緊急事態を全面解除、家電量販も通常営業に向けて動く

 安倍晋三首相は5月25日、新型コロナウイルスの感染防止対策で不要不急の外出やイベントの自粛、休業などを要請していた緊急事態宣言を全面解除した。4月7日の宣言発令から約1カ月半ぶりの全面解除となる。政府は、解除していなかった北海道、埼玉、千葉、東京、神奈川の5都道県の解除を、専門家で構成される基本的対処方針等諮問委員会に諮問して、午後に了承された。

緊急事態を全面解除した安倍晋三首相

 会見で安倍首相は「本日、緊急事態宣言を全国において解除する。全国で新規の感染者数が50人を下回った。一時は1万人近くいた入院患者も2000人を切った。世界的にも極めて厳しいレベルで定めた解除基準を全国的にクリアしたと判断した」と語った。

 また、「ここから全面解除後の次なるステージに一歩踏み出す。目指すのは、新たな日常を作り上げること。ここから先は発想を変えていく。社会や経済活動を厳しく制限すると、仕事や暮らしが立ち行かなくなる。命を守るためにこそ、新しいやり方で日常の社会や経済活動を取り戻していくことだ」と語り、コンサートやイベントなども無観客から再開して段階的に観客を増やしていく考えを示した。

 事業者に向けても、「事業と雇用はなんとしても守りに抜いていく。そのために明後日、二次補正予算を決定する。先般の補正予算と合わせて事業規模は200兆円を越える。GDPの4割に上る空前絶後の世界最大の対策によって、100年に一度の危機から日本経済を守り抜く」とアピールした。

 政府は、自粛の要請をおおむね3週間ごとに感染状況を踏まえた上で段階的に解除していく方針。また、都道府県をまたぐ移動は5月末まで避けてほしいとする。

 家電量販店でも、政府が5月14日に39県で、21日に大阪、兵庫、京都で段階的に宣言を解除したのを受けて、対象エリアの休業していた店舗の営業再開や、短縮していた営業時間を段階的に延長するなどの動きが始まっている。

 ビックカメラでは、24日18時時点で空港内に出店している店舗や日本橋三越、町田店、新横浜店などで引き続き休業しいるが、そのほかの店舗ではおおむね10時~20時までの営業時間となっている。4月7日の発令時には、ビックカメラで12店舗、グループで24店舗を休業していたが、徐々にではあるが通常の営業体制を取り戻しつつある。

 店舗の入口では検温や手の消毒、マスク着用のお願いをしていたほか、会計時やエスカレーターでソーシャルディスタンス(社会的距離)を保つように感染症防止対策を徹底している。有楽町でも入口と出口を分離して一方通行にして、入口では検温と手の消毒、マスクの着用をお願いしていた。
 
入口で検温と手の消毒、マスク着用をお願いするビックカメラ有楽町店(5月25日)
 
ビックカメラの店内での感染症防止対策

 ヨドバシカメラでも、先行して解除となった県や大阪府、京都府などの店舗で営業時間を通常の9時30分~22時に戻している。そのほかの店舗でも、14日に9時30分~20時、22日に9時30分~21時など1時間づつ慎重に時間を延ばしている。

 ヨドバシカメラは宣言が発令された後の4月14日に、全23店舗のうち16店舗で一時休業するという事態に陥っていた。休業中は、ヨドバシ・ドット・コムの利用を促すなどして、なんとか営業活動を持続していた。

 その間、店内の飛沫防止シートや入口での手指消毒の実施、ソーシャルディスタンスを保つなど感染防止対策を徹底することで徐々に営業を再開し始めた。
 
飛沫防止シートやマスクの着用など
感染予防対策を徹底するヨドバシカメラの店内

 緊急事態宣言が全面解除になったとはいえ、すぐに以前のような活況を呈する姿に戻ることは考えにくい。第2波に備えたり、感染爆発を引き起こさないように細心を注意を払ったりしながらの手探りの運営が続く。

 with(ウィズ)コロナ、ニューノーマル、アフターコロナなど、さまざまな言われ方がされているが、家電量販店の最前線でも約1カ月半の間に、宣言前とは全く異なる景色が広がっている。(BCN・細田 立圭志)