3歳のときに突発性難聴を患い、30年以上にわたって補聴器を使用しているuCCI氏。初めて自分用に作った補聴器はオーティコン。一時他社の製品を使ったこともあったが、基本はずっとオーティコンユーザーで現在は昨年秋に発売された「オーティコン オープン(以下、オープン)」耳あな型を装用しているという。前編では、幼少期から学生時代までに身につけた補聴器ユーザーならではの処世術やダンサーとして開花するまでの話を聞いた。後編では現在も日本と海外で仕事をこなすuCCI氏にユーザーの視点から感じたそれぞれの補聴器事情をたずねる。

難聴というハンデを感じさせない明るさとバイタリティで、ダンサーやプロデューサー、
キャスティングコーディネーターなど多彩な分野で活躍するuCCI氏

 日本は高齢化に伴い、難聴者数が増えているにもかかわらず、補聴器の装用率は低い。日本補聴器工業会が2018年12月に発表したデータによると、欧米諸国は30~50%という装用率だが、日本はわずか14%。一体なぜこうした状況に陥っているのだろうか。

補聴器の装用率はなぜ低い? uCCI氏が持論を展開

 ダンサーとして活躍していた時代にはニューヨークで仕事をこなすことが多かったというuCCI氏は日本と海外の補聴器を取り巻く環境の違いを語る。「ニューヨークでは『聴覚障がい者』という言葉がないくらいに健聴者との垣根が低く、生活に不自由を感じずに過ごすことができます。『耳が聞こえない、だから何?』というくらいドライ。でも困ったときはちゃんと助けてくれる。日本だと階段の前で車いすの人が困っていても何もしないという人が多いかもしれませんが、海外だと金髪でモヒカンのパンクでちょっと怖そうな人でもすっと車いすを押すという光景をよく目にしました」。

 こうした対応の差は国民性の違いもあるのかもしれないが、uCCI氏はほかにも日本の補聴器装用率が上がらない理由があるのではないかと話す。その要因の一つが、販売店のイメージだ。「補聴器を売っている場所は路地裏だったり、ビルの2階だったり、分かりにくい。例えば、メガネ店なんかは駅の改札前の目立つところに店を構えていたり、おしゃれなCMを流していたり、誰でも気軽に入りやすいイメージができあがっていますよね。まずは『気軽に入りづらい』『暗い』といったマイナスイメージを払拭するべきです」
 
日本の補聴器装用率が上がらない理由について持論を語るuCCI氏

 補聴器販売店の存在感の薄さは、補聴器そのものの認知度の低さにもつながっているという。海外ではほとんどの人が補聴器というものを認知しているが、uCCI氏の肌感覚だと日本では10人に2人くらいの割合で「補聴器って何?」という反応をされるそうだ。

 また、補聴器の購入には一定の条件を満たせば国から助成金が下りるということに対する理解や、補聴器には消費税がかからないという事実もあまり知られていない。補聴器は医療機器ということもあり、高価なものも多い。購入するつもりで販売店に行ったが、価格を見て断念した、というケースも多いとのこと。uCCI氏は聴力によっては助成金を使えばこれくらいの価格になると販売員の方からもしっかり伝えていくことが必要なのではないかと話す。

 補聴器のネガティブなイメージを払拭するためにuCCI氏が自身で作成、考案したのが「デコ補聴器」だ。補聴器にスワロフスキーをあしらった補聴器は医療機器という概念を忘れさせるほど、クールでおしゃれ。「初対面の相手との会話のきっかけにもなる」とuCCI氏らしい意図もある。

 「おしゃれだから自分の補聴器にもやってほしい」と人に頼まれることもあるそうだ。しかし、デリケートな精密機器である補聴器にデコレーションなどの改造を施すのは、もちろん自己責任。「高価な補聴器を預かるのは心配だし、プロじゃないしとお断りしている(笑)」とのことだった。

