【紙面連動企画】 製造・流通・販売を取り巻く環境も激変しつつある家電業界。「AI」や「IoT」など、プロダクトの進化には目を見張るものがあるが、配送や販売手法の転換は一筋縄ではいかず、業界全体で取り組むべき課題が堆積している。そこで、今回は定例の座談会とは趣向を変えて、17年度の気になるトピックをテーマに編集部員で議論を交わした。

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■テーマ2・AI・IoTなどプロダクトについて

 大手メーカーは洗濯機などのメジャー家電にAIを搭載したり、IoT家電にしたりと、AI・IoT技術の普及促進に努めるが、消費者の理解はなかなか進まない。IoTプラットフォームの世界的な動きをみると、日本は周回遅れ。AIのディープラーニングも、浸透が捗らない状況だ。一方、ベンチャー企業は家電に限定せずあらゆるモノをAI・IoT化し、新しい市場開拓に挑戦する。先進技術を社会に馴染ませるには、根気強く新しい手を打ち続けることが必要かもしれない。

普及が進まぬAI・IoT 広がる海外との差

 自動車や産業面がけん引しながら成長する日本のAI・IoT市場だが、家電における普及は、まだめどが立たない。海外では、クラウドベースの人工知能「Alexa」を搭載する「Amazon Echo」が2016年、爆発的にヒットした。日本では17年の夏に、LINEが開発したクラウドAIプラットフォーム「Clova」が登場する予定だが、周回遅れなのは否めない。
 
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Pepperと、日本未発売のAmazon Echo

 現在、日本のIoT家電は、単体では高性能でも、肝心の「コネクティビティ」が弱く、想定する本来の性能を発揮できていないという印象を受ける。課題解決のためには、業界が一体となり、共通のプラットフォームのもと、相互連携を強める必要がある。

 AIに関していえば、「日本語は英語と比較してデータ量が圧倒的に足りない」という問題がある。ディープラーニングには、対象となる膨大なデータが欠かせないからだ。

 また、音声による家電操作に抵抗感がある、という消費者の意識に根ざす問題も深刻だ。ヘッドセットで通話する人ですら、いまだに奇異な目で見られがちだが、AIは音声操作が前提だ。なかには、ジェスチャーを採用するものもあるが世界基準の主流にはならないだろう。
 
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議論をリードする細田 立圭志編集長(左)

 もちろんメーカー側もただ手をこまねいているわけではない。その意思は、ソフトウェアではなく、ハードウェアに表れている。海外のデバイスが、目立たない無機質なデザインを採用する一方で、日本のデバイスは「Pepper」や「ロボホン」のようにキャラクター性をもたせ、親しみやすさを演出する。賛否両論あるものの、認知を拡大するための試みとしては有益な仕かけといえる。

ベンチャーや量販店にも アイデア次第でチャンスあり

 総務省の2016年版情報通信白書「世界のIoTデバイス数の推移及び予測」によれば、IoTデバイスは「2020年までに300億個以上」になると予測している。これは15年の約2倍にあたる。これほどインターネットにつながるものを増やすには、既存の家電製品だけでなく、「ふとんや鏡など、今まで思いもよらなかった製品をIoT化する」ことが考えられる。

 AIは開発環境などの観点から大企業が手掛ける状況が続きそうだが、IoTはハードルが高くはないので、ベンチャーでも開発できる。編集部では、「今後、IoT分野で既存メーカーのライバルになるのは、今の競合だけではなくベンチャーも含まれる」との見方が強い。普及を促すために数を増やすなら、小回りの利くベンチャーは適任といえる。家電量販店の中には、そういった最新のアイデアをいち早く取り入れようと、スタートアップ企業の発掘に注力する企業も現れるなど、市場拡大の兆しが見え始めている。

 他方で、「IoTは契約制のサービスが紐付く。家電量販店は契約型は今まであまりなかったので、ノウハウが不足しているのではないか」という、懸念の声もあった。消費者側としても、「IoTの契約が増えていくと、自分がどの企業と、どのような契約を結んでいたかで混乱が生じてしまうおそれ」がある。

 この問題に対しては「IoTサービスをまとめて販売・契約できるように、量販店側がパッケージ化すれば、管理しやすいのではないか」という意見が出た。「量販店のWebサイトで登録している会員アカウントで一括管理できれば、消費者はサービスを管理しやすく、量販店側は安定した収入を得られる」と、議論が沸いた。(BCN・南雲 亮平)