【不定期連載・重みを増す「ネット対策」~今、起きていること】 一部の家電量販店は、オンラインショップで注文した商品を店頭で受け取る「店頭受け取りサービス」を実施している。決済まではオンラインで完結し、店頭では商品を受け取るだけのパターンと、ネット上で選んだ商品を店舗で取り置き、来店時に決済するパターンのおおむね2つに分かれる。

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「店舗受け取り」は、オムニチャネル化の一例。宅配の再配達問題を解消する策でもある

【連載第4回】メール/アプリ頼みの現状 「意識なく」使える水準には程遠く
 
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 2014年頃から注目を集めているマーケティング関連の注目キーワード「オムニチャネル」とは、店舗やイベント、インターネットなどのチャネルを問わず、あらゆる場所で顧客と接点をもち、統一した顧客情報をもとにリアル店舗、オンラインショップの両方への集客を図り、拡販を目指すという考え方や戦略を指す。

オムニチャネル化とEC事業の業績に高い相関性 対策は急務

 日本唯一のEC(電子商取引)学術研究機関である東海大学総合社会科学研究所のEコマースユニットの小嵜秀信客員准教授は、今年3月に開催した同研究所の「第1回研究報告会・講演会」で、リーディングカンパニーと呼ばれる各企業のオムニチャネル対応度を数値化し、企業業績(会社全体、Eコマース事業単体)との相関関係を導き出す日本初の研究結果をもとに、「オムニチャネル化が進んでいる企業ほど、EC事業の業績の伸び率やEC化率が高い傾向にある」と指摘した。

 この調査結果は、ネットとリアルの連携・融合を進めなければ、今後、売り上げや利益が伸び悩む可能性が高く、オムニチャネルへの取り組みが急務と示唆する。しかし、実際のところ、実現に向けたハードルは高い。メールと、ユーザーが自発的にインストールする必要があるスマートフォン向けアプリ頼みだからだ。

ネット/リアルの融合は前途多難、入り口はメール・アプリ、接客は人頼み

 アプリは、店頭での決済や商談の際に、担当者がインストールしたり、必要な登録情報を入力したり、手助けしてくれるケースもあるが、第三者に端末を渡すことに抵抗のある人も多いだろう。ポイントカードのように物理的な場所を取らないとはいえ、手持ちのスマホに、利用する店舗のポイントアプリ/メンバーアプリが多数並ぶと、目当てのアプリを探すだけでも時間がかかり、さらにポイントカード代わりのバーコード入り画面や専用のクーポン画面を会計時に提示する必要があったりと、スマートではない。
 
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ポイントカード/メンバーカードも、「ポイントカードアプリ/メンバーカードアプリ」も、探しにくさは変わらない

 「店頭受け取りサービス」を利用する場合、さらに時間がかかる。オンライン上で決済し、メール内に記載されたQRコードや番号をハンディスキャナで読み取る方式なら比較的スムーズだが、とある大型家電量販店では、メールに記載された番号を打ち込み、その結果をもとに商品を取り出し、店頭のレジで決済する方式だった。飲食店のクーポンなどでも、メールやアプリ画面のクーポン番号をもとに値引きするケースが大半だ。

 現状は、こうした人手を介した「アナログ」なやり方が一般的。店頭での待ち時間も発生し、やはりスマートとは言いがたい。少なくとも、決済はオンラインで完結していたほうがスムーズだ。こうした複雑さは、既存のシステムに新機能を追加した、切り貼りの決済システムによる事情も大きいと思われる。

GPSを活用してもっとスマートに リアル店舗での「買い体験」の進化に期待

 いくらオムニチャネルを掲げても、メールやアプリなど、ユーザー任せの手段に頼ったままでは、情報収集に積極的な層にしか浸透しない。リアル店舗の訪問者に、しつこくアプリやWebサイトをPRするより、スマホをかざすだけでクーポンを表示する読取機やオンラインで注文した商品を決済するセルフレジ、店舗独自のアプリのダウンロードを手伝う接客ロボなど、人を介さない、新たなハードやシステムの導入を進めたほうが現実的だろう。

 将来的には、スマホのGPSと連動し、店舗に入ると自動的にアプリが起動して、クーポンや特価品、購入履歴に基づいた「オススメアイテム」や買い忘れが予想される「いつも買うアイテム」などを表示し、その売り場まで案内するといった、時短につながる本格的な融合に期待したい。(BCN・嵯峨野 芙美)