<strong>――ソースネクスト・松田憲幸社長インタビュー</strong><br />
 ソースネクストがコモディティ戦略を打ち出してから3年半が経過した。「Qualityイチキュッパ」シリーズは累計1300万本を出荷。すでに、本数ベースでは、ビジネスソフト、ゲームソフトともに、ナンバーワンシェアを獲得しており、今後、金額ベースでもトップシェアを目指す考えだ。一方で同社は製品のWindows Vista対応にいち早く乗り出した。ユーザーに安心感を提供するとともに、Vista発売前の買い控えを避ける狙

――ソースネクスト・松田憲幸社長インタビュー

 ソースネクストがコモディティ戦略を打ち出してから3年半が経過した。「Qualityイチキュッパ」シリーズは累計1300万本を出荷。すでに、本数ベースでは、ビジネスソフト、ゲームソフトともに、ナンバーワンシェアを獲得しており、今後、金額ベースでもトップシェアを目指す考えだ。一方で同社は製品のWindows Vista対応にいち早く乗り出した。ユーザーに安心感を提供するとともに、Vista発売前の買い控えを避ける狙いもあるという。ソースネクストの松田憲幸社長に、同社が打ち出すコモディティ戦略への取り組みを中心に話を聞いた。

●「Windows 95」登場時の失敗を糧に、いち早く打ち出したVista対応

――Qualityイチキュッパシリーズを、積極的にWindows Vistaへ対応することを明らかにしましたね。この狙いはなんですか。

松田 年度内に約100タイトルを、07年内には500タイトルをWindows Vistaに対応させる予定です。主力タイトルから優先的にVista対応を図っていきますから、年度内の100タイトルだけでも、出荷金額ベースで8割程度がVista対応になるといえます。また、07年には、Qualityイチキュッパシリーズ全体のラインアップが、現在の500タイトルから、700-800タイトル程度に拡大する予定ですから、その時点では品揃えの7割程度がVista対応ということになります。これらの製品は、「Works with Windows Vista」、「Certified or Windows Vista」のマイクロソフト認定ロゴの取得にも積極的に乗り出します。また、ユーザーにもわかりやすいように、Vista対応の文字をパッケージに表記するようにします。

 ソースネクストがいち早く、Vista対応を宣言したことには、明確な理由があります。当社の調査によると、Vistaを使ってみたいと回答したユーザーは、65.0%にのぼる。そして、それらのユーザーが不安に思っているのは、いま使っている周辺機器やソフトがそのまま使用できるのかということなんです。ソフトの使用に関して不安感を持っている人は、61.3%。Vista対応をいち早く宣言することで、こうしたユーザーの不安を払拭することができる。また、Vistaが出るまでソフトの購入を待とうという買い控えを回避することもできる。かつて、Windows95が登場した際に、対応を唱わなかったことで販売が落ち込んだという痛い経験がある。ですから、新OSが登場する際には、いち早く新OSへの対応を打ち出してきた。WindowsXPの時も、半年前から新OSへの対応を打ち出していました。

●「あっと驚く」ような、Vistaならではのソフトもリリースしたい

――Vista対応に関しては、どんな体制で取り組んでいますか。

松田 今年7月から10人体制で専任のチーム編成し、検証を始めています。Vistaの特性から、いくつかの制限事項があり、それをユーザーが混乱しない形で操作できるように改良を進めています。また、具体的な段階ではないですが、マイクロソフトと共同で、Vistaおよび対応アプリケーションを市場に普及させていくような仕掛けもやっていきたい。販売店の店頭においては、ハード売り場では、少しずつVistaという言葉が出てきているが、ソフト売り場ではVistaという言葉は一切使われていない。Vistaは、PC市場にとって極めてインパクトのある商品ですから、早い段階からこれを盛り上げていきたい。私は、Windows Vistaを徹底的に応援していきたいと思っているんですよ。

 プラットフォームが変わるタイミングというのは、大きなビジネスチャンスがありますし、その際には、アプリケーションソフトが大変重視される。当社では、既存ソフトをVista対応とするだけでなく、Vistaの機能を活用して、3Dインターフェイスを実現した「ソースネクストランチャー」を新たに開発しました。これまでは、複数の当社製ソフトを利用していると、フォルダから検索しなくてはならなかったが、「文字だけではどれがどのソフトかわからない」というお叱りも受けていた。これをパッケージのイメージから、視覚的に検索、起動できるようになる。こうした、Vistaならではの機能を搭載した新製品も投入していく考えで、来年中には、「これぞ、Vista対応のソフトだ」といえる、あっと驚くようなものを、複数タイトル出していきたいですね。


