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ホントに顔が小さくなるの? 小顔プリント開発者にその真相を直撃

特集

2007/12/21 18:45

 セイコーエプソン(エプソン)は10月4日、インクジェットプリンタ「カラリオ」シリーズ6機種を皮切りに07年モデルの販売を開始した。「PM-T960」を始めとする今回のラインアップでは、新たに「ナチュラルフェイステクノロジー(小顔+美白補正機能)」を搭載したのが特徴。小顔で、そして美白にプリントしてくれるという。特に女性が大喜びしそうなこの機能、一体どんなものなのか? 本当に顔は小さくなるのか? 開発に携わったセイコーエプソンコンシューマ機器事業部コンシューマ機器企画推進部の胡桃澤孝課長、岡村敬一氏、塩原恵子氏に聴いた。

●私の顔はこんなに大きくない

――どういった経緯で「ナチュラルフェイステクノロジー」は開発されたのですか

 「エプソンは、以前から写真写りの向上に力を入れて開発を進めています。05年に発表した画像処理技術『オートフォトファイン!EX』では、デジタルカメラよりも先に顔認識技術を導入するなど、人物撮影に対しての画像処理技術には自信があります(胡桃澤氏)」

 「画像処理の開発過程で、ある女性社員が『私の顔はこんなに大きくない』と言い出しました。普段から開発に携わり、自分の顔写真を眺める機会が多い彼女は、鏡で見る自分と写真になった自分の顔に、多少の違和感を抱いているようでした。そこで社内などでヒアリングを行うと、女性を中心に同じような疑問を抱いていたことがわかったのです。これが開発の発端となり、まずは『写真は顔が大きく写るのか』を実証することから始まりました(塩原氏)」

 「そもそも、カメラと人間の目は構造的に違います。人間の目は2つありますが(複眼)、カメラのレンズは1つしかありません(単眼)。人間の目は2つあることで、モノを立体的に捉えることができます。単眼のカメラで写真を撮ると、1点からモノを捉えるので、どうしても2つの視点から見るよりも平面的に映ってしまいます。単眼と複眼では、どのぐらい見え方が違うのかを計算した結果、単眼では複眼よりも約1.4%太く見えるということがわかりました。そのほか、同じ大きさの写真と模型を見比べる知覚調査では、写真は実物よりも約0.5?1.5%太く見えるという結果も出ました。調査の結果『写真は実物よりも大きく写る』という仮説が成り立ち、目で見たままをプリントするにはどうしたらいいのか、というところから開発がスタートしました(岡村氏)」

――開発にあたり難しかった点はどういうところですか

 「技術的な部分よりも、カメラで写した被写体を補正するべきかどうかという点で、社内で多くの議論を交わしました。写真の本質を変えていいのか、全てを自動で行うのかなど、難しい議論が続きました。この議論の中で私たちは、『本来の自分の顔を再現しよう』という結論に至ったのです。ですから、顔を無理に小顔や美白にしたりするのではなく、あくまでもナチュラル(自然)に補正するといういうことを意識して作りました(胡桃澤氏)」

●女性を意識して開発しました

――なぜ、顔だけに着目したのですか

 「カメラで写真を撮る場合、被写体の多くが人物であると言われています。また、1枚の写真に占める顔の割合も高いので、まずは顔だけを補正することに決めました。自分の顔は普段からよく眺めていて、微妙な違いにも気付きやすい部分です。それに、今回の機能は女性をかなり意識して作りました。女性の願望である小顔と美白に絞って開発を進めたため、顔のパーツや腕などほかの部分は補正されません。実は、顔だけを小さくするので、目や口が大きく見える相乗効果も得られます(胡桃澤氏)」

___page___――どのくらい小顔になるのですか

 「小顔補正は、顔のフェイスライン(輪郭)を約0.5?1.5%小さくすることができます。補正レベルは付属ソフトを使ったPC操作で5段階、プリンタでの操作の場合は、強・弱の2段階から選ぶことができます。完成した写真を見ただけでは気付かない程度の補正で、オリジナルと見比べてやっとその違いが判断できます。そのぐらい自然に違和感なく補正することが可能です(岡村氏)」

――美白補正について

 「美白補正は、プロのカメラマンが使用するレフ板を使って撮影したように、肌をキレイに見せるための補正機能です。ですから、肌色を変えることはできません。小顔機能と同様に、補正レベルの調整ができます。小顔・美白機能は、顔が検出できれば、2?3人の顔を同時に補正することも可能です。補正効果は、液晶画面や補正レベル別に効果が一覧できるフェイスシートで確認できます(塩原氏)」

●世界に1つしかない自分の顔を満足させる

――プリンタで補正するメリットは

 「最近では、撮った写真をプリントせずにPCに保存している方が多いと聞いています。そのため、プリントする写真は撮った中でも特に気に入っている1枚ではないでしょうか。自分にとって特別な1枚をキレイにプリントしてあげるのが私たちの役目です。今回の機能は、補正をプリンタが自動で実行するのではなく、自分で操作して選んでもらうようにしました。そうすることで、1枚ずつ自分の記憶に近い写真をプリントすることができます。しかも、プリンタに補正機能がついていることで、どんなカメラで撮った写真でも補正ができるわけです(岡村氏)」

――具体的にどのような活用法があるのでしょうか

 「エプソンでは、女性に向けて『プリントでキレイになる』方法を紹介しています。例えば、写真で自分を撮ることで、自分が普段どう見られているかを客観視することができます。それをプリントして自分を観察することで、普段は気が付かない自分の新しい魅力に気付くというように、撮ってプリントして、キレイになることを勧めています(塩原氏)」

――実際のお客様の反応はどうですか

 「女性の願望を叶えた機能ですから、女性を中心に大変支持されています。いままで自分でプリントする機会がなかった方にも、新たにプリンタを購入するキッカケにもなっているようです。この機能は日本のみならず、海外で発売しているプリンタにも付属ソフトで提供しています。韓国やタイなどアジアを中心に高い支持を得ています。小顔や美白といった願望は、世界共通のようです(塩原氏)」

――次に開発したい機能は

 「今回の機能は社内より声が上がりましたが、お客様も同様に抱いていた潜在的な要望をうまく捉えた機能だと思っています。これからも、特に人物にフォーカスした機能を開発し、自分に自信を与える写真プリントを提供していきたいと思っています(胡桃澤氏)」(BCN 津江昭宏)