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カスペルスキーCEO「セキュリティビジネスは、技術の“質”の戦いになる」

インタビュー

2017/07/11 13:55

 ランサムウェア「ワナクライ(WannaCry)」が猛威を振るった5月半ば、セキュリティベンダー・Kaspersky Labを率いるユージン・カスペルスキーCEOに都内で話を聞く機会を得た。セキュリティソフトの効果については、時として疑問の声も聞かれるが、最新の同社製品を入れていたPCは、ワナクライの被害に遭うことはなかったという。セキュリティ製品が本当にユーザーを守れるのか、どのように見極めればよいのだろうか。

取材・文/日高 彰、写真/大星 直輝


Kaspersky Lab
ユージン・カスペルスキー 会長兼最高経営責任者(CEO)

客観的な複数のテストで実力を判断すべき

―― サイバー攻撃の被害は増加の一途をたどっており、セキュリティ業界の中にすら、アンチウイルスソフトの有効性を疑問視する声があるようです。

ユージン・カスペルスキー(以下、E) 15~20年前から続く、シグネチャ(定義ファイル)をベースとした古いアンチウイルスソフトはもう死滅しているといえるでしょう。しかし、現在のセキュリティソフトには数多くの技術が用いられており、シグネチャベースのアンチウイルス技術は、製品を構成するわずかな一部分に過ぎません。PCやスマートフォンを守る目的であれば、質の高いセキュリティソフトを導入することが効果的な対策といえるでしょう。

―― セキュリティソフトの「質」というのは、どのように確かめればよいのでしょうか。

E 世界では、独立した第三者によってさまざまなセキュリティ製品がテストにかけられており、製品ごとに異なる結果が出ていますので、これが指標となります。その際、一つのテストだけをみて品質を判断しないことをおすすめします。いろいろな情報元による複数のテスト結果の平均値を見るべきです。弊社の製品は多くのテストにおいてトップの地位を獲得しており、私はこれを誇りに思っています。

―― 客観的なテストでは品質が認められているということですが、日本のマーケットからの反応はどのように感じられていますか。

E 日本法人設立から13年あまりが経過し、コンシューマ市場では8~10%程度のシェアを獲得しているとみていますが、欧州や他のアジア各国の状況と比べると、まだまだ成長の余地はあると考えています。日本市場は非常に強固で、入り込むのは簡単ではありませんが、セキュリティビジネスにおいては、ユーザーにより高い安全を保証できる企業が最終的に勝つと考えています。

―― カスペルスキー製品は「ワナクライ」の攻撃からもユーザーを正しく守れたと聞きました。

E 世界中で、空港や鉄道、公共施設などのサイネージがワナクライの表示に書き換えられていました。あの被害を報じたニュース映像をご覧になった方には、個人、企業から社会インフラに至るまで、あらゆるところが攻撃の対象になるということが伝わったと思います。十分な品質をもたないセキュリティ製品を使い続けたユーザーは、次第に「自分は守られていない」と気づくようになります。ですから、私たちは製品の質にフォーカスしているのです。
 

セキュリティ製品の「質」を意識せよ、と強調するカスペルスキーCEO

攻撃不可能なOSIoT家電はつくるべき

―― 先ほど、セキュリティソフトの有効性について「PCやスマートフォンを守るのであれば」という条件付きで話されました。

E 家庭においてもIoT製品の導入が進んでおり、一部には「スマートハウス」と呼ばれるような環境に暮らしている人もいます。残念ながら、コンピュータ化された家電製品には、ぜい弱性があるにもかかわらず、パッチを当てることが不可能なものも多く存在しています。アップデートできるような設計になっていないのです。

―― 今後、IoT製品のセキュリティをどのように担保していこうと考えていますか。

E IoTのセキュリティ問題を解決する技術として、「セキュアプラットフォーム」「セキュアOS」と呼ばれるものがあります。OSのレベルにおいて、マルウェア感染が発生するのを不可能にしておくということです。われわれは、自動車や監視カメラなど、コンピュータ化が進むさまざまなデバイスを対象とした、セキュアなプラットフォームの開発を進めています。

―― 攻撃不可能なプラットフォームを、本当に実現することができるのでしょうか。

E PCやスマートフォンでは高い機能性が要求されており、多くのアプリケーションをインストールする必要がありますので、この手法はとれません。しかし、監視カメラ、冷蔵庫掃除機コーヒーメーカーといったIoT機器であれば、いろいろなアプリケーションをダウンロード可能にしておく必要はありません。セキュアなプラットフォームを使うべきです。

―― 日本の家電メーカーとの間で、セキュアプラットフォームを用いた製品開発について何か進んでいる話はありますか。

E この技術は昨年発表したばかりで、現在は最初の採用例としてネットワークスイッチで1つの製品が出たところです。そのため、日本で具体化している話はまだありませんが、私たちはパートナーを求めており、セキュアプラットフォームを用いたIoT製品を協業によって開発していきたいと考えています。IoTの世界で行うべきは、「セキュリティ対策をする」ことから、攻撃不可能な「免疫をもつ」システムをつくることに変わるはずです。そのため、私たちはセキュアプラットフォームの研究開発に戦略的な投資を行っています。
 
■プロフィール
Eugene Kaspersky(ユージン・カスペルスキー)

1965年、ロシア・ノボロシスク生まれ。89年、研究機関での勤務中にPCが「Cascade」ウイルスに感染したことがきっかけで、ウイルス駆除ツールを開発。97年のKaspersky Lab設立以降、同社のアンチウイルス研究を率い、2007年よりCEOを務める。


※『BCN RETAIL REVIEW』2017年7月号から転載

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