BCNランキングの携帯電話部門で、販売台数シェアをジリジリと上げNo.1の座がみえてきたモデルがある。auの「W53CA」、通称「EXILIMケータイ」だ。発売は8月2日。8月のBCNランキングの機種別販売台数シェアでは12位だったが、9月には7位に浮上。直近の10月第3週では2位につけており、トップシェアも射程圏内に入った。そこで、ヒットのワケを探るため開発担当者を直撃した。

●「高画質」と「コンパクト」を両立させる挑戦

 「EXILIMケータイ」は、その名称からわかるとおり、デジカメ機能に徹底的にこだわった携帯電話だ。カシオ計算機の薄型デジカメブランド「EXILIM」のブランド名を冠した本格的なデジカメケータイで、有効画素数は約515万画素。現在販売されているケータイのなかで最高レベルで、単機能のデジカメ並みの写真が撮れるのが特徴。直近10月第3週(10月15-21日)の携帯電話機種別販売台数シェアでは、トップはシェア4.9%でシャープの「W52SH」が獲得。それを追いかけるのがシェア4.3%で2位につけている「EXILIMケータイ」の「W53CA」だ。



 画像がデジカメ並みとなれば、同社のデジカメの売り上げが落ちて「メーカーにとってはマイナスなのでは……」と単純に考えてしまう。しかしカシオでは「ターゲットユーザーが違うから販売に悪影響が出るとは思っていない。むしろ『EXILIM』のブランドがさらに広まるなどの相乗効果が期待できる」(広報)と判断。戦略的にブランドを前面に押し出すことにした。

 しかし「EXILIM」は、同社のデジカメの看板ブランド。「完璧なモノでなければ商品化できないという気持ちが企画・開発者にはあった」と、開発元のカシオ日立モバイルコミュニケーションズの本間敦・事業統括グループ企画チームリーダーは話す。そのプレッシャーのなかで、企画元のカシオと製造元のカシオ日立モバイルコミュニケーションズがこだわった部分が、「『高画質』と『コンパクト』そして『スタイリッシュ』の3要素をすべて兼ね備える」(本間氏)。つまり、「デジカメ並みのキレイな写真が撮れる小さくてオシャレな携帯電話」をつくることだった。



●カメラ部品の小型化を徹底追求

 この3つを携帯電話で実現するには、実はかなりの知恵と技術が要求される。とくに、「高画質」と「コンパクト」は水と油のような関係で、画素数を高めれば、それだけカメラのモジュール(部品)が大きくなるのが一般的。結果的に本体サイズも大きく重いモデルになってしまう。これが「EXILMケータイ」を生み出すための最大の障壁だった。

 カシオがこれまで手がけた歴代機種の内部資料写真を見ると、カメラの画素数が高まると、それに比例してカメラモジュールも大きくなる様子がわかる。そのなかで、「EXILIMケータイ」のカメラ部品は劇的なコンパクト化に成功している。そこで使われた技術がどんなものだったかは、企業秘密として明かしてくれなかったが、「『EXILIMケータイ』の企画・開発期間は1年ほどだが、この小ささはこれまで数年間にわたって開発してきたからこそ実現できた。他社にはなかなか真似できない」と本間氏は自信を語った。



●「EXILIMの名を汚さない」デジカメ並みの性能をめざし

 高画質化とカメラ部品の小型化を図りながら、デジタルカメラの基本性能と使いやすさも同時に徹底追求していた。レンズは、撮影範囲が広い広角28mmで最大16倍まで被写体に寄れるモデルを採用。上下左右の手ぶれに対応する「6軸手ぶれ補正」に、9点で焦点を合わせる「9ポイントAF」を備え、撮影の失敗を防ぐために1度に露出値を自動変更した3枚の写真を撮影できる「オートブラケット撮影」機能も搭載し、デジカメ並みの撮影機能を内蔵した。

 撮影した写真を確認しやすいよう、メインディスプレイには、480×800ドットの2.8インチワイドVGA液晶を採用。使いやすさを考え、シャッターボタンと記録メディアスロットの位置にもだわった。

 「『EXILIM』はデジカメのブランド。ケータイであっても『EXILIM』の名前を汚さないよう、写真の撮るための基本性能と使いやすさは、デジカメと同等レベルが欲しかった」と本間氏は話す。高画質とカメラモジュールの小型化に加え、カメラとしての基本機能も追及して世に送り出した。



●デザインも妥協せず「グッドデザイン賞」受賞

 さらにデザインにもこだわった。最も重視したのは本体の裏面だ。裏面には「EXILIM」を刻印し、大型のレンズを敢えて隠さず配置。裏面だけを見れば、まるでコンパクトデジカメを思わせるデザインを採用した。「お店で並んでいる時は、『WIN』の文字が表示されている表面が表になっていることが多いが、当社の思いとして裏面を表として展示して欲しい。デジカメケータイをアピールする絶好のデザインだから」とカシオ広報は語る。

 この作戦を貫いた結果、商品デザイン部門で「2007年度グッドデザイン賞」を受賞。「高性能デジカメと携帯電話の優れたインターフェイスをマッチさせた」と評価された。「高画質」と「コンパクト」そして「スタイリッシュ」――。人気の裏には、携帯電話で実現が難しいこの3要素の兼備に挑戦し、こだわり続けた製品企画と開発者の執念があった。(BCN・木村剛士)

*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など23社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。


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