F1マシン?ジェット機? 自作心を刺激するPCケース夏の総決算

特集

2006/09/12 23:07

 「自作PC」が盛り上がる年末年始と夏休み。今年の夏もかなりヒートアップしたようだ。今なぜ自作なのかと尋ねてみると、たどり着いたキーワードは「自由」。売れ筋の低価格モデルからキワモノ筋の驚きモデルまで、「BCNランキング」で、自由を謳歌する夏のPCケース動向総決算をお届けする。

 「自作PC」が盛り上がる年末年始と夏休み。今年の夏もかなりヒートアップしたようだ。今なぜ自作なのかと尋ねてみると、たどり着いたキーワードは「自由」。売れ筋の低価格モデルからキワモノ筋の驚きモデルまで、「BCNランキング」で、自由を謳歌する夏のPCケース動向総決算をお届けする。

●中身だけではなく、外観も自分流にカスタマイズしたい!

 まだPCが高価だった頃、安く作れる自作にはそれなりに意味があった。しかしほんの数万円でPCが買える今、逆に高い買い物になってしまうかもしれないのに、あえて「自作」にこだわる理由は何だろうか。それはやはり「自由」ということだろう。

 マザーボードからCPUやメモリにグラフィックボード、果ては水冷システムに至るまで、なんでも選び放題の自作PCだが、意外に重要なのはその外観。つまりPCケースそのものだ。ツクモケース王国の加藤昌克店長代理は「BTOで中身をカスタマイズできても、毎日目にする外側はカスタマイズできない」と、「見た目」も選ぶことができるのが、「自作PC」の魅力の1つと語る。

 自作となれば、パーツ集めから組み立てまで、時間に余裕があるときにチャレンジしたいもの。PCケースがよく売れるのも休みが集中する年末年始や夏休みの時期だ。「BCNランキング」の販売データも、この8月がケース商戦の山場だったことを示している。なかでも最も売れたのはやはり夏休みが集中する8月中旬。ここがピークになっている。今年は、前年同月比でみた販売台数伸び率も106.3%とまずまずの結果だった。


 やはり「夏休みを利用してPC作りに励んだユーザーが多かった」ことに加え、今年は「インテルの『Core 2 Duo』が発売され、それに合わせてPCを作り変えるユーザーが多かった」(加藤店長)ことも、影響しているようだ。いずれにせよ、夏真っ盛りのこの時期、汗を拭き拭きせっせとPC作りに励んだ人たちが全国にたくさんいた、ということだ。

●スポーツカーじゃなくて、これPCケース

 売れ筋ケースのランキングを紹介する前に、PCケースがいかに「自由」な存在なのか、いくつかご紹介しよう。

 まずはASUSTekの「VENTO 7700」。落ち着いたブルーに、曲線で構成されたきょう体は「未来的なフォルム」を実現。フロントパネルが跳ね上げがる様はまるでスポーツカーのガルウィングだ。メンテナンス性も高く、側面パネルの固定には手回しネジを採用。HDDや光学ドライブ、拡張スロットはネジを使わずにパーツを固定できる仕様で、パーツの交換や増設時にはドライバーレスで作業ができる。対応マザーボード規格はATX、MicroATX。拡張ベイは5.25インチが4本、3.5インチが2本、3.5シャドウベイが4本。「BCNランキング」8月の販売台数シェアランキングは664位だった。

 同じく跳ね上げ式のフロントパネルを採用した個性派モデルがASUSTekから発売されている。その決定版ともいうべきものが「VENTO 3600」。F1カーのような精悍ないでたちに、光沢のある鮮やかな塗装を施し、前面下部の吸気口はスポーツカーさながら。今にも走り出しそうだ。カラーはレッド、ブルー、グリーン、ブラックの4色。最高順位はレッドモデルで256位。

 「VENTO 7700」と同様、側面パネルには手回しネジを採用し、HDDや拡張カード類の固定もネジを使わずできるよう設計されている。また背面にはケーブルを収めるカバーがあるので、すっきりとまとめることができる。利用可能なドライブベイは5.25インチが4本、3.5インチが1本、3.5インチシャドウが3本。拡張スロットは7つ。ATX、MicroATXに対応する。

●ジェットで空飛ぶPCケース?

 一見地味なデザインながら、ちょっと変わった使い方ができるケースもある。サイズの「GT-1000(ブラック/シルバー)」(ブラック454位)はアルミ製横置きのきょう体に、7インチのタッチセンサー付きTFT液晶モニタを搭載。このモニタはディスプレイの代わりに画面を確認するだけではなく、タッチパネルを操作してアプリケーションを起動こともできる。ほとんどディスプレイが必要ないサーバーや、ホームシアター用のPCとしてピッタリのモデルだ。

 また液晶モニタの下部には明るさなどを調節するボタンや、PC電源とは別に液晶モニタ専用の電源ボタンも装備する。ケースファンは背面に8cmサイズを2基搭載。拡張ベイは5インチが1本、3.5インチが1本、3.5インチシャドウが4本。ATX、MicroATXに対応する。なお、電源非搭載モデルなので、別途用意が必要。

