ソニーは9月29日、エンターテインメントプレーヤー「Rolly(ローリー)」を発売した。一風変わった卵型で、「音楽を聴く」ことに加え、これまでにない「動きを楽しむ」という機能を持ったオーディオプレーヤーだ。ソニーがこれまで発売してきたオーディオ製品とはかなり毛色が異なる製品でもあり注目を集めている。「Rolly」とは「どんなモノで、どんなユーザーに使って欲しいのか」ソニーの開発担当とマーケティング担当に話を聞いた。



●AIBOから生まれたモーションで1人1人が自己表現、「振り付け」の公開も

 携帯オーディオのウォークマンからHDDコンポのネットジューク、Hi‐Fiオーディオシステム「system501」などのピュアオーディオまで、幅広いオーディオ製品を擁するソニー。そんな同社のラインアップに新たに加わったのが、音楽を聴いて楽しむだけでなく、「動き(モーション)」も楽しめる謎のプレーヤー「Rolly」だ。

 本体は幅104×高さ65×奥行き65mmのコンパクトな手のひらサイズで卵型。音楽に合わせてアームやショルダー、ホイールと呼ばれる本体のパーツが動き、サイドランプも光る。内蔵する6個のモーターで可動部を制御し、再生する音楽にあわせてまるで踊るような動作をするのが特徴。どうしてこんな製品を世に送り出したのか? 開発の経緯をオーディオ事業本部 新規ビジネス商品部2課の大口伸彦統轄課長に聞いた。

 「オーディオという世界に、新しい技術を使うと何かもっと面白い世界ができるのではないか……」そう考えて開発に着手。「動き」と「音楽」、この2つの機能が結びついたのは、大口統轄課長が犬型ロボット「AIBO」の開発メンバーだったという経歴が大きく関係している。「ロボットの技術を応用した製品を構想していて、音楽に『動き』を取り入れることで新しいオーディオの可能性を感じた」と着想のきっかけを語る。

 アームの開閉や高速回転・静止など複雑でリズミカルな動きが楽しめる「Rolly」の動き(モーション)には3つのモードがある。初心者向けに用意されているのは「セルフモーション機能」と「おまかせオートモーション機能」の2つのモード。登録した音楽にあわせて「Rolly」自身が自動でモーションを生成して動き始める「セルフモーション機能」と、付属ソフトの「Motion Editor」でボタン1つで簡単にモーションを生成し、そのモーションを自分の好みに合わせてカスタマイズできる「おまかせオートモーション機能」だ。



 「Rolly」のモーションをフルに楽しめるのは残りの1つ、「カスタムモーション機能」。「Motion Editor」を使って、自由なモーションを最初から自分で作成できる。大口統轄課長は「音楽は聴く人によって感じ方が違う。その感じ方の違いを『モーション』にすることでユーザー1人1人の独自の表現が可能になる」と語る。ホイールやアームなどの可動部とサイドランプを細かく設定することが可能で、自分だけの「振り付け」が楽しめるわけだ。

 ユーザーが作成したモーションデータが公開でき、自由にダウンロードして使用できるサイト「モーションパーク」も開設。「同じ音楽でもユーザー1人1人の独自のモーションが公開されることで『モーションパーク』がブログやSNSと同じような自己発信・表現の場になって欲しい」と大口統轄課長は語った。

●小型化したい、けれど音質もモーションも妥協できない

 製品化にいたるまでに苦労したのは、機能を減らしたり、性能を損なわずにいかにコンパクトな形にするか。「オーディオプレーヤーであるだけに音質は妥協できないし、モーションという魅力を損なうことになるのでモーターを減らすという考え方もできなかった」(大口統轄課長)と振り返る。

 搭載するスピーカーの最大出力は1.2W+1.2W。コンパクトさに重点を置く以上、スピーカー自体の容積は大きくできない。そのため、どうしても低音が弱くなってしまう。しかし、「本体が卵型でスピーカーが接地面から離れていることで、下方向に集中する低音を接地面に音を反射させて強化する」ことで低音を補った。

 また、本体の両端に外向きに「180度水平対向スピーカー」を取り付けることで音の指向性を緩和。音に広がりを持たせることで、聞き手がどこにいても「本体の大きさからは想像できない高音質」を実現した。

