「PCはコモディティ化が進んだ成熟市場」と言われるようになって、早10年以上が経過したが、この見方は本当に正しいのだろうか。実際には、カタログスペックには表れない高性能・高品質を追求したモデルが数多く登場しており、きちんと付加価値を訴求することで、高単価モデルの拡販もまだまだ可能だ。回復基調に乗ったPC市場で、提案のために押さえておくべきポイントを探る。

売り場へ足を運ぶのは、PCを本当に必要とする人

 CPU、メモリ、HDD/SSD、液晶パネルなど、PCは汎用のパーツを使って組み上げられているため、どのメーカーのカタログにも同じようなスペックの商品が並んでいる。消費者にアピールできる唯一の差異化要素は価格であり、メーカーや販売店は利益を削って価格競争に走らざるを得ない状況にある──経済の教科書であれば、このような話の進め方で「PC市場のコモディティ化」を説くことだろう。

 しかし、こんなストーリーだけで説明できるほど、PC販売の現場は単純なものではない。2014年春以降、縮小が続いていたPC市場だが、ここ数か月の販売台数は前年同月比でプラスに転じている。かつてPCの主用途であった、ウェブサイトの閲覧やメールの送受信であれば、スマートフォンやタブレット端末でより手軽に行えるようになったにもかかわらず、消費者は再びPCを求めるようになっているのだ。
 

 家庭で使用される情報端末がPCしかない時代なら、独自の価値に乏しいコモディティと呼ばれるような機種にもニーズはあったが、今あえてPCを求め店頭に足を運ぶ消費者は、PCならではの使いやすさや表現力を求めている。本当にPCを必要とする消費者に対して、従来のような価格対性能比をベースとした販売トークで提案を行えば、高付加価値商品の販売機会を逃すばかりか、購入後の顧客満足度を下げることにもつながりかねない。

スペック外の性能・品質が、ユーザー体験に大きく影響

 家庭用PC市場全体において、販売台数で最も多くの比率を占めているのが、15型クラスの据え置き型ノートPCだ。メーカー各社が多数のモデルを投入しており、コモディティ的な機種が多いのもこのゾーンである。
 

 しかし、カタログ上、同じスペックであったとしても、商品によってユーザーの体験は異なってくるという点に十分留意する必要がある。例えば、同じフルHD液晶を搭載したPCであっても、並べて見比べてみると、色の再現性や視野角は機種によってそれぞれ異なる。ユーザーは高精細なスマートフォンの画面に慣れており、より大画面のPCにはPCなりの迫力や鮮やかさ、文字の読みやすさなどが求められる。

 また、据え置き型ノートPCでは、音楽や動画、ゲームなどを楽しむ際に内蔵スピーカーで音声を出力する機会も多い。専用のオーディオ機器に比べると、はるかに小さい体積で音質・音量を確保する必要があるため、メーカーごとの設計ノウハウの優劣が表れやすい部分だ。

 そして、工業製品として当然求められる根本的な品質として、不具合なく安心して使い続けられる信頼性が挙げられるが、本当にそのPCが信頼に足るものであるかは、長期にわたって使用して「PC=コモディティ」ではない消費者に伝えるべき付加価値とは初めてわかる点であり、購入前にいくら実機を触っても正確に知ることはできない。

 そこでひとつの指標となるのが、メーカーが定めている保証期間だろう。家電の多くは1年保証であり、それ以上の保証は有償の延長サービスとして、いわば保険商品のような形で提供されているが、標準で1年を超える保証期間が設定されていれば、信頼性に関してメーカーが特に強い自信をもっている機種の証とみることができる。

 また、PCがコモディティと呼ばれるようになった要因として、外部ベンダーへの製造委託が急速に進んだことも挙げられる。しかし、継続的な品質改善のためには、設計・製造からアフターサービスに至るまですべてのプロセスの中から、課題やニーズを洗い出し、次の商品に反映させるサイクルを繰り返す必要がある。消費者の目には届きにくい部分だが、メーカーがどのような体制でものづくりに取り組んでいるかも、販売のプロとしては知っておくべき要素と言えるだろう。

■ノートPC 注目の新製品

 東芝の15.6型ノートPCの新製品「dynabook T75」は、高品質の追求により、メーカー無償保証期間を2年としている。液晶パネルの特性に合わせた色補正技術、オーディオブランドとの協業によるサウンド技術を採用し画質・音質を追求。パワフルな第7世代Corei7プロセッサを搭載し、ストレスを感じさせない軽快な動作を実現した。
 

※『BCN RETAIL REVIEW』2017年7月号から転載

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