ガソリン車に比べ部品点数の少ない電気自動車(EV)なら異業種からの参入も比較的容易、今や車が家電になろうとしている、とまでいわれている。日に日に現実味が帯びてきた自動運転の分野では、自動車メーカーだけではなく、エヌビディアやバイドゥなど、異業種からの取り組みも盛んだ。しかし現実は厳しい。自動運転システムを完成させたとしても、現実にきちんと走る車なしには、自動運転車は成立しない。人が運転する普通のEVですら、ナンバーを取得し公道を走る車をゼロから開発するとなれば、ハードルはとても高い。EVで実現したいコンセプトはあっても、肝心のEVはどうやってつくればいいのか……。

「トミーカイラZZ」の開発を通じてつくられた、GLMの初代EVプラットフォーム

 そこに目をつけたのがGLMだ。京都大学発のEVベンチャーで、2014年に国産初のEVスポーツカー「トミーカイラZZ」を発売したことでも知られている。かつて京都にあった自動車メーカー、トミタ夢工場のガソリン車「トミーカイラZZ」のコンセプトを継承しEV化した。最高速度は時速180km、満充電時の航続距離は120kmと、まさにスポーツカーそのもの。車の基本部分はすべてゼロからつくり上げ量産化にもこぎ着けた。しかしその過程ではさまざまな困難に直面したという。GLMはこうした困難を乗り越えてきた貴重な経験をビジネスに昇華させた。「プラットフォームビジネス」だ。
 
GLMの初代EVプラットフォームを使って京セラと共同で開発したEVコンセプトカー「Trinity」。京セラが開発したeミラーやeカメラなどを搭載している

 プラットフォームとは、フレームやシャシー、ステアリング、サスペンションといった車の基本部分と、モーター、バッテリー、車両制御ユニットといった、EVの心臓部を指す。この上にボディーを乗せ内装を施し、システムを接続すれば、異業種の企業でもオリジナルのEVをつくり上げることができる、というわけだ。

 すでに、旭化成、帝人、京セラ、東洋ゴム工業と、そうそうたる企業がGLMと組みコンセプトを形にして「実際に走るEV」を世に送り出してきた。GLM自身は自動運転システムを提供する予定はないが、今後登場するであろう自動運転ユニットの受け皿としてもプラットフォームが機能するよう進化させていく計画だ。
 
世界で1台限定のトミーカイラZZのスペシャルカラーリングバージョン

 GLMは11月、京都市・伏見区の新社屋に本社と研究開発拠点を移す。延べ床面積2151m2の4階建てで、設計システムに仏・ダッソーシステムズの最新3DEXPERIENCEプラットフォームや米・ファロの3Dスキャニングシステムなどを新たに採用。2階の開発スペースは、4つに区切ることができ、秘匿性の高いコンセプトカーなどの開発を4つまで同時並行で進められる。

 11月に開いた内覧会では、プラットフォームビジネスをさらに推し進める第2世代の試作研究車両も公開した。前後にモーターを搭載し、4シーターを想定した新しいプラットフォームだ。
 
第2世代EVプラットフォーム試作研究車両を紹介するGLMの田中智久COO。もちろん実際に走る

 この移転を「第2創業期のスタート」と位置づけるのは、同社の国内ビジネスを統括する田中智久COO。「事業はまだ投資の段階だが、プラットフォームと完成車を両輪として、今後完成車ビジネスにも力を入れていきたい」と話す。京都のベンチャー・GLMが生み出す新しいモビリティーの世界に期待したい。(BCN・道越一郎)