●本数ベースでのトップシェアは固めた、次は金額ベース

―― 一方で、2003年2月からスタートしたコモディティ戦略が、3年半を経過しました。発表によると、累計1300万本を出荷し、書店、コンビニなど幅広い販売ルートでの実績も出ている。外から見ていると、計画通りの進捗状況だといえますね。

松田 国内のPC用ビジネスソフト市場全体におけるメーカー別シェアでは、販売本数ベースでは3年連続で1位。販売金額ベースでも、05年には4位だったものが、9月の第2週のデータでは、2位となっている。ゲームソフトに販売本数に関しても、昨年の4位から、今年は1?8月の実績でナンバーワンとなった。また、ウイルスセキュリティの分野では、今年7月に発売した「ウイルスセキュリティZERO」の人気に支えられ、本数シェアが昨年の3位から、今年8月には27%のシェアを獲得し、2位に上昇。金額シェアも、05年の6.5%から、今年8月には20.2%にまで高まっています。

 量販店でも、ソフト売り場に展示するだけでなく、PC売り場にもウイルスセキュリティZEROを展示し、PC本体と同時購入を進めてくれるという例が出ています。また、複数台のPCを所有している人がかなり増えてきていますが、セキュリティソフトの更新時期になると数万円の出費に追われ、頭を痛めているという声も多い。こうしたユーザーにも、更新料がO円のウイルスセキュリティZEROは高い評価を得ています。ウイルスセキュリティ分野では、35%のシェア獲得、そして、ナンバーワンを目指していきます。

――これまでは、本数ベースのシェアだけに言及していたものが、金額ベースでのシェアにも言及を始めましたね。

松田 店舗にとっては、やはり、販売金額が最大の指標になります。金額ベースのシェアは、これから強く意識していきたい。金額ベースでも上位を目指していきますよ。

●「PCで楽しめるソフト」をもっと広げたい、それが本来の姿

――コモディティ戦略では、今年はどんな取り組みをしていますか。

松田 いま、500タイトル全部展示したらどうなるか、ということに挑戦しているんですよ(笑)。

――500種類、全部ですか?

松田 さすがに常設というのは難しいので、期間を限定したキャンペーンとして全国の主要店舗で開始しました。都内のほか、北海道、九州、大阪などでも展開しています。実は、ここで大きな変化が出てきている。このキャンペーンの場合、ソフト売り場ではなく、1階の店頭に置いていただいているのですが、ソフト売り場に比べて5?6倍も売れる。ある店舗では2日間で1300本を販売しましたし、期間中2000本以上を販売した店舗もあった。私は、これであることを感じたんです。

――それはなんですか。

松田 ひとことでいえば、「PCソフトは、まだ顧客から遠い存在にある」ということです。いま、量販店の3階や4階にソフト売り場がある。以前、ソフト売り場は1階にあったんですよ。Windows95を1階に置き、その横にアプリケーションソフトを展示する、というように。それがどんどん上の階に追いやられた。本当はソフトがもっと身近に買えるようにしなくてはならない。ソフト売り場だと、当社製品では、ユーティリティーが一番売れている。目的を持って買いにきている人が多いからです。

 ところが、500種類を1階の店頭に並べたら、子供向けのソフトや学習ソフト、エンターテイメント系ソフトが売れる。私は、これが本来の姿だと思うのです。PCを楽しむためのソフトよりも、セキュリティソフトが最も売れているという現状は、やはりおかしい。もちろん、安心してPCを使っていただくためにセキュリティソフトは必要です。しかし、それはユーザーにとって見ればコストでしかない。PCを楽しんでいただくためのソフトがもっと売れなくては、PC市場は拡大しないのではないでしょうか。そうした観点から見ると、当社のQualityイチキュッパシリーズの品揃えはまだまだ足りない。もっと楽しんでもらうためのソフトが必要です。

 市場構成比の10%がセキュリティソフトとなり、あとはPCを活用したり、楽しんだりするためのソフトになる。これが理想の形ではないでしょうか。その市場構成になるためには、まだ時間がかかりそうです。デジカメと複合機を組み合わせて利用するようなユニークなソフト、現在流行っている能力開発系のソフト、そして、映画を活用した英会話ソフトなども投入したいですね。プリンタメーカーやデジカメメーカーが、PCを介さずに利用する提案を始めていますが、PCソフトメーカーとしては、もっとPCの楽しさを訴求していかなくてはならない。ここに当社の挑戦があります。「みんなワクワクパソコンソフト」というのが当社が目指す世界です。コモディティ戦略の挑戦はまだまだこれからですよ。(大河原克行)