【紙面連動企画】 製造・流通・販売を取り巻く環境も激変しつつある家電業界。「AI」や「IoT」など、プロダクトの進化には目を見張るものがあるが、配送や販売手法の転換は一筋縄ではいかず、業界全体で取り組むべき課題が堆積している。そこで、今回は定例の座談会とは趣向を変えて、17年度の気になるトピックをテーマに編集部員で議論を交わした。

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■テーマ1・配送スピード競争など、業界全体について

 少子高齢化で日本の人口構造が変わるなか、小売業はさまざまな変化に迫られている。都市と郊外での店舗運営やサービスの違いが明確になり、リアル店舗とネット通販の融合も活発化してきた。特に、ネット通販では宅配業者の人材不足によるサービス内容の見直しなどが社会問題にもなった。また、スマートハウスやリフォームなど、家電以外の商品やサービスを積極的に扱う多角化の動きも見逃せない。

激化する配送時間競争 消費者の行動の見直しも

 インターネット通販における配送サービス競争は、昨年度の大きな話題になった。当日お届けや1時間配達などのスピード競争は、物流現場の疲弊を招き、ついには今年度にヤマトホールディングスが物量の総量抑制に乗り出し、料金を値上げし、Amazon.co.jpの配送サービスの見直しなどにつながった。

 議論では、「ネット通販の時間競争は行き着くところまでいった」や「再配達を減らすための消費者自身の努力が必要だ」などの意見が出た。今後のサービスの軸は、「時間」から「ほしいときに受け取れる」がカギになりそうだ。例えば、時間帯指定を細かく設定するのではなく、宅配ボックスの設置など、消費者の行動も伴う。「住所を記入した最後に『自宅の前に置いておく』という選択肢もある」。宅配業者は受領印をもらう義務があるが、再配達を減らすにはこうした運用面での規制緩和も必要になるだろう。

 週に3回はネット通販で買い物をするという編集部員は、「過剰梱包」を問題視する。なかには小箱、中箱、大箱の3重に梱包して送られてくる商品もあり、段ボールを片付けるのが大変だという。最近では、段ボールに悩まされないリアル店舗での買い物を再評価しはじめている。
 
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家電量販店各社はさまざまな取り組みを始めている

 また、ネット通販とリアル店舗のすみ分けも進みそうだ。小物商品など、商品を選びながら買い物する時間がない人は、会社から帰宅する際の電車の中などの隙間時間を使ってネット通販を利用する。一方、設置が必要な大型商品や接続・設定が必要なネットワーク家電は、リアル店舗で購入するという動きだ。
 
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「楽天市場」で注文した商品を駅構内のロッカーで受け取れる「楽天BOX」

 ほかにも、郊外店の配送競争の取り組みではコジマの「くらし応援便」に見られるような、地域の家電店が行っている「御用聞き」的なサービスも増えるだろう。「見守り」という高齢化社会のキーワードにもマッチする取り組みに注目だ。

住宅・リフォームの多角化 顧客が振り向く商材の開発を

 国内家電市場の規模が縮小するなかで、スマートハウスやリフォームなどで事業を多角化する動きも進んでいる。いずれも事業の柱に育っている企業はなく長期戦が予想されそうだが、「儲からないからすぐに撤退するのではなく、むしろがんばって続けてほしい」と応援する意見も出た。
 
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活発に議論を交わす編集部メンバー

 課題は、消費者が家電量販店に期待するサービスと、量販店側が提供したいと考えるサービスのズレだ。「スマートハウスを導入しようと思って、家を買う顧客がどれほどいるのか」という疑問や、「住宅に関するいいサービスを受けたいと思った消費者が、家電量販店に足を運ぶだろうか」といった意見だ。

 「スマートハウスやIoTによるネットワーク社会の到来は、方向として間違ってないが、食器洗い乾燥機やディスポーザーが示すように、デベロッパーが新築マンションでこれらの商品の搭載率を高めていった背景がある。同じように、最初は新築市場から広がるのではないか」というデベロッパー先行型の意見も出た。顧客が家電量販店に振り向くためのフックとなり得る商材の開発が必要といえそうだ。

 最後に、インターネットの普及で消費者のほうが販売員よりも特定商材の知識が豊富という課題も浮上。この点では、多角化とは逆の動きの専門性を追求している企業に商機があるとみる。VRなど新しい技術は、総合家電量販店ではなく、専門店の店員に聞きたいというニーズは、ニッチでも十分に差異化要素になる。(BCN・細田 立圭志)