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レイコップ・ジャパンの李誠晋代表取締役が語る、ふとんクリーナーの黎明期

インタビュー

2017/05/26 18:00

 レイコップ・ジャパンの李誠晋(リ ソンジン)代表取締役に、ふとんクリーナー市場の立ち上げにかけた思いを聞いた。

取材/道越一郎 BCNチーフエグゼクティブアナリスト
文/南雲 亮平、写真/瀬之口 寿一

医師が考え出した新市場
ふとんクリーナーのパイオニア

 

李誠晋(リ ソンジン) 代表取締役

ゼロからのスタート手探りで見つけた答え

道越 ふとんクリーナーをつくったきっかけは?

 医師だったときに、患者さんのアレルギーの症状に対して薬を処方するよりも、原因に直接働きかけて予防する方が健康にいい、と考えたのがきっかけです。アレルギーの原因の約70%はふとんについており、既存の製品で除去を試みましたが、最適なものは見つかりませんでした。そこで、ふとんから健康有害物質を取り除く家電を、自分でつくろうと決心し、会社を立ち上げました。

道越 今までにないものをつくることに、不安はありませんでしたか?

 もちろんありました。技術者ではないので、どうしたらものづくりができるのかも分かりませんでした。しかしそのときは、今つくらなければ将来も実現できないと思って、開発をスタートしました。最初のメンバーはインターネットなどで募り、私のほか、MP3プレイヤーを扱っていた技術者とデザイナーの3人だけ。経験も前例もない製品をつくろうとしていたので、大変苦労しました。

道越 開発の過程で最も注力した点は?

 どうしたら寝る前に気軽にふとんをケアできるか、に焦点をあてました。はじめは吸引力だけで取り除こうとしましたが、生きているダニの1 ~ 2割程度しか取れませんでした。そこで、病院で使っている技術の研究や数々の実験を重ね、短い時間で90%以上の有害物質を取り除く方法を探した結果、紫外線でダニを麻痺させてから、叩いて浮かせて吸引する方法が最適であることを突き止めました。これを実現するために設計したのが、今のレイコップです。
 

レイコップを開発し始めた当時を振り返る李誠晋代表取締役

「無料貸し出し」が新市場形成の決め手に

道越 販売開始直後の売れ行きはいかがでしたか?

 あまり良くなかったです。これまでにない新しい製品ということもあり、使ったことで得られるメリットを、消費者にうまく伝えられませんでした。PRする力も足りず、メディアに掛け合ってもあまり取り上げてもらえませんでしたが、この製品は人々の健康のためになるものだと信じていました。

道越 その状況から、どのようにして市場を形成するに至ったのでしょうか?

 ネットによる口コミです。レイコップを使ってもらえれば、いいものだと実感できるので、とにかく使っていただくことに注力しました。具体的には、マンションでイベントを開催し、1週間無料でレイコップを貸し出したのです。結果的に、試した7割の方が購入に結びつきました。購入者の多くは子どもがいる家庭の母親でした。実際に使ってみてたくさんのごみが取れたので、子どもの健康のために購入した、という話でした。こうした体験会を1か月に8回ほど、半年間で50回ほど開催していたら、ネットのブログなどで口コミが広がって、販売が徐々によくなってきました。著名な方がネット上でレビューを公開するケースも現れ、市場が急拡大しました。また、いただいた声は、量販店やテレビショッピングでの製品紹介に反映しています。

道越 これからはふとんクリーナー以外にも市場をつくっていくのですか?

 レイコップは社風のよさで、人が集まっている企業です。ゼロから事業をスタートさせて成功した経験が、社員の中に刻み込まれています。ですので、これからもそのような活動を続けていきたいと考えております。
 

ふとんクリーナー
レイコップRN


■ピックアップ
 

レイコップ史上、最小で最軽量のエントリーモデル。従来のモデルより吸引幅とダストボックス窓を拡大し、作業効率が向上した。また、新型のふとんブラシを採用したことで、ハウスダストの除去能力も強化している。
 
■プロフィール
李誠晋(リ ソンジン)
1970年、韓国生まれ。韓国・翰林(ハンリム)大学校医科大学卒業。96年、医師として医療に従事し、その後アメリカのデューク大学経営大学院経営学修士(MBA)を取得、米国大手製薬メーカーのプロダクトマネージャーとして勤務。2005年にレイコップの研究開発を開始し、12年レイコップ・ジャパン株式会社を設立し代表取締役に就任(現職)。

<動画インタビュー>トップに聞く『会社の夢』―李誠晋(リ ソンジン)
 
◇取材を終えて

 布団クリーナーの先駆者・レイコップ。そのユニークさで一世を風靡しただけに、トップはさぞぎらぎらした人物だろうと思っていたが、リ・ソンジン社長はとても物静かで誠実な人物だった。なかなか話しづらい大ブームと大バッシングの両方に翻弄されたいきさつを客観的に語ってくれた。ようやく「誤解」が解けつつある同社。医師ならではの視点でこだわる「健康の実現」のため、IoT時代を追い風にチャレンジする新分野が楽しみだ。(柳)
 
※『BCN RETAIL REVIEW』2017年6月号から転載