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音が格段に良くなる小さな実力派、ヘッドフォンアンプ「D Zero MK2」

特集

2015/03/24 13:47

 最近、町を歩いていても高級ヘッドフォンを使っている人の姿が目立つ。スマートフォンタブレット、ポータブルオーディオでも「イイ音」を楽しみたいという音楽ファンの欲求がうかがえるが、スマートフォンなどの場合、コストやサイズの制約でDA(デジタル>アナログ)変換部やヘッドフォンアンプ部に、オーディオ機器で採用されているような高性能なパーツを採用できないことが多い。そのため「音の良さ」という点では、どうしても「それなりのレベル」にとどまってしまいがちだ。ということは、せっかく高価なヘッドフォンを使っても、ヘッドフォンの本来持っているサウンドのポテンシャルを最大限生かしているとは言い難い。これを解決するのが、ヘッドフォンアンプだ。

カードサイズで95gと軽量ながら、贅沢な回路設計



 ヘッドフォンの売れ行きがアップするにつれて、ポータブル型のヘッドフォンアンプも徐々に注目度が高まり、店頭でも製品が増えてきている。しかし実物を見る限り、おしなべて弁当箱のようなサイズの製品ばかりで、ポータブルと銘打ってはいても持ち運ぶにはちょっとデカすぎる。ここに紹介するiBasso AudioのD Zero MKIIは、スマホとさほど変わらないカードサイズの製品で、持ち歩きのストレスを感じさせない大きさの製品だ。筐体はマットブラック仕上げのアルミ製で、高級感ある見た目からもっとずっしりした重量感を予想していたが、実際に持ってみるとびっくりするほど軽い。重量は95gでスマホよりも軽いため、一緒に胸ポケットに入れていても重さは感じないだろう。

カードサイズで95gと小型軽量の「D Zero MK2」は、どこへでも持って行ける

 iBasso Audioはかなり早い段階からこうしたDAC内蔵ヘッドフォンアンプを手がけていたブランドで、今回の製品にも長きにわたる製品開発のノウハウが生きており、パーツや回路設計もかなり贅沢な仕様になっている。まずDAC(デジタル・アナログ・コンバータ)にはウォルフソンのWM8740を使用。WM8740はハイエンドオーディオ機器などにも使われているクオリティの高いDACで、コスト的にもかなり高価なパーツなのだが、D Zero MK2ではこれを贅沢にも左右のチャンネル用に独立して2個搭載しており、変換処理に余裕を持たせた設計になっている。

左から、ヘッドホンジャック、ライン入力ジャック、電源スイッチ、ボリューム

 左右を独立させたことで、各チャンネルの音の分離にも一役買っているようだ。またアナログ部分の肝であるヘッドフォンアンプ部も、通常のスマホのようにワンチップのICでお手軽に済ますことなく、ちゃんとオペアンプとバッファを使った回路設計になっている。パワーにも余裕があり前モデルのD zero-SEより出力が30%アップしている。大音量出力時だけでなく、小さな音量のときでも歪みの少ないクリアなサウンドが楽しめるように設計されているわけだ。

左からUSBデジタル入力端子、充電モードスイッチ、ゲイン切り替えスイッチ

ドライバレスで簡単接続。ハイレゾにも対応し、MP3でも実力発揮



 DACは24ビット/96kHzのハイレゾ音源にも対応しており、しかも特別なアプリやドライバをインストールしなくても接続するだけで楽しめる。ハイレゾ音源の真価を100%引き出すことができるのだ。さらに、「イイ音」を楽しめるのはハイレゾ音源に限らない。スマートフォンタブレットを使って、普通のMP3音源で通勤途中に音楽を聴いたり、家で録画したテレビ番組を楽しんだりするような場面でも、D Zero MK2を使えば臨場感が格段にアップする。たとえば今まで「ダマ」になって固まりのように聴こえていた楽器音が、それぞれちゃんと分離して存在感を放つようになる感じといえばわかりやすいだろうか。

 音の分離が良くなることで定位感もアップし、ステレオの広がりも増す。さらに低域と高域のレンジも広がっているので、今まで埋もれていた微細な音も感じ取れるようになる。ピアノやアコースティックギターなどは明らかにツヤを増して、細かな演奏ニュアンスまで伝わってくるようだ。2万円を切る価格でここまでサウンドのクオリティがアップするのはかなり魅力的で、高音質化にはかなり効き目のある製品だといえる。一度この「イイ音」を体験してしまうと手放せなくなること請け合いだ。

ドライバいらずでつなぐだけ。Android端末との接続例

 つなぐだけで確実に音質アップするというお手軽さに加え、軽量小型でスマートなデザインという痒いところに手が届いた設計であるため、スマートフォンやタブレット、ポータブルオーディオユーザーにはぜひ注目してほしいところだ。AndroidとはOTGケーブル、iPhone/iPadとはLightning-USBカメラアダプタを介して接続でき、フル充電でDA変換使用時は10時間、ヘッドフォンアンプのみなら120時間使用できる。

 持ち歩いて使うだけでなく、自宅オーディオと組み合わせて、PCからのデジタルオーディオ出力を通す据え置きDACとして使うのもいいだろう。充電池駆動ゆえAC電源よりも音質的に安定しているし、筐体の小ささが回路構成をコンパクトにしており、それだけ音質劣化を防いでいる。デジタル音源の真価を最大限生かすためのツールとして、導入を検討する価値がある。(ITライター・巽英俊)

本体と付属のケーブル。Android端末やLineで接続するならすぐに利用可能。iOS機器と接続するには、Apple製Lightning-USBカメラアダプタまたはiPad Camera Connection Kitを使えば可能