンジン「DIGIC 3」による、ISO1600までの高感度撮影と自動顔認識「フェイスキャッチテクノロジー」、そして710万画素……。「IXY DIGITAL 900IS」のスペックは、現在コンパクトデジカメに求められる機能をほぼ網羅しているといっていいだろう。

 キヤノンを追う松下「LUMIX FX07」はシェア7.5%で2位。720万画素、広角28mmからの光学3.6倍ズーム、光学式手ブレ補正という点では「IXY DIGITAL 900IS」と同等スペックながら、最高感度はISO3200まで対応している。ただし、自動顔認識機能は搭載していない。ボタンやダイヤル類の操作はLUMIXシリーズ共通のもので、デジカメ初心者でも迷わず扱うことができるのが特徴だ。

●薄型では手ブレ補正の有無が明暗を分けている!?

 3位につけているのは、ソニー「Cyber-shot T10」で6.6%。これも720万画素機で、光学式手ブレ補正を搭載する。最高感度はISO1000までだが、前モデルの「Cyber-shot T9」がISO640までだったことを考えると、格段に高感度撮影に強くなっている。また、被写体1cmまで寄れる「拡大鏡モード」が、メニューからではなくボタン操作で簡単に設定できるようになった点も前モデルからの進化点。薄型・カードサイズのデザイン、レンズバリアをスライドするだけの素早い起動には根強い人気があるようだ。

 4位は4.9%で1000万画素機の「EXILIM ZOOM EX-Z1000」、5位は4.3%で720万画素機の「EXILIM ZOOM EX-Z700」と、カシオの2機種がランクインしている。両機種とも、機械的な手ブレ補正機能は搭載していない。高感度と画像処理エンジンで手ブレを補正しようというのがカシオの考え方だ。EX-Z1000は高画素の割には価格が安く、都内では3万円台前半の販売店もあった。この手軽さも人気の理由の1つだろう。

 富士フイルム「FinePix Z5fd」は3.4%で、ランキング同率6位だが、発売以来急激にシェアを伸ばしている。630万画素で、機械的な手ブレ補正機能も非搭載だが、最高感度はISO1600まで対応して手ブレと被写体ブレを軽減する。さらに、同機の最大の特徴は、人物の顔を自動認識する「顔キレイナビ」と、ブログに最適なサイズに自動で画像をリサイズしてくれる「ブログモード」を搭載している点。コンパクトなボディと、人気モデル「エビちゃん」こと蛯原友里のCMイメージも手伝って、相変わらず女性人気が高そうだ。


●720万画素+手ブレ補正、できれば自動顔認識、そしてデザインはフラット

 こうしてみてくると、コンパクトデジカメの画素数は、700万画素クラスであればひとまずOK。その代わり、手ブレ補正機能の搭載は必須条件といえそうだ。それもできれば、光学式手ブレ補正と高感度撮影のダブルでぶれないほうが望ましい、ということがわかる。また、最近注目の機能として、「自動顔認識」が挙げられる。コンパクトデジカメではニコンが先鞭をつけ、富士フイルムとキヤノンが追随したかたちだが、顔認識のテクノロジーは3社とも独自開発のものなので、今後はその精度や効果、どのように機能が発展していくかなど、注目しておくべき大きなポイントといっていいだろう。

 圧倒的に人物を撮影する機会が多いコンパクトデジカメでは、「自動顔認識」はけっこう重宝する。実際、筆者も「IXY DIGITAL 900IS」を少し使ってみたのだが、人物の顔に即座にピントが合って、しかもけっこう複雑な光の状態でも、顔が一番きれいに写るようにカメラが自動で露出を調整してくれる。カタログなどで見るより、実際の撮影現場ではこの効果は絶大だ。ピントも露出も手動で設定して、同じように顔をきれいに撮ろうとすると、かなりの経験と勘が要求されることは間違いない。コンパクトデジカメだけでなく、将来的には携帯電話のカメラ機能にも応用されていくかもしれない。

