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プリントNo.1カメラを目指す――富士フイルムの09年デジカメ戦略を聞く

インタビュー

2009/03/16 15:21

 富士フイルムは2月、新型CCDを採用したコンパクトデジタルカメラ「FinePix(ファインピックス) F200EXR」を発売した。国内のコンパクトデジタルカメラ市場は台数・金額の前年割れと価下落という厳しい状況が続いている。富士フイルムは今年、国内デジタルカメラ事業をどう展開していくのか。小島正彦・コンシューマー営業本部ファインピックスグループ部長に市場の見通しや製品戦略について聞いた。

小島正彦・富士フイルム コンシューマー営業本部ファインピックスグループ部長

世界的な景気悪化で台数は減少、ユーザー指向で販売価格アップを図る



 ――09年の国内コンパクトデジタルカメラ市場の見通しは。

 「経済環境が世界的・急速に悪化した影響で、販売台数では前年比で10-15%減になるだろう。販売金額も去年は価格下落が進んで大幅に減少した。今年も厳しい状況が予想される。コンパクトデジカメは値崩れが激しく、製品を発売した1か月後には価格が下がる。量販店がネット販売の価格に対抗することも1つの要因になっている。ある調査によると来店する女性の70%がネット販売の値段を引き合いに出し価格交渉をするという。こういう状況がメーカー、流通を圧迫している」

 「短期間で急速に単価が下落することは商戦にも影響を及ぼしている。例えば去年の年末商戦。例年なら12月の第2週目が販売の山場になるが、08年は第4週目にピークが来た。『待てば待つほど安くなる』と消費者が読んで、安くなるギリギリまで待つ購入の仕方が一般的になっているからだ。こうなると、メーカーとしては商戦期がボケてしまい、どこで販売に力を入れれば良いかわからなくなってしまう」

 「我々としては、今年は単価アップを図っていきたい。今は、これまでの価格一辺倒から、売り方を見直すいい時期だと思っている。具体的にはユーザーや用途に合った製品をシリーズごとに揃え、それぞれの機能にあった価格を設定することで、メーカー、流通ともに利益が確保できる価格をある程度は維持したいと思っている」

 ――シリーズ展開を含めた09年の製品戦略は。

 「『Fシリーズ』は最上位モデルで、画質とプリントにこだわる人、『Zシリーズ』は機能とカラーやデザインを重視した女性、『Aシリーズ』『Jシリーズ』は初心者や価格を重視する人、高倍率ズームレンズを搭載した『Sシリーズ』は旅行などでの利用を狙ったカメラということでシリーズを分けて展開していく。現在は『Zシリーズ』の台数が一番多いが、今後は『Fシリーズ』の販売を伸ばし当社の存在感を高めていきたい。09年は市場で15%の台数シェアの獲得を目指す。ただ、いたずらにシェアだけを追うのではなく、1台あたりの利益も高めていくつもりだ」

富士フイルムのデジタルカメラのおもなシリーズ。
上段の左からZシリーズの「Z250fd」「Z33WP」、Sシリーズの「S100FS」。
下段は左からJシリーズの「J15fd」、Aシリーズの「A100」

どんな場面でも“キレイ”に撮れるカメラで買い替え・買い増し需要を喚起



 富士フイルムが「Fシリーズ」のフラッグシップ機として投入した「F200EXR」は、有効1200万画素の新型CDD「スーパーCCD ハニカム EXR」を搭載した。新型CDDは、撮影場面に応じて、「高感度・低ノイズ優先」「ダイナミックレンジ優先」「高解像度優先」に撮像方式を切り替られる。そのため、暗い室内や明暗差が大きな屋外、植物などの接写といった精細な描写が求められる撮影でも高画質の写真を撮ることができるのが特徴だ。

Fシリーズの最上位モデル「F200 EXR」。3つの撮像方式を切り替える
新型CDD「スーパーCCD ハニカム EXR」を搭載。画素数は有効1200万画素

 「我々のデータではコンパクトデジカメ購入の70%以上が買い替え・買い増し需要。そうした人たちに対し、どれだけその気にさせる機能の製品を提供できるかがポイントだ。その点で『F200EXR』は、消費者の買う気を起こすカメラだと思っている」

 「コンパクトデジカメは手ブレ補正、高感度撮影、顔認識、シーン認識と失敗しない写真を撮るために機能が進化してきた。しかし、全てのシーンで本当にキレイな写真が撮れるか、という点では十分ではなかったと思う。『F200EXR』は狙ったシーンでキレイな写真を撮ることができる100%理想的なカメラだと自負している。実勢価格は4万2800円だが、この機能なら適正な価格になっていると思う」

 ――店頭ではどのような販売施策を行っていくのか。

 「例えば『F200』は、店頭の販売員がその魅力を短い時間で伝えるのは難しい。そこで、『夜景』『室内』の撮影機能では、『F200』が強いということを撮影例のPOP(販促用広告表示物)や実際のプリントで見せることで、これまでのカメラとの違いをアピールする。他のシリーズでも同様の店頭販促を行っていく。当社はプリントサービスを展開していることもあり、他社よりも豊富なプリントサンプルをカメラごとに用意している。これは量販店からも好評だ。また、写真集サービス『フォトブック』のサンプルも置いて、カメラの販売とプリントサービスを連動した売り場作りも展開していく」

「F200 EXR」の店頭ディスプレイ(上)と、「夜景」「室内」の撮影例のPOP(下)

目指すはプリントNo.1デジカメ、年内には3Dカメラも投入



 ――富士フイルムのデジカメが目指すのは。

 「手ブレがなく、色や明るさも適正な『真の写真画質』と我々が呼ぶ写真がプリントができるNo.1のデジカメを作ることだ。フィルムやプリントも手がける当社は、撮った写真をキレイに残すことにも使命があると思っている。そのために、撮像素子のクオリティを追求していく。今回の『スーパーCCD ハニカム EXR』は、当社のデジカメにとって真の写真画質を実現するための大きな柱になるセンサーだ。『Fシリーズ』だけではなく、他のシリーズへの横展開も考えている。このCCDで『画質革新』をキーワードに展開していきたい」

 「画質とは別の新しい価値の提供ということで、『3Dデジタルカメラ』の年内投入も準備している。これは専用メガネなしで立体画像を見ることができる世界初のデジカメ。カメラ単体だけではなく、対応のデジタルフォトフレーム、プリントサービスも販売・提供していく予定だ。今年の米国のCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)ではパナソニックソニーが3Dの映像システムを出展し話題になるなど、注目が集まっている。個人的には今年『3D』が家電やデジカメ市場でキーワードになってくると思っている」

年内に投入を予定している3D(立体)のデジタルカメラ(左)と、
対応のデジタルフォトフレーム、プリントサービスのイメージ

 ――ビジネスとしては厳しい状況が続いている。

 「写真を撮るのは人の本能。だからカメラビジネスは永遠だと思っている。富士フイルムとしてはカメラビジネスを永遠にやっていく考えだ。我々はデジカメを世界展開しているが、やはり日本市場で存在感がないと事業としてダメだと感じでいる。だから市場環境は厳しいが歯を食いしばってやっていくつもりだ」(BCN・米山淳)