 極めつけは、サイズの「Xclio A380」(ブラックモデル・111位)だ。幅265×奥行き595×高さ540mmと、通常のミドルタワーサイズより2回り以上大きいきょう体に、直径25cmのファンを2基も搭載。まるでジェットエンジンつきPCケースだ。カラーはブラックとシルバーの2色。

 ブルーLEDが付いた2基のファンはそれぞれファンコントローラーを搭載しており、つまみを回すことで超静音から高冷却モードまで調節することができる。背面ファンは別途オプションとして搭載することが可能。また左サイドパネルは透明アクリル製なので、頑張って組み立てたPCの内部をいつでも見ることができるという「ご利益」もある。

 搭載可能マザーボードはATX、MicroATXで、電源は非搭載。フロントアクセスポートとして天面にUSB2.0×2、IEEE1394×1を装備した。拡張ベイは5インチが5本、3.5インチが1本、3.5インチシャドウが7本。

●ランキング上位にはシンプルデザインのミドルタワータイプが集中

 もちろん、こんな素っ頓狂なケースばかりではないが、一口にPCケースといってもいろんな種類がある。8月のデータで集計してみると、一番売れているのはミドルタワータイプのケースだった。販売台数の73.2%を占め圧倒的な支持を集めている。拡張性と大きさのバランスが良くラインアップも豊富、そんな点が人気のようだ。価格は1万円前後が主流だ。

 そのほか、最近の傾向について加藤店長は「1年くらい前は冷却性能を重視するユーザーが多かったが、最近は静音性を求めるユーザーが多い」と教えてくれた。AVPCというジャンルも確立されつつあるなか、自作PCで音や映像を楽しむという用途が普及し始めているのかもしれない。


 では、機種別で売れ筋のランキングを見ていこう。1位にランクインしたのは、スリー・アールシステムの「R202-BK(ブラック)」。販売台数シェアは1.7%だった。ちなみに、1.7%で1位ということは、製品のバリエーションがきわめて幅広い、ということを意味する。実際に数えてみると8月だけでも、実に941機種が販売されていた。

 それらの頂点に立った「R202-BK(ブラック)」はシンプルなデザインのスチール製で、サイズは幅185×高さ430×奥行き440mmのミドルタワータイプ。ATX、MicroATXの各マザーボードに対応する。冷却効果を高めるため、サイドパネルにダクトを配置。背面にも8cmのファンをつけた。電源は静音仕様の400W、電源部にも12cmのファンがついてる。拡張ベイは、5.25インチが4本、3.5インチが2本、3.5インチシャドウが6本と十分な拡張性も備えている。そして何より魅力は価格。この内容で平均6000円台前半とかなりお手頃。人気の秘密はここにありそうだ。

 3位にランクインしたのはサイズの「SCY-0311BK(ブラック)」と「SCY-0311WH(ホワイト)」。いずれもシェアは1.4%。フロント部分全体を覆うアクリルパネルと、シンプルなデザインを採用したスチール製ケース。ATX、MicroATXに対応する。電源は同社オリジナルの400W静音電源「SCY-400A-EZ12」を搭載。側面も8cmのファンも標準搭載する。また、さらにオプションとして背面、前面にファンを追加することもできる。拡張ベイは5インチが4本、3.5インチが2本、3.5インチシャドウが6本。


 7位にランクインしたAntecの「P180」も、「この夏よく売れたPCケース」(加藤店長)の1つだ。シェアは1.2%。フロントポート部をダブルヒンジ方式のフロントドアで隠すことができるので、使っていない時はすっきりと見せることができるのがミソだ。静音性の高さも特徴の1つ。アルミニウム、プラスチック、アルミニウムの三重構造のパネルを採用し、システムから発生する騒音を軽減する。


 また、冷却効果を高めるために、内部は上下二重構造設計を採用。電源部とCPUの冷却ゾーンを分割し、それぞれ別のファンで冷やす。このほか、フロント部に2つのエアフィルターを搭載し、ホコリがケース内部に侵入するのを防ぐようになっている。このエアフィルターは取り外して洗うことが可能。適合マザーボードはATXで、拡張ベイは5.25インチが4本、3.5インチが1本、3.5インチシャドウを6本備える。

 「自作はちょっと」と尻込みする向きもあろうが、最近ではだいぶハードルも低くなってきた。ケースに限ってみると、いくつかの機種には採用されていたが、手で回せるネジを使ったり、そもそもネジ不要のパーツ固定仕様などを採用したものなど、プラモデル感覚で組み立てられるケースが増えている。一度PCショップでケース売り場をしげしげと眺めてみてほしい。質実剛健のまじめなケースからぶっ飛んだケースまでさまざまなバリエーションのなかから「この1台」が見つかるかも。これこそケース選びの醍醐味。既製品のPCでは味わえない楽しみだ。使っているPCの「顔」に物足りなさを感じるようになったら、ぜひ思い出してほしい。


*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など22社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。