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トラックバックに答えて 「ウォークマン大逆転…」掲載の理由 たった4日のデータが物語る市場の姿

特集

2005/05/29 21:19

 4月26日、当サイトに掲載した記事「ウォークマン大逆転、ついにiPod Shuffleを抜き一躍トップに」には、賛否を含む大きな反響を頂戴した。<br />
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 ソニーの新ネットウォークマン発売から最初の土日まで4日間のPOSデータを集計した結果、シリコンオーディオ台数シェアで、ソニーがアップルを抜いたという内容だった。他のメディアからの反響も大きく、複数のテレビ番組でもこの内容が紹介されたほか、当サイトにも100を超えるトラックバックが寄せられた。

・ウォークマン大逆転、ついにiPod Shuffleを抜き一躍トップに(2005年4月26日掲載)

 トラックバックには記事内容に対する驚きの声を上げるものが多かったが、その一方で「たった4日の販売台数では統計としての正確さを欠く」「単なる瞬間最大風速にすぎない」などのご意見を頂いたことも事実である。なかには「SONYに都合のいいようにデータを操作している」といったものや「広告を取るための偏向記事か」など、編集部の意図とはまったく異なる内容の憶測も寄せられた。

 そこで、WebBCNランキングの編集長として、この場で「なぜあの記事を掲載したのか」「たった4日のデータがどんな意味を持つのか」などの疑問に答え、編集部の基本姿勢を読者にお伝えしたいと思う。さらに、「BCNランキング」そのものの意味・役割などもご説明しておきたい。

「BCNランキング」は「今」がわかるデータ



 一番多かった意見は、やはり「たった4日間でシェアを語るのはナンセンスだ」というものだった。確かに広く一般に使われる「シェア」とは、比較的長いスパンにおける販売数や金額の市場占有率を指す場合が多い。しかし、編集部としては誤解を避けるため、先の記事で触れたシェアは、あくまでも「4日間」の「販売台数」における「メーカー」ごとの「シェア」であることを記事中でも明確に言及している。

 確かに発売直後の販売動向は、予約分が一気にさばけ、初期需要も重なって販売台数が短期的に積みあがる傾向が強い。とはいえ、立ち上がりの勢いはその新製品が備える商品力を忠実に反映する。そのため編集部としては、iPod Shuffle に対抗して、ネットウォークマンが発売直後にどのような動きを示すかに注目した。結果は、発売から「わずか4日」でほぼ垂直に立ち上がったといえるものであった。そして、この勢いこそがニュースであると判断した。

 仮に「一瞬」の出来事であったとしても、それを正確なデータに基づいて、できるだけ早く報じることはWeb媒体の本質的な役割といえる。こうした考えのもと、私は当サイトの編集長としてこの記事の掲載に踏み切った。

 記事のデータソースは、「BCNランキング」のデータである。これは「全国のパソコン専門店、家電販売店17社」の「1581店舗(2005年4月末現在)」から「POSレジデータ」を「毎日」収集し、集計・分析したデータである(詳しくは、下記URLリンク「BCNランキングについて」をご参照いただきたい)。

 この集計は日本の店頭市場の半分弱をカバーする規模であり、「作為」の入る余地のないデータであると自認している。さらに、日々データが収集・集計されているため「昨日、全国で何がどれくらい売れたか」が翌朝にはわかる、という特質をもっている。

 最前線は店頭。その動きをビビッドに表すPOSデータをもとに、店頭で「今」何が起きているのかを伝えるのが当編集部の基本方針だ。とくに、売れ筋が変わり新しいトレンドが生まれるその「瞬間」を捉えて、情報発信を行うことこそがWebBCNランキングの存在価値だと考える。

「最新ランキング」のページにソニーが出てこない理由



 前回の記事で反省点もある。とくに字数に制限のあるタイトルが、両社の累計シェアが逆転したような誤解を与えかねないものだったという点については、読者からの批判を率直に受け止めたい。

 一方で、当サイトの「最新ランキング」携帯オーディオ部門のページに、「好調なはずのソニーが登場してこないではないか」というトラックバックもあった。「出だしが良かったのは、最初だけだったのか」という問い合わせも一部読者から頂いたので、これについてはその理由をご説明したい。

 現在、週次の機種別ランキングで公開しているのは上位5位までの製品名である。確かにこのトップ5にソニーは見あたらないが、5月16日-5月22日の直近の週次データでは、「6位」にソニーの1機種がランクインしている。

 ※2009年9月10日追記:現在は上位80位まで公開しています。

 機種名・型番は「ソニー ネットワークウォークマン ミッドナイトブラック NW-E405(B)」。カンのいい読者はお気づきかと思うが、ネットウォークマンは、色、容量、FM機能の有無などのスペックが異なれば、すべて別の機種とカウントされているのだ。そのため、バリエーションの多い同機種のシェアは機種別ランキングの上位に登場しにくいという構造になっている。同じ事は4色のカラーごとに異なるモデルとしてカウントされる iPod mini にもあてはまる。

 それでは派生モデルが多い製品の場合、トータルの動きがつかみにくい。そうのため、当サイトで掲載している「市況」記事では、その時々のテーマに合わせ、シリコンとHDDタイプを別々に抽出したり、派生モデルを合算して1機種トータルのシェアにまとめたりと、様々な切り口の視点を提示することで、新しいトレンドをわかりやすく読者にお届けできるように工夫をこらしている。

 こうしたデータ分析の工夫は、市場動向をよりわかりやすくするための「視点」の提示であり、一部読者にご指摘された「偏向」や「(特定メーカーへの)すり寄り」などの作為とは本質的に異なるものであることを明言しておきたい。

 編集部は今後もこうした記事を積極的に掲載し、いろいろな角度からITコンシューマー市場のリアルな姿をお伝えしていく。市場の「今」を映し出すWebBCNランキングにご期待いただきたい。

WebBCNランキング編集部 編集長 道越一郎