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カスタマイズは嫌い!? 30代以下の「完成品主義」とAIの親和性

オピニオン

2018/07/18 19:00

 水回りの位置を含めて住宅設備を丸ごと一新する大規模なリフォームは、「リノベーション(リノベ)」と呼ばれ、オシャレで流行っているようにみえるが、実はそうでもないらしい。不動産関係者のなかでも意見が分かれるようだ。

 「IoT住宅」と銘打ち、最新のIoT機器と家電を詰め込んだ築46年のフルリノベ物件(詳しくは<IoT住宅の理想は団地にある! 築46年のリノベ物件は衝撃の連発>を参照)は、デジタル製品好きとしては大いに心動くが、実際に3000万円超の価格で買うかと聞かれると、築年数が古すぎてNoといわざるを得ない。ただ、築10~20年程度の物件で同じ内容・同じ価格帯なら、口コミで広がるかもしれないと期待も感じた。
 
「リノベ」の人気度はいまいちわからない

建売戸建が若い世代に売れている――限度を超えた「狭小」の家には注意

 地域密着型の不動産会社のスタッフに聞いた話では、エリアによって傾向が異なるが、最近は注文住宅より建売戸建てのほうがよく売れるという。同一エリアなら建売が最も安く、非常に狭い3階建ての狭小住宅なら駅徒歩10分以内でも手が届くからだ。しかし、日々の生活のクオリティを考えると、あまりにも行き過ぎた「狭小」の家は、できれば避けたほうがいいとアドバイスしたい。

 テレビや冷蔵庫洗濯機などの大型家電は、購入前に、設置スペースと搬入経路を確認する必要がある。狭い玄関、短い廊下は搬入しづらく、柱や梁が張り出したリビングに設置すると、もともとの間取りに無理があったため、サイズ以上の存在感を感じるかもしれない。新築分譲マンションですら、50インチ以上の大型テレビはエレベーターにのせるのがやっと。1階住居ならバルコニーから搬入できるが、2階以上はそうはいかない。「住まい」と「家電」のつながりは密接なのだ。

「多すぎる選択肢・カスタマイズは面倒」というマインド

 本題に戻ろう。建売戸建てや中古マンションが売れる理由として、「実物を見たい」というニーズが強いそうだ。また、注文住宅では、間取りや仕様策定のため、複数回の打ち合わせが必要になるが、20代、30代の若い世代では、そうした打ち合わせを「面倒」と感じる傾向が強まっているという。

 中古車販売店でも似たようなことを聞いた。最近は、オーダーを受けて納品される新車より中古車のほうが売れており、価格の安さはもちろん、実際に見て、外観の色合いや内装の質感などを確認したいという希望から、中古車や「新古車」と呼ばれる登録済み未使用車に人気が高まっているという。

 個人的にはたくさんの選択肢から選べる「カスタマイズ」はおもしろく、AとB、機能や値段を比較しながら、どちらがいいか悩む時間は楽しいと感じる。たとえ数時間を費やし、結果的に満足できれば無駄な時間だったとは思わない。しかし、そうした考え方はもはや少数派だと仮定すると、住まいやクルマと同じく、パソコンも仕様をカスタマイズできるBTO(Build to Order)は下火になるかもしれない。一時、インターネットや電話窓口を利用した直販メーカーが注目を集めたが、風向きは、再び店頭ですぐに買える「完成品」に変わったようだ。
 
若い世代は、面倒なカスタマイズを嫌い、完成品を求めているが、
はたして販売店はそのニーズに応えているだろうか?(写真はオープン時のApple 表参道)

PCや家電を売るために、AIで気づきのヒントを

 豊富な選択肢や、自分らしさを反映するカスタマイズに魅力を感じる理想主義の世代と、面倒と感じるリアル主義の若い世代。こうした若い世代や忙しい人に向けて商品・商材をリーチする手段として、行動履歴や位置情報をもとに自動的におすすめ商品や店をリコメンドするAIが、今後ますます重要になるのではないかと感じた。
 
まだAIは、「買い物」を革命するには至っていない

 「完成品」を好む傾向と、問い合わせなど面倒を避ける傾向が強まるほど、日常生活では視界になかなか入らず、自発的に探さない限り、購入に至らないモノは、まずは知ってもらうアプローチが必要になる。以前の記事で、「PCが売れない理由は製品開発にあり」と書いた。加えてもうひとつ、売れない大きな理由がある。そもそも「PCを買いたい」と思う動機づけがないのだ。

 仮に欲しいと思っても、店頭では仕様の細かい違いがよくわからず、有力メーカーの直販サイトをみるとカスタマイズ項目が多すぎてやはりわからない。「クーポン利用で○%割引/○円引き」といったキャンペーン告知もあり、本来の価格はいったいいくらなのかさっぱり不明だ。

 第3次AIブームといわれるものの、まだAIは、面倒なものの筆頭ともいえる「買い物」を革命するには至っていない。スペックで比較しやすいデジタル製品は、AIとの親和性が高いはず。例えば、年齢と毎日の行動範囲、日々携帯しているスマートフォンで見ているサイトの閲覧傾向からAIが「おすすめのPC」をいくつか提示するといった仕組みを構築し、広告枠に常に表示するといった大々的なプロモーションを行わなければ、PCがなかなか売れない状況に拍車がかかると危惧する。(BCN・嵯峨野 芙美)