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PayPayとLINE Payに対峙するメルペイ、三つの新戦略で赤字脱却なるか

 フリマアプリ大手のメルカリのグループ会社でスマートフォン(スマホ)決済事業者のメルペイにとって、11月18日に発表したヤフーの親会社ZホールディングスとLINEの経営統合は寝耳に水だったのだろう。9月に開催されたメルペイのカンファレンスで、PayPayとLINE Payと3社で不正対策の連携を密にすることを約束したばかりだったからだ。三つ巴で取り組む目論みが、メルペイ vs. PayPay・LINE Payという対立の構図に様変わりした。メルペイがこのほど打った新キャンペーンから浮かび上がる三つの戦略で、どう差異化していくのかを探る。

9月のメルペイのカンファレンス。不正対策でタッグを組んだ3社だったが…。
左からPayPayの中山一郎社長とメルペイの青柳直樹社長、LINE Payの長福久弘取締役COO

「メルペイスマート払い」を際立たせる

 3社の関係が大きく変わったことについて、12月3日の発表会に出席したメルペイの山代真啓マーケティング・グロース責任者は「個別他社のコメントは差し控える」と断りながらも、「キャッシュレス市場自体が盛り上がることは良いことだ。まだまだ現金を使っているお客様が多い中、市場自体が縮小してしまうことが良くない」と語った。キャッシュレス決済に注目が集まるとして、前向きに捉えているようだ。
 
メルペイの山代真啓マーケティング・グロース責任者

 もっとも、Zホールディングスの川邊健太郎社長CEOはPayPayとLINE Payの統合について「これから1年弱、まだまだ競合関係を続ける。最終的に、最もユーザーに支持されているサービスを統合後に補完し合う形になる」とも語っており、直ちに統合されるわけではないが、メルペイがPayPay・LINE Pay連合と対峙していく情勢に変わりはない。

 メルペイは差異化ポイントとして、現在注力している「メルペイスマート払い」と「ユーザー自身が設定できる利用上限額」の2点を挙げる。前者がメルペイならではの独自機能で、後者がクレジットカード(クレカ)を意識した機能といえる。
 

 メルペイスマート払い(旧メルペイあと払い)は審査不要の後払いサービスで、チャージをしなくても使った分だけ翌月にまとめて支払える。メルペイの場合、メルカリに出品した商品の売上金をメルペイ残高として利用できるため、手元に残高がなくても翌月までにメルペイで商品を売って支払いに充てるといった使い方ができる。
 

 気になるのは貸し倒れだ。審査不要のメルペイスマート払いは、一時的にメルペイがユーザーの支払額を肩代わりすることになり、翌月までにまとめて支払われなければメルペイの損失に直結してしまう。簡潔にいってしまえば、「とりっぱぐれの心配はないのか」ということだ。しかも通常、この手のサービスには金利がかかるが、メルペイスマート払いは金利が発生しない。ユーザーにかなり譲歩した内容といえる。

 この点について山代マーケティング・グロース責任者は、「短期的に収益を上げるのではなく、まずは新しいキャッシュレス決済を広く使っていただきたい。貸し倒れが100%ないわけではないが、想定以上に少ない。われわれがテレビCMを打ってキャンペーンを展開できるだけの自信があると考えてもらっていい」と語り、メルペイスマート払いに対する不安を払しょくする。

 利用上限額が自ら設定できる機能も、ユーザーから好評だという。メルペイの利用上限額の最高は月20万円で、これ自体、クレカとさほど変わらない。クレカの場合、条件によっては月50万円や100万円などというケースもある。

 しかし、「クレカは上限が選べないから使いすぎてしまう怖さがあり、これがクレカの日常使いまで広まっていない要因と考えている。メルペイは、ユーザーごとのライフスタイルに合った利用上限額の設定ができるので安心」と語る。また、クレカが大きな買い物をする際の分割払いで使われるのに対し、メルペイは日常的に使ってもらうことで差異化できるという狙いもあるようだ。

 なお、メルペイスマート払いの利用上限額はユーザーのメルカリやメルペイでの利用や支払い状況に応じて変わる仕組みになっている。また安心面でいえば、万が一の不正利用による損害額に対して全額補償をうたっているのもポイントだ。

70代前後を狙った武田鉄矢さんの起用

 12月3日~1月7日まで実施するメルペイスマート払いの新キャンペーンでは、CMキャラクターにユーチューバーとして若い人に人気のヒカキンさんを既定路線として、新たに起用した武田鉄矢さんが注目される。
 
CMキャラクターとして起用された武田鉄矢さんとヒカキンさん

 「それでも現金派」としてキャッシュレス決済になかなか関心を示さない70代前後のユーザーの取り込みを狙っており、メルペイにとっては新規客層の開拓でもあるからだ。

 新キャンペーンでは、初めてメルペイスマート払いを使ったユーザー全員に2000円相当のポイントを還元する。還元するポイント総額の上限はなしというから、途中で終了することもない。相当の販促額となりそうだ。

 CMでは、金八先生と同じ衣装をまとった武田鉄矢さんが先生ではなく、ヒカキンさんから教えてもらう立場に変わっている。会見で武田さんは、「定年後は『教わる』を人生のテーマにしていこうとした矢先のオファーだった」と、自身としても新しいことにチャレンジするタイミングだったという。

 実際にメルペイを使ってみた感想について武田さんは、「『2001年宇宙の旅』のテーマソングが流れてくるような快感があった。時代の流れはこっちなんだとつくづく感じるとともに、日本の人口がゆっくりと減っていく以上、店員さんの数も少なくなるし、これからは必須ではないか」と語りながら、キャッシュレス決済の可能性にも触れた。70代前後のユーザーにキャッシュレス決済に促すには打ってつけのキャラクターだろう。

 19年10月時点でユーザー500万人を突破したというメルペイだが、冒頭のPayPay・LINE Pay連合のほかにも不安材料はある。足元のメルカリの連結決算(19年7~9月)で70億円の赤字を出すなど、18年6月の東京マザーズ上場以来、赤字幅が拡大していることだ。
 
メルカリの決算資料(2020年6月期1Q)より

 メルペイのユーザー獲得に向けた販促費の増大がその要因の一つで、売上高が増えるほど赤字が拡大するという経営状況に陥っている。今回、メルペイスマート払いへの注力とクレカ対抗、70代前後の新規ユーザーの取り込みといった新しい戦略を際立たせているが、「初めて使う人全員に2000円相当の還元」というキャンペーン内容を見る限り、まずはユーザー獲得が優先で赤字体質からの脱却はまだ少し先となりそうだ。(BCN・細田 立圭志)