酷暑の花火撮影、始まるまでが命がけ

オピニオン

2018/07/22 12:00

 夏の風物詩、打ち上げ花火。夜空いっぱいに広がる音と光の饗宴は、写真好きならぜひとも渾身の一枚に収めたい思う絶好の被写体だ。しかし、今年は近年まれにみる酷暑。撮影には命がけの覚悟が必要だ。

夜空を彩る打ち上げ花火は夏の風物詩(2013年 東京湾大華火祭)

 もっとも過酷なのは撮影場所の確保。花火大会は、日が落ちた後、午後19時あたりから始まるが、場所取りは午後イチあるいは午前中、朝から始まる場合もある。つまり、まだ日が高い時間に場所を確保しなければならないわけだ。シートや荷物を置いただけの場所取りはマナーに反するような気もする。第一どかされてしまう不安もある。とすれば、少なくとも1名はその場所に居る必要があるだろう。午後イチで入場でき、いい場所が取れたのはよかったとしても、始まるのは5~6数時間後。それまで炎天下での待機だ。花火大会だから当然、頭上には遮るものは何もない。花火を見るのに好都合ということは、太陽の光を遮るものがないということを意味する。地面がアスファルトだと、下からマグマのように湧き上がる強烈な熱にも耐えなければならない。
 
渾身の一枚を写真に収めるのはなかなか難しい。シャッタースピードが速すぎて失敗した
(2013年 東京湾大華火祭)

 過去、日本が最も暑くなったのは2013年8月12日。高知県で日本の最高気温41℃を記録した日だ。この年はとにかく暑い夏だった。日本のもっとも暑い日を2日後にひかえた8月10日、東京で開かれた「東京湾大華火祭」(2015年を最後に現在は休止中)に写真を撮りに行った。しかしそれは想像以上に過酷な撮影だった。正確には撮影を始めるまでが過酷だったわけだが。

 長い行列の末、午後14時ごろに写真仲間と二人で会場入り。広い駐車場が観覧席に指定されており、その一角を陣取って、ひたすら待機。幸い会場には出店もあって、アイスや冷たい飲み物も売っていて、多少の暑さ対策にはなったものの、それほど長続きするものでもない。地面に薄いシートを敷いて座っていたが、おそらくその時の気温は軽く40度を超えていただろう。始まるまでの時間はまさに灼熱地獄だった。これを乗り越えることができればあとは撮るだけ。しかし、花火の撮影は思った以上に難しい。普通に手持ちで撮ろうとすると、露出が合わない、ピントが合わない、ブレる……。花火撮影用の準備が必要だ。
 
夜空をキャンバスに広がる花火は抽象画のようだ(2013年 東京湾大華火祭)

 花火撮影にぜひとも用意したい機材は3つ、マニュアルモードのあるカメラ、ケーブルレリーズ、三脚だ。スマホでも撮れなくはないが、おすすめはしない。露出もピントもマニュアルモードのついているカメラが使いやすい。こいつを三脚に据えて、ケーブルレリーズ(シャッターの延長コード)をつないでシャッターを切る。これが基本だ。ピントは無限遠(∞マーク)に合わせて固定。できればレンズにテープを張ってピント位置がずれないようにするほうがいい。シャッタースピードはバルブ(押している間だけシャッターが開いている設定)。ISO感度は100~400あたり。絞りはF11前後にセットする。あとは打ち上げに合わせてケーブルレリーズを押していく感じだ。

 花火をそれらしくきれいに撮るには、打ちあがった直後にケーブルレリーズを押してシャッターを開き、花火が開き切ったら閉じるイメージだ。時間にして2~3秒程度だろう。重要なのは構図。しかし花火が開くまでどの程度の大きさでどこに開くか予想が難しい。やや広めの構図にして、撮っていくのがいいだろう。あとは予測だ。

 真夏の屋外撮影はそれでなくても汗みどろになるもの。特に酷暑の今年は、花火大会の会場での撮影にこだわらず、遠目のテラスからビール片手に花火を楽しみながら撮るのがおすすめだ。(BCN・道越一郎)