 「卵型」にしたのは、「4足のペット型ロボットという形で動きにも制約があったAIBOとは違う(オーディオプレーヤーという)カテゴリの製品だからこそ、自由な動きが表現できて、シンプルで親しみやすい形にしたかったから」。女性の手でも持ちやすく、気軽に持ち運びができる形であることも重要だった。

 本体には最大685曲が登録できる容量1GBのフラッシュメモリを内蔵。また無線通信規格ブルートゥースにも対応し、PCや携帯電話の音楽を飛ばして再生することもできる。「『Rolly』として必要な機能を優先し、いろいろな機能を詰め込むより最初はできるだけわかりやすい機能に集約した。メモリも本当に好きな曲だけを入れてほしいから、1GBにした」という。



 「ボタンは再生・停止を行うプレイボタンたった1つで、音量調整や選曲などの操作はホイールを回して操作するというユニークなUI(ユーザーインターフェイス:操作性)」が特徴。液晶画面やリモコンも搭載しない。非常にシンプルな操作方法で、「曲の『探しやすさ』の追求というよりもラジオのチューニングのように回して探すというスタイルを楽しんでほしい」と利用スタイルを提案する。

 「Rolly」の今後について大口統轄課長は「まったく新しい尖った(音楽に動きを組み合わせた)製品だけに賛否両論があると思う。真っ先に買ってくれたユーザーからの意見をフィードバックして次の開発につなげていきたい」と語った。

●新しいもの好きな人を足がかりにファミリー層へ、家族で音楽を聴いてほしい

 実は「Rolly」にはイヤホン端子がない。そのため、通常の携帯オーディオのようにイヤホンをつないで音楽を聴くことはできない。すべてはスピーカーで楽しむことになる。一方、コンパクトで持ち運びもできるという携帯オーディオにも似た特性を持ち、「モーション」という新しい機能が加わったオーディオ製品だ。確かにこれまでにない製品だが、想定するユーザー層はどんな人たちなのか? ソニーマーケティング パーソナルAVマーケティング部 サウンドエンターテインメントグループの野田篤マーケティングマネージャーに聞いた。

 「まったく新しいものだけに売れてみないと分からない」部分はあるが、まず最初にターゲットにするのは、「モノにこだわりがある20?30代の男性でユニークで新しいもの好きな人」。さらに「モーションを自作することに魅力を感じる人」も火付け役になるのではと予測する。

 想定する利用シーンについて野田マーケティングマネージャーは、「合コンですね。部屋の隅のBGM用ではなく、真ん中に置いて動きと音楽が楽しめるスピーカーとして使ってほしい」と笑いながら話す。しかし「基本にあるのは1人ではなくみんなで聴く」ということ。普段、イヤホンをして1人で音楽を聴いている人が「スピーカーを搭載する『Rolly』で家族や友人と一緒に音楽をみんなで聞いて欲しい」と話した。

 また、「Rolly」の優れた点として、「家の中のポータビリティと操作性」を挙げる。「家の中でもラジカセのように簡単に持ち運びができ、子供部屋やキッチンに簡単に持ち運んで音楽が楽しめる。また操作も直感的で覚えやすく、子供から女性まで使いやすい」ことで、ファミリー層もターゲットにしていく。

 価格はオープンだが、想定価格は4万円前後とやや高め。理由としては「『モーション』という新しい機能を持つ製品であるということが一番大きいが、スピーカー2個、モーター6個、センサー7個をコンパクトに収めたことで、モノとしての価値が4万円前後あると思う」からだという。

 新しい製品であるだけに販売では課題が山積。野田マーケティングマネージャーは、「モーションやポータビリティは実際に見てもらわないと伝わりにくい。音質にしても同じ。店頭やショールーム、イベントなどで実機に触ってもらう機会を増やしていきたい」としている。また量販店の店頭では、PCと一緒に展示するなど、モーションの作成や音楽の転送方法が分かりやすいような展示の仕方をするように提案していく方針だ。

 インタビューの合間、実際にモーションする「Rolly」を見せてもらったが、素早く回転するモーションがコミカルで非常に面白かった。それにモーターを6個も内蔵しているのに、意外にもモーターの駆動音はほとんどせず、高音質が実感できた。

 先だって開催された最先端IT総合展「CEATEC JAPAN 2007」では、ソニーブースには「Rolly」専用コーナーも設けられイベントも大盛況。まだ発売から間もない製品だが、「動き」を加えた新しいオーディオがどこまで浸透していくのか……。同社のチャレンジを見守りたい。(BCN・岡本浩一)




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