 「義手や義足をターミネーターみたいなロボットにしてかっこいい、という文化は海外では広がりつつあります。特に耳かけ型補聴器ではカラバリが増えデザインもスタイリッシュなものが増えているので、デザインを楽しむような流れが日本でも生まれるといいですよね」。
 
 
 
uCCI氏が自分で装飾したデコ補聴器。
歌手の浜崎あゆみさんが自分のイヤーモニターをデコレーションしていたのをヒントにしたそうだ

最先進の補聴器「オープン」をuCCI氏も絶賛 音楽の楽しみ方も激変

 現在は昨年秋に発売されたばかりのオーティコン補聴器の「オーティコン オープン(以下、オープン)」という耳あな型を装用しているuCCI氏。これは11コアのNoC(ネットワークオンチップ)が入った高性能チップを搭載する補聴器で、音の聞こえ方がこれまでとずいぶん異なるそうだ。

 「補聴器にはアナログとデジタルの2種類があって、音を細部まで調整できるデジタルが現在は主流です。ただ、音がちょっと無機質というか独特なんですよね。人それぞれ好みはあると思いますが、僕はちょっとそれが苦手で……オープンはデジタルなんですが、かなり僕の好みの音質です。補聴器を外したときに実感しますが、自然の音にとても近いと感じます」
 
オーティコン補聴器の「オープン」。
昨年秋に耳あな型が登場し、フルラインアップが揃った

 「オープンを初めて装用した僕の感想は  オープンのイメージ画像そのもので、色々な方向から音が聞こえる気がします。またとにかく補聴器をはずす必要がなく、音楽も電話もすべて補聴器をしたままで対応できるのがとても便利だと実感しています」。
 
オープンの聞こえ方のイメージ。
360°全方位の音をしっかりと判別することができる

 とりわけ気に入っているのが“音楽”の楽しみ方だという。それには、オープンに備わっているスマートフォンとの連携機能が関係している。オープンはスマホとワイヤレス接続に対応しており、再生した音をそのまま補聴器で聞くことができるのだ。

 「僕は音量を最大にして楽しみたい派なので、今までは補聴器の上からヘッドホンを装着して聴いていました。補聴器の音量を下げて、音楽の音量を中くらいにするとちょうど良いんです。でも、補聴器から直接音を聴けるようになると、煩わしさがずいぶんとなくなりました。パワーベースという機能をONにすると、重低音が増幅されて振動もしっかり伝わってくる。スマホからの音が明瞭に聞き取れるのもポイントが高い」。

 最後に、uCCI氏が難聴を患った当時と現在の若い世代の補聴器を取り巻く環境について違いを聞いた。意外にもポジティブな変化をもたらしているのは、ブログやSNSなどソーシャルメディアの存在だ。「以前よりは難聴であることや補聴器をつけていることを隠しているみたいな人は減ったんじゃないでしょうか。ブログやSNSの影響も大きいと思います。補聴器を付けたダンサーって他にもいるんだということを知ることなどもできるようになりました」。また、幼いころに障がいを持つと両親や施設関係者が過保護になり、家に引きこもってしまう傾向があるという。uCCI氏は「自分のやりたいことを自分で考えて行動することが大事」とメッセージを送る。

 時代の変化と共に、補聴器や難聴者をとりまく環境はさまざまな変化がある。昨今の補聴器技術は驚くべき変化を遂げ、ソーシャルメディアの発達により多様なものの見方、感じ方を身近に感じられる時代になってきている。uCCI氏のようにハンディキャップを個性に変え、海外で活躍している人もいる。今後、社会的支援の充実や聴覚ケア世界にパラダイムシフトが起こり、日本でも欧米並みに補聴器が普及し、生き生きと自分らしく生活を送る人々が増えることを願ってやまない。


※今回の装用事例は一例であり、個々人の聞こえの詳細な検査は耳鼻科専門医を受診してください。補聴器は個々人の聴力にあわせ、適切なフィッテイング調整によりの効果が発揮されます。従って装用者の聞こえの状態により、その効果が異なることがあります。