• ホーム
  • 業界動向
  • デスクトップPCで3年連続年間シェア1位! FCCLの信頼を支える福島工場のQCDへの取り組み

デスクトップPCで3年連続年間シェア1位! FCCLの信頼を支える福島工場のQCDへの取り組み

 富士通クライアントコンピューティング(以下、FCCL)が「BCN AWARD 2020」のデスクトップPC部門を3年連続で受賞した。BCN AWARDは、全国の家電量販店ECショップのPOSデータを収集・集計した「BCNランキング」の年間販売台数で1位のメーカーに贈られる賞で、2019年のFCCLのデスクトップPCのシェアは28.1%と3割に迫る勢いだった。このシェアは2000年以降で最大の数値だ。消費者からの信頼の源はどこにあるのか。デスクトップPCの生産工場である福島工場を取材した。

富士通クライアントコンピューティング(FCCL)は3年連続でデスクトップPCの年間販売台数No.1を獲得!

一品物から大量生産まで同時に受託

 富士通のパソコン事業は、レノボ傘下の富士通クライアントコンピューティング(FCCL)が担っている。福島工場は富士通の子会社である富士通アイソテックが運営し、FCCLの企画設計したデスクトップPCとサーバーを受託して製造している。ノートPCはFCCLの子会社である島根富士通が島根工場で生産する。同じ富士通でも、実際はグループも異なる別会社だ。ただし、FCCLは国内生産にこだわっており、当面はこの体制に変更の予定はないという。
 
FCCLのデスクトップPCを生産する富士通アイソテック 福島工場

 福島工場では、1994年から店頭用の個人向けデスクトップPCの生産を開始し、5年後の1999年からは企業向けデスクトップPCの生産もスタート。2002年には個人向けPCの修理やリサイクルも請け負うようになり、製品の誕生から終了まで同じ会社の中で担保するようになる。2015年2月には個人向けと企業向けを合わせた累計出荷台数が2000万台を越えた。
 
工場の入口には2000万台出荷達成を記念して作られた、
ゴールド塗装のESPRIMOが飾られている

 現在の生産規模は年間で、デスクトップPCが約70万台、サーバーが約11万台、プリンターが約7万台、POSが約3万台となっている。今年度はWindows 7のサポート終了や働き方改革推進の影響で特需となり、約100万台を生産したそうだ。

 富士通アイソテック 製造統括部 パソコン製造部長 熊倉美津男氏は「福島工場の従業員は700人を少し超えるくらいで、半分以上をパソコン関連に関わる者が占める。今年度、パソコンの生産台数を約100万台に増産したが、現場の工夫で乗り切り人員は増やしていない。工場は一品物の生産から大量生産まで同時に受託できるのが特徴で、現在はデスクトップPCを大量生産しながら、プリンター生産の実績を生かした多品種少量生産に対応している」と語る。

 通常は日勤(8時15分~17時5分)のみ、繁忙期には二交代勤務での対応となっている。従業員の平均年齢が上がってきているのが課題で、現場では少しずつ自動化の取り組みも行っている。熊倉氏は「若い人も採用しているが、PCの製造にはなかなか配属されない」と苦笑する。
 
現場では従業員の高齢化対策と人員効率化の施策として、スマートファクトリーにも取り組み始めており、AGV(無人搬送車)も試験運用中だ

ベテランのスキルを活かすMライン

 福島工場では、QCD(品質・コスト・納期)のバランスをどのように実現しているのか。熊倉氏は次のように述べる。「良いモノが作れたと思っても、クレームがゼロになることはないという前提で動いている。クレームが入ったら対策してより良いモノに仕上げる、不具合を見つけたらすぐに改良する、そのための体制を整えるようにしている」。

 具体的な取り組みは、後ほど紹介したいのだが、筆者が特に注目したものに「Mライン」と呼ばれる、一人が一台を最初から最後まで組み立てる仕組みを挙げたい。福島工場には、アルファベットの「A」から「J」まで、1つずつ割り振られた10列の製造ラインが設けられ、AからFまでの6列がパソコンの製造ラインになっている。Mラインはこの10列の外にある。
 
