【なぐもんGO・28】 東京急行電鉄(東急電鉄)は5月から、切符の券売機で銀行の預貯金の引き出しができる「キャッシュアウト」サービスを開始している。「キャッシュレス化を進める時代に現金?」と思うかもしれないが、東急電鉄の担当者は「脱・現金を後押しする施策」と訴える。記者が実際に体験し、その真意を確かめた。

東京急行電鉄のQRコードリーダー搭載券売機

 キャッシュアウトサービスを考案した東急電鉄のフューチャー・デザイン・ラボ 事業創造担当の八巻善行プロジェクトリーダーは、「キャッシュレス化が進んだら、現金を引き出せる場所が減る。日本各地にある駅で現金が手に入るようになれば、急に現金が必要になったときにも安心だと考えた」と、サービス導入の背景を語る。
 
キャッシュアウトサービスを考案した東急電鉄のフューチャー・デザイン・ラボ 事業創造担当の
八巻善行プロジェクトリーダー

 現在、キャッシュアウトサービスに対応している銀行は、ゆうちょ銀行と横浜銀行の2行。利用するには、いずれかの口座と、対応するスマートフォン(スマホ)決済サービス「ゆうちょ Pay」もしくは「はま Pay」を用意する必要がある。今回、記者はゆうちょPayで試した。

 まず、アプリのメニュー画面から「キャッシュアウト」に進み、金額を選択する。
 
アプリのメニュー画面から「キャッシュアウト」を選択

 選択できる金額は1万円、2万円、3万円の三つ。一日に引き出せる上限額は3万円だ。
 
「金額選択」に進み1万円、2万円、3万円の三つから金額を選択する

 1万円を選択して、「コード発行」をスライドし、QRを発行する。
 
今回は1万円でコードを発行

 次に、券売機側で「QRコード バーコード を使う」を選択すると、「QRコード・バーコードをかざしてください」というメッセージが表示される。
 
券売機の画面で「QRコード バーコード を使う」を選択する

 指示に従って、QRをリーダーにかざし、券売機の画面で確認を押せば、無事に券売機から1万円札が出てきた。QRコード決済を利用したことがあるユーザーなら、迷いなく使うことができるだろう。
 
リーダーにスマホで表示しているQRコードをかざして、券売機の画面で確認すると、
無事に1万円札が出てきた

キャッシュアウトサービスと券売機の相性がバツグン!

 キャッシュアウトサービスは券売機との相性が抜群だ。最たる点は、券売機は駅に常設されており、ATMのように別途で管理・維持の手間や費用をかける必要がないことだ。また、引き出す額を1万円単位で選べる理由は、1万円札はつり銭として使うことがないからだという。「鉄道事業に差し支えないことが前提なので、つり銭として利用される可能性がある5000円以下は対象外にした」と八巻氏。

 さらに「1万円札がある程度たまったら、券売機から移す必要がある。キャッシュアウトサービスの利用が増えたら、この輸送の手間も省けるかもしれない」と八巻氏は副次的な効果も期待する。貯まる一方だった1万円札を有効活用するアイデアは、他業界でも活かせそうだ。

 QRコードには個人情報が含まれないので、東急電鉄側では個人情報を一切取得していない点も、消費者の心理的なハードルを下げている。

展開する準備は万端

 6月30日までは手数料無料キャンペーンを実施している。7月1日以降は、ゆうちょ銀行が一律108円、横浜銀行が平日108円、土日祝日が216円の手数料がかかる。ただ、この手数料は銀行側で発生しているもので、東急電鉄側は銀行から別途で業務委託料を受け取るビジネスになっている。

 キャッシュアウトサービスに対応する券売機の数は全315台(6月19日時点)。東急電鉄の85駅で展開しており、1駅につき2台以上設置している。1日の利用数は100~200回あるという。

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 八巻氏は「今後はほかの鉄道会社にも展開できるようなシステムを開発している」と、先を見据えた施策であることを明かす。連携する銀行や利用できる場所がさらに広がれば、ATMや現金管理コストが削減でき、キャッシュレス社会実現の後押しになるはずだ。

 老若男女問わず、あらゆる人が利用する公共施設では、現金の利用はなくならないだろう。「だからこそ、現金の活用をビジネスに生かしていく」と八巻氏は力強く語った。(BCN・南雲 亮平)