6月下旬、夏のボーナス商戦がピークを迎えて盛り上がるなか、ある家電量販店のバイヤーの顔色はさえない。2019年10月1日に実施が予定されている消費税率10%を見据えているからだ。「何も手を打たなければ、前回同様に導入6か月前の来年4月から駆け込み需要が起きるだろう」。

10月実施のタイミングが悪い

 バイヤーが抱く懸念は、 全国の主要家電量販店・ネットショップの実売データを集計した「BCNランキング」や内閣府のデータからも裏付けられる。いずれも14年4月に消費税率5%から8%に変更した前回時の家電販売金額の前年同月比推移を示したもの。

 BCNランキングはデジタル家電やPC関連などの実売データを集計した全商品の販売金額であるのに対し、内閣府のデータは主要家電5品目の販売金額という多少の違いはあるものの、トレンドはほぼ同じだ。

 BCNランキングでは、「6か月前」の13年10月に100.5%で前年を上回ったのを起点に、14年3月では159.1%まで上昇したが、翌4月は一気に97.4%に冷え込んだ。内閣府のデータでも、13年10月に106.7%と前年を上回ってから14年3月に191.8%まで急上昇し、翌4月には87.6%まで縮小した。

 バイヤーが気をもむのは、来年10月1日に実施されるタイミングの悪さだ。4月に需要が動き出すと予想すると、ちょうど来年の今頃の6~7月の夏商戦が、需要を爆発させるトリガーになりかねないからだ。

後ろ倒しの「消費税還元セール」

 政府では、需要の急激な変動が起きないように、いろいろな反動減対策を練っているようだ。前回は税率がアップする前の「消費税還元セール」を禁止する特措法をつくったが、これが増税後の一斉値上げにつながり、需要の反動減につながった。今回は増税後の還元セールを解禁し、事業者に価格設定の自由度をゆだねる施策などが報じられている。例えば、10月1日以降に「2%の還元セール」や「通常より2%多いポイント発行」を打つ施策などが考えられる。

 バイヤーとしては「前回は価格の総額と税別表示で、ギリギリまで判断を迫られた。業界の統一ルールのようなものを早めに決めてもらいたい」と語る。税率10%が消費者に与えるインパクトは、5%や8%のときよりも大きいとみる。10万円の商品を総額11万円と税別10万円で表記するのとでは、1万円もの開きが生じてしまうため、消費者は税別価格のほうが安いと誤認してしまう恐れがあるというのだ。

 ただでさえ人材不足に悩まされている小売業にとって、駆け込み需要による消費の大きな変動に振り回されることは、なんとしても避けたい。来年4月から需要が動き出すとするならば、少なくとも今年の冬には具体的な施策を次々に打ち出す必要がある。時間的な余裕は、実はほとんどない。(BCN・細田 立圭志)