 デザイン的なことに少し触れておくと、コンパクトデジカメの売れ筋はみな、レンズ沈胴式か、屈曲光学系を採用したボディで、電源オフ時にはボディ表面がフラットになるタイプで占められている。ホールディング性を考慮してグリップ部に厚みをもたせたタイプや、光学性能を重視してレンズが飛び出したデザインは、あまり受け入れられていないのが現状のようだ。カバンやポケットに入れていつでも持ち歩けるサイズ、というのが重要視されているのである。

 作品としての写真を撮るという観点では、より表現力に富んだデジタル一眼レフが誰にでも手の届く存在になってきたことから、コンパクトデジカメに求めるのは、気軽に持ち歩けることと、気軽に撮れることに集約されつつあるように思う。さらなる高画素化よりも、手ブレ補正や自動顔認識が重要視されるのは、そうしたニーズを反映しているからこそ、といえるだろう。

●おまけは個性派3モデル「μ725SW」「GR DIGITAL」「PowerShot G7」

 最後に、ランキング外ながら筆者が注目しているコンパクトデジカメを3機種、ご紹介しておこう。1つめは、12月第1週の機種別販売台数シェアで6位に「μ750」をランクインさせているオリンパスの「μ725SW」だ。水深5mでの撮影が可能な防水設計、約1.5mから落としても壊れにくい耐衝撃構造と防塵設計のボディが特徴だ。スキーやスノボーなど雪山でウインタースポーツを楽しむ際のデジカメとしては「μ725SW」はうってつけだろう。710万画素で高感度ISO1600と、カメラとしての基本性能も十分なスペックを有している。

 もう1つは、発売以来すでに1年以上が経過しているにも拘わらず、いまだに値下がりしないという希有なコンパクトデジカメ、リコー「GR DIGITAL」。800万画素、28mm単焦点レンズ搭載というそのスペックは、コンパクトデジカメに分類するにはやや気の毒な感じもする。それくらい別格の写りと、手に持ったときに独特の雰囲気を感じさせてくれるデジカメである。プロ写真家や著名人が「GR DIGITAL」で撮った写真集『GR DIGITAL BOX』や、田中長徳氏の『GR DIGITAL ワークショップ』など、関連本もかなり売れているようで、すでにコアなファンを獲得しているコンパクトデジカメである。

 最後の1つは、巨人キヤノンのコンパクトデジカメにおけるフラッグシップモデル「PowerShot G7」である。「もう発売されないのではないか」と一部で噂されていたPowerShot G シリーズ2年ぶりの最新機。PowerShot G シリーズ伝統のバリアングル液晶モニタとF2.0からの明るいズームレンズはなくなったが、アルミ削り出しのボタン類、独立したダイヤルでISO感度をダイレクトに変更できる「ISOダイヤル」など、各所にフラッグシップの名にふさわしいこだわりがうかがえるモデルだ。

 1000万画素、ワイド端35mmからの光学6倍ズーム、レンズシフト式手ブレ補正、画像処理エンジン「DIGIC 3」、最高感度ISO3200、自動顔認識「フェイスキャッチテクノロジー」など、コンパクトデジカメの最高スペックを余すところなく搭載している。その機能と価格から、ある程度使う人を選ぶコンパクトデジカメだと思われるが、こういうデジカメを待ち望んでいた人が多かったのか、あるいは、生産量が意外と少ないためなのか、「PowerShot G7」は現在、店頭では品切れ続出で、予約待ち状態となっている。

 売れ筋からちょっと目を逸らしたところにも、個性的で面白いモデルが存在しているのがいまのコンパクトデジカメの世界。どんな使い方をしたいかを、しっかり見極めて、自分にぴったりの愛着が持てる1台を見つけて欲しい。(フリーカメラマン、榎木秋彦)


*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販など22社・ 2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。