ホームページ・ビルダー対決、ソースネクストvsジャングル、勝者は?

特集

2005/06/22 22:15

 今や小学生でも自分のウェブサイトを持つ時代。ホームページ作成ソフトは、もはや「普通の人」が使う一般的なソフトになった。「BCNランキング」05年5月のデータでは、売れ筋は「IBMホームページ・ビルダー」。販売本数シェアにして実に61%と圧倒的な人気だ。パッケージも「ビルダー」単体というより、さまざまな付加価値をつけて売るスタイルが定着し、競争が激化している。<br />


 今や小学生でも自分のウェブサイトを持つ時代。ホームページ作成ソフトは、もはや「普通の人」が使う一般的なソフトになった。「BCNランキング」05年5月のデータでは、売れ筋は「IBMホームページ・ビルダー」。販売本数シェアにして実に61%と圧倒的な人気だ。パッケージも「ビルダー」単体というより、さまざまな付加価値をつけて売るスタイルが定着し、競争が激化している。

 その理由は、販売会社の多さにある。それまで「ビルダー」は、IBMとソースネクストの2社が販売していた。ところが昨年11月「V9」へのバージョンアップを機に、新たにジャングルが販売を開始。独自にサービスを付加して販売する戦略を採用した。このため、受けて立つソースネクストもセット商品に力を入れ始めている、という状況になっているのだ。

 激しいつばぜり合いを繰り広げる「ビルダー」の販売合戦。実際のランキングで見てみよう。5月の販売本数シェアベスト10では、全製品が「ビルダー」関連の製品でソースネクストとジャングルの激突、という構図だ。



独自のパック商品が好評のジャングルだが、ソースネクストが依然1位



 まず、後発のジャングルだが、メーカー別シェアは31%(図1)とかなり健闘している。高度な付加サービスをパックしたパッケージ戦略が「効いている」ようだ。例えば、あらかじめホームページのスペースを確保したパッケージ「はじめての公開サービスパック」。実際にホームページを開設するところまでワンパッケージで提供している。100MBの公開スペース「BBWeb-Arena」を6か月間無料で利用できるほか、初心者にとっては難関なサーバーへのファイル転送設定もあらかじめ設定済みなため、簡単にホームページを開設できる。

 また、マウス操作でホームページのレイアウト操作が行えるソフト「Easy Web Design」をセットした「Webデザインサポートパック」、簡単な操作で本格的なショップページが作成できる「ネットショップ開業」、ガイドブックとデザインテンプレート&素材集、ホームページ開設支援サービスが付いた「スペシャルバリューパック」も用意している。

 こうした「はじめての公開サービスパック」や「ネットショップ開業」は、現在のソースネクストのラインアップにはない。「ビルダー」単体では実現できなかった初心者やデザイン志向の強いユーザー、店舗事業者などのニーズをとらえているとようだ。

 「ビルダー」を発売することになったいきさつについては、「以前から自社開発の『ホームページ制作王』という別のソフトを取り扱ってきたが、『ホームページ・ビルダー』を使いたいというユーザーの声も多かった。そこで、このジャンルのソフトのニーズを熟知している当社としては、さまざまなサービスと組み合わせることで、顧客の要望に応えられると考えた」(田村幸市郎ディレクター)と話す。

 「ホームページ制作王」はドラック&ドロップによるマウス操作でホームページが作成できるのが特徴。「ビルダー」がきっちりレイアウトするのに対し、直感的な操作で、「よりデザイン性の高いホームページ」を作ることができる。「ビルダー」発売を機に、「ホームページ制作王」を「Web Design Works」と改名しイメージチェンジを図った。さらに「ビルダー」と「Web Design Works」の簡易版「Easy Web Design」をセットにしたパッケージも販売し、相乗効果を狙っている。

 また、ガイドブック付きのパックも用意。書籍で一番売れている「超図解シリーズ」を同梱する。「『ビルダー』と『超図解シリーズ』は、一番売れている同士の夢のタッグ」(田村ディレクター)で、「できる」シリーズを採用したソースネクストとの違いを打ち出している。こうして「ビルダー」の選択肢が広がるのは、ユーザーにとっても歓迎できることだろう。

 一方先行するソースネクストは、上位5位までを独占しており強さは揺るぎない。「ガイドブック付き」や同社発売のグラッフィクソフト「Paintgraphic」を同梱したセットが好調だ。「ガイドブックや写真加工のニーズが高い。今後はネットショップ開業などへの対応も図る」(広報)とのことで、さらなるラインアップの拡充を目指している。

ジャングルも販売することになったワケ、IBMの狙い

 ソースネクストに加えジャングルにも、IBMが「ビルダー」販売を認めた狙いはどこにあるのだろう。IBMの製品担当者は、「ジャングルはすでにホームページに付随するサービスをもっており、ハイエンドユーザー向けにセット提供できることに魅力を感じた」としている。「ネットショップを簡単に開業したい」「もっとデザインに凝ったホームページを作りたい」といった、やや高度なニーズに対してもきめ細かく対応できるよう、「ビルダー」のラインアップを広げ、ユーザーに「ビルダー」を浸透させていく考えだ。

 最近人気の日記ツール「ブログ」も、ホームページ作成ソフトの売り上げに追い風となっている。「今までホームページを作るのが難しい、作成ソフトを使いこなせないといった人が、ブログのおかげでホームページを簡単にもてるようになった。ブログをもつ人の数が増えれば、「つくる側の人」の裾野が広がる。結局、そうした人を相手にしたいネットショップや、より自由度の高いホームページをもちたいという人も増えていくことになる」(IBM)と、ブログ人気を歓迎。ブログの普及によって、逆にホームページ作成ソフトの売り上げが減少するのではないかという心配は、今のところはないとみている。

 「購入者は年齢や職業を問わず幅広い」(ジャングル)というホームページ作成ソフト。ウェブサイトが普通の人の道具となるにつれ、使われ方も各人各様、広がりをみせはじめた。もはやひとつの製品で、すべてのニーズを満たすことは難しい。だからこそ、ニーズの発掘やターゲットの絞込みをしっかり行えば、さらに大きな市場が開けている、ともいえそうだ。


*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など18社・2100を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで125品目を対象としています。