毎年、1月から3月までの3か月間で、大きな盛り上がりを見せるのが、個人向け確定申告や青色申告を行うための「申告ソフト」を扱う売り場である。申告ソフトは、その名の通り「税務申告」に関する計算を、パソコンでこなすためのソフト。このソフトの売り場がなぜ、新年に盛り上がるのだろうか?その秘密は、「申告をする人の日常生活」にある。

 毎年、1月から3月までの3か月間で、大きな盛り上がりを見せるのが、個人向け確定申告や青色申告を行うための「申告ソフト」を扱う売り場である。申告ソフトは、その名の通り「税務申告」に関する計算を、パソコンでこなすためのソフト。このソフトの売り場がなぜ、新年に盛り上がるのだろうか?その秘密は、「申告をする人の日常生活」にある。

 本来、申告ソフトは頻繁に利用することが望ましい。具体的には、お金が振り込まれたり、払い込んだりといった業務処理があるたびに、申告ソフトを利用することが理想的だ。だが、確定申告や青色申告をする個人や個人事業者は事業をこなすのが精一杯。それでも、できれば毎週、それも無理なら毎月と、定期的に申告ソフトに記録しておくのが望ましい。

 ところが現実は、確定申告と青色申告の締め切りである3月15日の直前に申告ソフトを購入し、慌てて作業に励むことになる・・・。それを示すように申告ソフトを販売しているメーカーは、「12月から3月前半までが申告ソフトの販売の最盛期」とクチを揃える。

 その最盛期を当て込んで、毎年秋あたりに各社から新製品、新バージョンの申告ソフトが発売になる。そのため、12月頃から売り場も充実しはじめ、1月に入ると販売店側も力を入れて申告ソフトをアピールしはじめる。「BCNランキング」から、1月最終週(1月31日?2月6日)の申告ソフト製品別販売本数ランキングをみると、トップ10はのようになった。


 1月から申告ソフトの販売が盛り上がる背景には、パソコン販売店側の事情もある。年末はご存知の通り、パソコンの売れ行きも伸び、年末の季節商品であるはがき作成ソフトも大きく伸びるため、売り場の大きなスペースがそれに抑えられる。しかし、さすがに1月に入るといつまでもはがき作成ソフトを店頭に置いておくわけにもいかない。そこで、はがき作成ソフト売り場を縮小した後、ちょうどそのスペースに商戦期を迎える申告ソフトを置いて大々的にアピールするというのだ。「はがき作成ソフトが年末を告げる季節商品だとすれば、申告ソフトは新春を告げる季節商品だ」という人も・・・。

 もっとも同じ「季節を告げる商品」と言いながらも、「はがき作成ソフト」と「申告ソフト」では売り場の雰囲気もだいぶ違う。はがき作成ソフトは、パッケージもお正月らしい賑々しいデザインのものが多いのに比べれば、申告ソフトのパッケージデザインはずっと地味。

 製品を買いに来る人の雰囲気もだいぶ異なる。申告ソフトの場合、売り場で製品を一度だけ見て購入する人は少ないそうで、「売り場に立っていると、商品を事前に調べていて実際に使ってみるとどうなのか詳細を尋ねてくる人が多い」という。

 毎年、今の時期に盛り上がっている申告ソフトだが、「来年はいつも以上に売り上げが伸びるのではないかと期待できる要素がある!」と主要メーカーは期待を寄せている。

 というのも、これまで個人および個人事業者は、売上高が3000万円を超える人だけが消費税を納めなければならなかった。しかし、平成17年1月以降は、売上高が1000万円を超えれば個人であっても消費税を納めなければならなくなる。個人で売上高3000万円以上となると、対象は相当儲けている人に限られる。ところが、1000万円となると消費税課税対象となる人の数は相当増えるだろうと見られている。

 そこで、消費税をとられた分を取り返すために、これまではきちんと青色申告せずに、白色申告で済ませていたような人も、申告ソフトを使って真剣に決算をするようになるのではないかと見られている。

 青色申告も、白色申告も個人事業者のための確定申告ではあるが、青色申告は複式簿記にのっとって帳簿をつける必要もあって、税制面での優遇度合いが高い。しかし、消費税を徴収されるようになれば、これまでは、「そこまで税制優遇してもらわなくてもいい」と考えていた人が、「今度こそ、青色申告に真剣に取り組もう!」と心変わりをしてもおかしくはない。

 こうした背景もあって、今年の申告ソフト商戦は静かな滑り出し。2005年1月のランキングを見ると、販売本数は対前年同期比を大きく下回り、販売金額も微減している。

 通常であれば、前年を下回る結果となれば商戦は暗くなりそうなものだが、来年には大きな飛躍が見込まれるだけに、今年は飛躍のためのジャンピングボードに過ぎないという見方もできる。

 これまでも税制改正によって申告ソフトなど、業務ソフトの売り上げが大きく伸びてきた。それを考えれば、今年、少々調子が悪くとも、来年に状況が一変する可能性は十分ありそうだ。(フリージャーナリスト・三浦優子)