各製造ラインで生産している機器とプロセスが分かる見取り図。
このほかにベテランが最初から最後まで1カ所で組み立てるMラインがある

 通常、ベルトコンベアを使用した工場の製造ラインでは、一人の従業員が機械の組み立てを最初から最後まで担当しない。ある工程に特化して早く正確に組み立て、次の担当に回していくからだ。

 産業革命以来のこのやり方は、従業員が工程を一度にすべて覚える必要がなく、目の前の工程のみを習得すれば即戦力となる大きな利点がある。一方、ある工程の担当がなにかの事情で抜けてしまった場合、その工程を習得している担当が補充できないと全体が動かなくなってしまう欠点もある。工程が専門的になればなるほど代替の補充はリスクとなる。

 Mラインは製造ラインの利点を生かしたまま、欠点を補う仕組みとして考え出された。「Mラインは各ラインで欠員が出たりヘルプが必要な状況になったときに対処に当たるベテランの待機場所を、一人でも組み立てができる作業場にしたのが発端。切りの良いところで離れれば、途中で抜けても問題はないようになっている」と語るのは、製造統括部 パソコン製造部 プロジェクトマネージャーの村井和久氏だ。

 従業員の平均年齢の高い福島工場では、勤務歴が長く、ほとんどの工程を覚えているベテランも少なくない。Mラインは、ベテランのスキルをQCDの向上に直結させた日本らしい工夫と言えるだろう。実際、評判を聞いた他の業者が、参考にしたいと見学に来ることもあるそうだ。
 
富士通アイソテック 製造統括部 パソコン製造部長 兼 東日本テクノセンター長 兼 PCカスプラ・リペア担当マネージャー 熊倉美津男氏(左)、製造統括部 パソコン製造部 プロジェクトマネージャー 村井和久氏(右)

 「技術の進歩や社会の変化に合わせて現場も変わっていく。その変化の中で、よりQCDを追求して改善していくのは、当たり前のこと。機械でできる改善、人がやっているからできる改善、どちらが良いとか悪いではなく、より良い結果につながる改善を心掛けて日々取り組んでいる」(熊倉氏)。
 
パソコンを組み立てる「Bライン」では一台ずつ異なる生産が可能。​​​​​ここではいま一体型デスクトップを組み立てているが、作業員が作業している黒い筐体のすぐ右が白い筐体であることが見て取れる
 
上段から部品を取ってベルトの上の機材に組み込んでいく。上段の部品は奥から必要分が都度供給される。
各所に青、緑、赤のボタンがあり、ルーチンの確認のため、作業に応じてボタンを押すようになっている
 
ラインの停止回数や停止した場所などは細かく記録される。改善の必要な場所が一目瞭然となる。従業員にはトラブルやミスの際は隠したりせずにヘルプを呼ぶよう伝えている。従業員のせいにせず、トラブルやミスの多い場所にはなにか原因があると考え対処することで改善を図っていく
 
電源を入れて各インターフェイスに不具合がないかチェックするプログラミングを走らせる
 
持ち替えなくても画面を拭けるように手の甲に画面拭きが付いている。
これは現場の従業員のアイデアで作られたアイテムだという
 
ベテラン従業員のアイデアで手作りされた、重たい本体を楽に梱包するための装置
 
9年前の東日本大震災の記憶を風化させないための展示もあった

 福島の生産現場を訪れたことで、富士通のものづくりにおけるたゆまぬ改善の努力が垣間見られた。その改善の姿勢は決して血眼になって取り組むというものではなく、合理的で無理のない、継続できる工夫を脈々と積み重ねるという歴史を感じさせる内容だった。この継続性こそ、技術革新が日進月歩で進むPC分野で高いシェアを何年も続けて維持できた秘訣なのかもしれない。(ライトアンドノート・諸山泰三)


*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計しているPOSデータベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。

オススメの記事