アップル、動画「iPod」と新「iMac G5」、0.2%の動画市場をどう切り拓く?

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2005/10/13 05:58



 米アップルコンピュータは日本時間の10月13日午前2時、カリフォルニア州サンノゼで報道関係者向けのイベントを開催し、同社のスティーブ・ジョブズCEOが、新しい「iMac G5」やビデオ表示可能な「iPod」の発表を行った。まずその詳細を紹介し、さらに「BCNランキング」最新データによる携帯動画プレーヤー市場の現状を見ながら、動画対応iPodの今後を占う。

●まず新しいiMac G5を発表、カメラ内蔵でリモコン同梱

 ステージに登場したジョブズCEOはまず、新しい「iMac G5」を発表した。ビデオチャット用のカメラ「iSight」を内蔵し、写真のスライドショーにプリントやエフェクトなどの効果を加えることのできるアプリケーション「Photobooth」を搭載した。

 合わせて、Mac用のリモコン「Apple Remote」と対応ソフト「FrontRow」も発表された。「Apple Remote」を使うことで、離れた位置からMacを操作して、DVDを観たり、iTunesで音楽を聞いたり、「Photobooth」で写真のスライドショーを楽しんだりすることができるようになる。「Apple Remote」は、新しい「iMac G5」のすべてのモデルに付属して発売される。また、新「iMac G5」のマウスには、「Mighty Mouse」が付属する。

 20インチモデルは、2.1GHz(旧型は2.0GHz)のプロセッサを搭載し、価格は1,799ドル(日本では19万9800円)。17インチモデルは、1.9GHz(旧型は1.8GHzまたは2.0GHz)のプロセッサを搭載し、価格は1,299ドル(日本では15万2800円)。本日からオンラインのApple Storeで販売が開始されているが、現時点では17インチモデルが出荷まで7-10営業日、20インチモデルは出荷まで2-3週、となっている。

 17インチモデルの旧製品には、1.8GHzのコンボドライブモデルがあったが、新型はすべて1.9GHzの8倍速スーパードライブ搭載モデルに統一された。17インチモデル、20インチモデルの両方とも、旧型に比べ2万円前後の値下げとなっている。

●そして、いよいよiPodが動画対応に

 続いてジョブズCEOが発表したのが、事前にさまざまな噂が飛び交っていた新しい「iPod」。大方の予想通り、新「iPod」はビデオ再生が可能となった。基本的なデザインは変わっていないが、液晶ディスプレイは2.5インチ(旧型は2.0インチ)となり、解像度は320x240ピクセル、26万色表示可能(旧型は65,536色)となった。ディスプレイのアスペクト比は4:3となる。ビデオ映像のエンコード形式としてはMPEG4とH.264に対応。これは、いずれも「QuickTime7」がサポートしている、インターネット経由で高画質な映像を再現する先進のビデオコーデックである。もちろん、全モデルでビデオ出力が可能。つまり、「iPod」の中の動画をテレビに映して楽しむことができる。

 新しい「iPod」の容量は30GBと60GB。nanoと同じようにボディカラーがブラックのバージョンも発売される。とくに30GBモデルは、現行品の20GBモデルと比べて、約31%も本体が薄くなっている。30GBモデルは約7,500曲収録可能で299ドル(日本は3万4800円)、60GBモデルは約15,000曲収録可能で399ドル(日本では4万6800円)で、いずれも来週発売。すでに日本でもオンラインのApple Storeで予約を開始している。

●iTunes 6もリリースへ

 ビデオ再生可能な「iPod」の登場に伴って、「iTunes」もバージョンアップされる。「iTunes 6」となり、iTunes Music Storeでのビデオ購入に加え、「iPod」へのビデオ映像の転送をサポートするようになった。

 そのiTunes Music Storeで販売されるビデオ映像だが、すでに2,000点のミュージックビデオが各1.99ドルで購入可能となっている。また、ジョブズ氏がCEOをつとめるPixarのショートムービーも、iTunes Music Storeで販売される。Pixarのショートムービーもミュージックビデオと同様に、1話につき1.99ドル。この映像はCDに焼くことはできないが、最大5台のMacで再生が可能。もちろんiPodに転送して好きなだけ楽しむことができる。ムービーサイズは約20MBとなる。

 また、将来はiTunes Music Storeでテレビ番組のダウンロードも可能となる。すでに米ABCとは提携済みで、5つの番組が1.99ドルで購入可能。これらの番組は、ムービーサイズ180MBで、320x240ピクセルのディスプレーサイズに最適化されている。さらに、ディスニーも、コンテンツ提供を約束している。「iTunes 6」は、本日よりダウンロード可能となっている。

●動画iPodは携帯ビデオ市場を切り拓く尖兵となるのか?

 現在、携帯オーディオプレーヤーと携帯ビジュアルプレーヤーを総合した携帯AVプレーヤー市場は、圧倒的にオーディオプレーヤーの割合が高い。「BCNランキング」05年9月の月次データでは、台数シェアで携帯オーディオプレーヤーが実に99.8%、携帯ビジュアルプレーヤーはわずか0.2%だ。

 それぞれのカテゴリーの勢力図を見てみると、携帯オーディオではアップルが57.7%とダントツの販売シェアを持ち他を圧倒。全体の市場規模も04年1月比で実に約9倍と大きく成長している。一方、携帯ビジュアルの分野ではエプソンが50.8%と過半数の販売シェアを握っているものの、販売台数は極めて少ない。アップルの動画対応iPodは、このカテゴリーではすぐにでも首位を獲得できそうだ。


 しかし、ABCとの提携でテレビ番組のiTMS販売を計画されている本国アメリカに比べ、日本ではどうなるのか? また、特にDVD-HDDレコーダーが急速に普及しつつある日本の現状では、こうした機器との親和性も重要なポイントになるものと思われるが、環境はまだ十分に整っているわけではない。これからの課題といえるだろう。

 音と動画の市場規模バランスがそのままの形で続くとは考えにくい。しかし少なくとも現時点ではビジュアルよりオーディオに携帯AV機器のニーズが集中しているのは間違いなさそうだ。こうした現状を前に、動画iPodが、どうやって市場を切り拓いていくのか、大いに注目したい。(フリーライター・中村光宏/WebBCNランキング編集長・道越一郎)


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