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「働く場」の改善でコミュニケーション活性化へ、SAPジャパンの本社移転による挑戦

経営戦略

2023/07/25 17:30

 ERPを中心に、さまざまな製品・サービスを提供するSAPジャパン。コンサルティングや教育などの事業も手掛け、多くの顧客を獲得している同社は2022年9月、本社を移転した。約1200人の社員が入居できる旧本社で発生した、部署ごとにフロアが分かれたことによる社内のコミュニケーション不足を払拭するため、新本社で働く場を改善。コミュニケーションが活性化する環境を整えた。

SAPジャパンのオフィスエントランス

コロナ禍でコミュニケーション不足が浮上

 20年、新型コロナウイルスをきっかけに、多くの企業と同様、同社も感染予防対策の一つとしてリモートワークを採用した。「ところが、出社の制限を行うことで社内のコミュニケーションの活性化が課題として浮上した」と、本社移転時のオフィス改善プロジェクトに携わった総務部プロジェクトマネージャーの瓜田良介氏は振り返る。

 課題を解決するため、コミュニケーションが活発化できるオフィスの構築を模索。しかも、コロナ収束後のリモートワーク継続を踏まえてオフィス面積を縮小することも念頭に置いた。その結果、本社移転という選択肢が出てきた。

 単なる本社移転であれば総務部などの1組織で進めてもいいが、コミュニケーション活性化による「社内変革」の意味が含まれていたことから、経営企画にかかわる社長室もプロジェクトに参画。社長室で社員エンゲージメントリードの鎌田祐生紀氏は「本社移転では、グループ会社であるコンカーとのコラボレーションが向上することも視野に入れて取り組んだ」としている。
 
総務部プロジェクトマネージャーの瓜田良介氏(左)と
社長室 社員エンゲージメントリードの鎌田祐生紀氏

社員へのウェルビーイングをサポート

 旧本社は9フロアで構成されていたが、新本社は2フロア構成で旧本社の約半分となるオフィス面積だ。しかも、1フロア当たりの面積が広くなり、「組織を問わず、社員が気軽に会話できるようにした」(瓜田氏)としている。
 
組織を問わず社員が気軽に会話できる環境に

 オフィスに内階段を設けたことも、社員のコミュニケーション活性化につながっている。鎌田氏は「普通ならば一度オフィスを出てビルのエレベータを使うが、あえてオフィス内に階段を設けることで、さまざまな社員を出会えるようにした」としている。
 
内階段を設置

 また最大の特徴は、「ウェルビーイング」に取り組んでいることだ。ウェルビーイングとは、社員が肉体的・精神的・社会的に満たされた状態を経営的な視点で捉える考えで、新本社ではその要素を取り入れている。例を挙げれば、「健康的なドリンク・フードの提供(無料)」「サステナブルな家具や使い捨て食器の廃止」「運動器具の設置」「搾乳室の設置」「リラックス・集中効果のある音ソリューション」「アロマディフューザーの導入」などだ。
 
健康的なドリンク・フードの提供
 
音ソリューションのためにスピーカーを設置

 さらに、「ビアサーバーを設置しており、例えば業務外の金曜日18時を『ビアデー』として部署を超えて気軽に楽しめる取り組みも行っている。これも、コミュニケーションの活性化やコラボレーションにつながっているのではないか」と、鎌田氏はいう。
 
業務外にビールが飲める環境も

「Flex Workspace」を追求

 同社では、ニューノーマル時代の新しい働き方として「Pledge to flex」を掲げており、「Flex Location(働く場所の柔軟性)」「Flex Time(働く時間の柔軟性)」「Flex Workspace(働く場の柔軟性)」の三つを追求している。瓜田氏は、「Flex LocationとFlex Timeについては、本社移転前から取り組んできた。本社移転に伴ってFlex Workspaceを向上させたといえる。“働き方改革”というよりも“働きがい改革”を実現し、社員が自ら業務をデザインして最大限の成果が引き出せる環境を今後も整えていく」という。
 
ニューノーマル時代の新しい働き方として追求する三つの軸

 「社員のモチベーションを高めることが、結果的に会社全体の業務や生産性の向上につながる」(鎌田氏)。社員のパフォーマンスを高め、顧客の成功にも寄与していくことを目指している。(BCN・佐相彰彦)
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