格安プランが魅力のMVNOだが、市場の成熟で各社の料金体系はほぼ横並びになってきた。大手キャリアもMVNOを意識した価格帯のプランを展開し始め、料金による競争は飽和状態になりつつある。また、顧客層の拡大でサービスを選択する基準も多様化しつつある。MVNOは急速な市場の変化に対応すべく、さまざまな切り口から他社との差異化を図っている。座談会で各社から挙がったキーワードは「安心・安全」だ。


■【MVNO座談会2017】
テーマ1:争点は料金から安心・安全へ
MVNOの弱点克服に注力

料金はすでに横並び 競争は次の段階へ

 SIMフリーの市場が立ち上がり始めた3年前のキーワードは、「格安」だった。当時はデータ容量当たりの料金に差があり、ユーザーは自分の利用スタイルに沿って、あるいは妥協点を探りつつ、なるべく安いプランを模索していた。

 潮目が変わったのは2016年3月の総務省による「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」の策定だと、座談会出席者は口を揃える。大手キャリアの「実質0円廃止」が、幅広い層でスマホ運用見直しの機運を高め、SIMフリーに意識が向いた。これまでの主要顧客であったアーリーアダプターからファミリー・シニア層まで、一気に乗り換えを検討するユーザーが拡大した。
 

家電量販店だけではなく、アクセサリ専門店など、さまざまな形態のリアル店舗にも進出している

 市場の成長によって、各社のプラン料金は一定ラインに落ち着き、不安視されていた通信品質も安定。MVNOにとっては絶好の商機となったが、急速な普及は弊害ももたらした。

 17年4月に国民生活センターが格安スマホに関して注意喚起。発表によると、全国の消費者センターに寄せられた相談件数は14年が139件、15年が380件だったのに対して、16年には1045件まで激増。その多くはMVNOのサポートに対する疑問や不安だった。

 MVNOが低価格を実現できている背景には、店舗や人員コストの削減がある。「リアル店舗も展開するが、サポートが主ではない。コンセプトショップとしてサービスの魅力を知ってもらうという意味合いが大きい」と、出席した参加者からも声が挙がった。「大手キャリアがなぜ割高なのか、MVNOがなぜ格安なのか、正しい認識を消費者に浸透させるしかない」というのが各社共通の見解だ。

 一方で、これまであまり重視されていなかった「安心・安全」が武器になりうる状況になった。各社はリアルのタッチポイントを増やしたり、選びやすいシンプルなプランを展開したりすることで、安心の創出に力を入れる。バックヤードの問題も、大手キャリアとのAPI連携や自分のタイミングでSIMの切替えができるようにすることで、解決を図っている。顧客の新たな要望は負担増になるものの、生き残りをかけて、今後競争は過熱しそうだ。
 

インターネットイニシアティブの今井健副部長
 

付加価値による差異化も 他社連携で模索

 「安心・安全」以外にも新たな差異化ポイントはある。通信とは別の切り口の付加価値提案だ。例えば、端末とのセット販売。一時は下火になっていたが、最近になって需要が回復しつつある。「ASUSやファーウェイなど、海外メーカーのSIMフリー端末の認知が高まり、ニーズが増している」そうだ。

 他社の動画配信サービスや新聞の電子版をセットにすることで、分かりやすい違いを売りにするプランも増えてきた。大手キャリアが電力や光回線のセット割を展開しているが、MVNOはインフラよりエンタメ寄りの提携が目立つ。この路線が発展していけば、単純にスマホの利用料金を見直すのではなく、生活支出全体を抑えるためにスマホのプランを見直すという流れも生まれてくるだろう。(BCN・大蔵 大輔)
 
開催日:2017年4月28日
場所:BCNアカデミールーム
参加メーカー:インターネットイニシアティブ(IIJ)、NTTコミュニケーションズ(OCN)、U-NEXT
▼MVNO3社が議論

https://www.bcnretail.com/market/detail/20170530_42901.html


※『BCN RETAIL REVIEW』2017年4月号から転載