MVNOのサービスがより多くの消費者に利用されるようになり、ユーザーの期待や事業者として求められる責任も、従来の大手3大キャリアに近いものになりつつある。しかし、大手3社に比べて経営体力の小さいMVNOが、大手と同じような事業運営を行うことは不可能。そこで重要となるのが業界横断での取り組みや、大手がすくいきれないニーズに対応するための、フレキシブルなサービスや販売形態の提供だ。



■【MVNO座談会2017】
テーマ3:「格安スマホ」からその先へ
求められるのはMVNOならではの価値

MVNO各社共同でのルール策定や効率化

 公正な競争と消費者の保護という観点で、ひとつのテーマとなっているのが、ユーザーが実際に享受できる通信速度の公開だ。昨年から大手3社には定められた測定方法による「実効通信速度」の開示が総務省より求められているが、MVNOにも速度の開示を求める動きがある。

 情報通信関連の業界団体・テレコムサービス協会の一部会で、MVNO各社が参加する「MVNO委員会」でも、速度開示に向けた準備が始まっている。MVNOの中には人的リソースや技術の蓄積が限られる事業者もあり、どんなルールのもとで測定し、どのように開示するのが消費者の利益になるのか、事業者間で議論が行われているという。MVNOによっては、特定のコンテンツやサービスに最適化したネットワークを提供している場合もあり、大手と同じ土俵で速度を比較するのが本当に適切なのかといった視点もある。
 

議論は大いに盛り上がった

 そのほか、SIMフリーを前提とした世界で円滑にサービスを提供するための取り組みとしては、端末の動作検証を共同で行うといったアイデアもある。現在は、主要な携帯端末が自社のサービスで使用できるかを各社は独自に検証しているが、例えば海外メーカーが日本のMVNOに端末を供給する際、MVNO間で共通化できる試験については一括で実施し、その結果を共有すれば、MVNOとメーカー双方の手間やコストを削減できる。すでに一部の事業者とメーカーの間ではこれに近い取り組みが行われた例もあるという。IoT機器など端末の種類はさらなる増加傾向にあり、検証の効率化は急務となっている。

大手にできないことをどれだけやれるか

 また、MVNO各社が口を揃えて強調するのが、「大手キャリアにはない付加価値の提供」を今後さらに目指すという方針だ。現在は「格安スマホ」「格安SIM」といった呼ばれ方が先行し、ほとんどのユーザーはスマートフォンを安く使えることに価値を見出している。しかし、大手からネットワーク帯域を仕入れてユーザーに小売りするというMVNOの事業構造上、単にスマホ向けの格安通信を提供するだけでは、どれだけ加入者が増えても原価がかさみ収益性は改善できない。
 

U-NEXTの萩原智晴室長

 そこで、各社ではIoT機器など、これまでとは異なるデバイス向けの通信サービスの開発にも力を入れている。IoTが普及すると、設置する端末の数は増えるが、1端末あたりのデータ量は減るし、しかも一部のIoT機器は深夜などで回線が空いている時間帯を選んで通信させればよい。トータルでみるとネットワーク帯域をより効率よく使えるようになり、利益もアップするという考え方だ。

 また、オペレーション面でも効率や付加価値を向上させられる余地はまだまだある。例えば、自動販売機による無人販売は、インバウンド需要の取り込みと、営業コスト削減の両面で有効だ。サービスやサポートも、新しいテクノロジーの導入でリモート化、自動化を進められる。

 大手にはないフットワークの軽さは、MVNOの最大の武器。競争のさらなる激化が避けられない中、ニーズの変化に柔軟に対応できるかが、今後の生き残りを左右するだろう。(BCN・日高 彰)
 
開催日:2017年4月28日
場所:BCNアカデミールーム
参加メーカー:インターネットイニシアティブ(IIJ)、NTTコミュニケーションズ(OCN)、U-NEXT
▼MVNO3社が議論

https://www.bcnretail.com/market/detail/20170530_42901.html


※『BCN RETAIL REVIEW』2017年6月号から転載