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テレビ市場でシェアアップし存在感高まるTCL 蒋賛社長を直撃して今後の日本市場での取り組みや展開を聞いた

オリンピックを通してTCLの認知向上を目指す

 TCLは2015年設立で、今年は設立10周年の年だ。この節目の年に同社を率いる蒋賛社長はTCL APAC(アジア太平洋地域)のスマートテレビの担当だったが、2024年1月、日本法人の代表取締役社長に就任。今後の展開などについて蒋社長に直接、話を聞いた。

――日本市場でTCLのブランド認知をどのようにして上げていくお考えですか?

蒋社長(以下、敬称略) やはり製品を通してTCLを知っていただくことが大事ですので、積極的にハイエンド製品を市場に投入して、TCLは技術的に優れたブランドであるということを知っていただきたいと考えています。

 製品以外では、スポーツを通して認知度を上げていきます。TCLグループは2025年の2月にIOC(国際オリンピック委員会)と2032年まで、ワールドワイドでのオリンピック・パートナーシップを締結しました。2026年にはミラノで冬季オリンピック、2028年にはロサンゼルスで夏季オリンピックが開催されます。

 2027年にはサウジアラビアでIOCによる世界初のeスポーツのオリンピック開催も予定されていますので、オリンピックの開催に合わせていろいろな施策やキャンペーンなどを展開していきます。
 
2025年2月にパートナーシップ締結を発表した
TCLグループの李東生会長(左)とIOCのトーマス・バッハ会長(右)

 IOCとのパートナーシップ以外に選手との契約も視野に入れています。これまでも著名なスポーツ選手とアンバサダー契約を結んでいたことがありますので、秋頃からオリンピックに出場する日本選手と契約して、TCLのブランド認知向上を目指していきます。

――日本の消費者の多くは、中国メーカーの製品は技術力よりも安い点が魅力と考える風潮があります。そのイメージをどうやって変えていこうと考えていますか?

 日本の消費者にとって製品選びでは、ブランドの知名度や認知度が非常に重要な要素となっています。中国メーカーにとって、それは目に見えない大きな壁です。従って中国メーカーが日本市場に参入する際は、技術力や製品力はあるものの、やはりコストパフォーマンスを訴えるのが認知を得る一番の近道なのです。

 ただし間違っていただきたくないのは、しっかりとした技術力があることに加えてコストパフォーマンスが良いという点です。例えば、テレビ市場ではコモディティ化が進んでいます。TCLでは日本の消費者のニーズに合わせて、さらに画質も音質も向上させていくことが重要と考え、Mini LEDテレビで培ってきた技術を製品化して日本の消費者に提供していきます。

 戦略的には手頃な価格の製品もありますが、優れた技術を搭載したハイエンドの製品もあるブランドであることを認知していただきたいと考えています。
 
さまざまな先進技術が導入された
TCLのプレミアム量子ドット Mini LED 4KテレビのC8K
 

OEMを通して日本の消費者のニーズを把握

――今後、TCLでは白物家電にも力を入れていくようですが、グローバル市場と比べて非常に小さい市場である日本で、なぜ白物家電に注力していくのですか?

 TCLグループではさまざまな地域の市場環境を調査しています。その結果、日本の白物家電市場は決して小さいわけではなく、まだまだシェアを獲得していく余地があると考えています。

 TCLグループは世界160カ国で製品を展開しています。そのうえで日本市場は非常に重要な戦略市場なのです。日本の消費者は製品やブランドに対するこだわりが強く、製品に対して厳しい目を持っています。ですので、日本市場で成功すればほかの海外市場も含めて、より成功していくことが期待できます。

 実は日本市場において、OEMなどの形で白物家電の生産を行ってきました。具体的な数字は言えませんが、その生産規模は年間数十万台に及びます。つまり、これまでも日本の消費者が何を望み、どのような製品であれば満足してもらえるかということを、他社への製品供給を通して培ってきました。

 TCLの名を冠した製品を市場に投入することで、日本の消費者がより良い暮らしに役立つような豊富な選択肢を提供したいと考えています。
 
TCLでは白物家電をさらに強化していく

――テレビに続いて白物家電のラインアップも増やしていくことで、総合家電メーカーとしてのTCLを技術やブランドの面でアピールしていくということですね?

 そのとおりです。TCLは総合家電メーカーで、今はテレビがメインですが、これからは多くのカテゴリーの製品を発売していきます。例えばエアコンは来年早々に発売したいと考えていますし、黒物では新たにプロジェクターの発売も検討しています。

 当社は全世界に40カ所以上の研究開発センターがあり、そこで開発された技術が日本での製品展開や今後の発展をバックボーンとして支えています。この技術に裏打ちされた数多くの製品を発売して、総合家電メーカーとしてのTCLを知っていただきたいですね。
 
TCLの蒋賛代表取締役社長

 蒋社長が発言で触れていたように、中国メーカーにとって日本市場への参入ではグローバルでの調達力をベースとしたコストパフォーマンスが武器となる。しかし、それはあくまで参入するためのアプローチに過ぎない。

 本質的な武器は、グローバル市場で異国や同じ国の他社メーカーと切磋琢磨して磨き上げてきた技術力だ。実際に中国メーカーは近年、出展したCESやIFAなどの世界的な展示会において、その技術力で注目を集めている。

 技術力がバックボーンにあるというTCLの日本市場に対する意気込みや取り組みは、本気だ。固定観念やイメージは捨て、自分にとって最適な製品は何かを考えたとき、今後リリースされていくであろうTCLの製品群は選択肢の一つになるのではないだろうか。(BCN総研・風間理男)

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