No.1メーカーが打つ次の一手、NECのPC2019年春モデルを分析

販売戦略

2019/01/23 17:30

 「PC不況」といわれて久しいが、2019年に10月の消費増税、20年にWindows 7のサポート終了と、メーカーにとっては絶好のチャンスが到来する。復活の糸口をつかむため、各社の新モデルにも熱がこもる。1月22日に発表会を開催したNECのPC2019年春モデルも次世代を見据えたアプローチが随所にみられた。

1月22日にNECがPC2019年春モデルを発表

 全国の主要家電量販店・ECショップからPOSデータを毎日収集・集計している「BCNランキング」が1月に発表したデータによると、NECは18年においてノートPCの年間販売台数シェアで22.0%のシェアを獲得してNo.1に立った。デスクトップPCでは富士通に1.7ポイント差で後塵を拝したが、NECが国内のPC市場を長くけん引している存在であることは間違いない。
 
NECは2018年のノートPC販売台数シェアで1位、
デスクトップPC販売台数シェアで2位を獲得

 しかし、NECパーソナルコンピュータの河島良輔執行役員は「No.1メーカーとして選ばれていることは本当にありがたい。しかし、それに甘えてきた部分もあるのではないか」と自戒する。そこで、昨年秋からPCブランド「LAVIE」のスローガンを「PCとは、愛だ」に刷新。PCを“家族”のようにユーザーに寄り添う存在として訴求する方向に舵を切った。
 
「No.1に甘えていた部分もあるのではないか」と自戒する
河島良輔執行役員

 今回、発表した3タイプの新モデルにもその要素が色濃く反映されている。まず、「LAVIE Desk ALL-in-one」に搭載した、シャットダウンの状態からウェイクワードを話しかけることで手を触れることなくPCを起動できる「ボイス起動」。
 
世界初のボイス機能を搭載する
「LAVIE Desk ALL-in-one」

 マイクロソフトの音声アシスタントColtanaとの連携で、起動後にそのまま音声で音楽を再生するなどのシームレスなアクションが可能だ。PCを利用するには机の前に座って、キーボードやマウスを使って、といった前提が根強くあるが、より気軽に使えるデバイスとして再定義したい狙いがある。
 
起動から音楽を流すまで音声のみで操作するデモ

 売れ筋の「LAVIE Note Standard」も、一押しの機能が高速起動だ。「PCに対するユーザーの不満トップは“起動が遅い”。これは長年変わらない」とのこと。これまでも上位モデルで高速起動(NECでは“パッと起動”と呼称)をラインアップしていたが、19年春モデルでは全体の86%にあたる33モデルに搭載して「NEC=起動が早い」というイメージを育てていく。
 
「LAVIE Note Standard」も売りは高速起動

 2年前から展開している学生向けモバイルPC「LAVIE Note Mobile」は、ターゲットである学生に徹底的なリサーチを行い、「学生が求めるPCとは」というテーマの解を追求した。「ただ1kgを切っていればいいということではない。調査の結果、『大きさがA4サイズ以下』『重量が1kg以下』『価格が15万円以下』『外でも使えるデザイン』が4大要件であることがわかった」(商品企画部の森部浩至シニアエバンジェリスト)。
 
学生が求めるノートPCの4大要件

 今回で3代目となる「LAVIE Note Mobile」は、A4以下のサイズ(縦196×横289mm)、約908~910g、税別希望小売価格10万4800~14万4800円、若い女性向けを意識したメタリックピンクを含む3色のカラーバリエーションで4大要件をクリア。学生と企画・選定した情報メディアやクリエーションアプリをプリインストールするなど、ソフトウエアでも学生に寄り添う。
 
学生への徹底的なリサーチのもとで開発された
「LAVIE Note Mobile」

 新製品紹介のデモでも感じたが、デジタル家電特有の「使ってみれば分かる」というような訴求が今回の発表会では皆無だった。もちろんスペックや機能は磨かれているが、ユーザーが直観的に「これはいいね」と思える機能のアピールに終始していた印象だ。PC復権のためには、新しい使い方の提案だけでなく、見せ方の工夫が一層求められることになる。発表会にとどまらず、今後は発売後の広告展開、売り場での訴求方法など、さまざまな場所で変化を目にする機会が増えるかもしれない。(BCN・大蔵 大輔)


*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などのPOSデータを毎日収集・集計しているPOSデータベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。