“change”こそが原動力だ――第29回

千人回峰(対談連載)

2008/10/27 00:00

古河建純

古河建純

ニフティ 常任顧問

「変わる」ということ

 奥田 「変わる」ということについて、深い考えをお持ちのようですが…。

 古河 何事も10年間同じということは、いまの世の中ではあり得ません。先日、ある政治家が「それは党のルールだから変えられない」と言っていましたが、それこそナンセンスです。オバマ候補がここまで台頭してきたのは、演説がうまいからではなく、新しい制度や手法をどんどん取り入れて、変えていったからなのです。

 インターネット業者にできることは、手段を提供することだけです。そこで、政治なりそれぞれの業界の人たちがそれを利用して、変わらなければならないと思います。そうして、それぞれが世界における日本の競争力を高めていく。政治に競争力という言葉がふさわしいかどうかは別にして、いまの日本の政治の競争力は最低レベルです。だからこそ、「変わる」という意識が強く求められるといえるでしょう。

 ニフティは2年前に上場しましたが、接続サービスだけでなく上位レイヤのサービスを提供するために、ニフティ単独ではなく多くの企業とアライアンスを組む必要性を感じたというのが、その理由のひとつです。接続事業は大きな収益基盤ですが、今後の伸びはそれほど期待できません。そこで当社も変わるため、方向転換を図ったという経緯があります。

 いずれにせよ、オバマが言った“change”という言葉は一番いい台詞だと思います。もちろん、変わるということは、既得権を手放し、自己否定を伴うため、つらいことには違いありません。しかし、そうしなければどこの世界でも生き残れないのです。

 奥田 「Web2.0」の時代になり、インターネットの世界も進化してきました。今後どのように変化するとお考えですか。

 古河 「Web2.0」というのは、インターネットが第2コーナーにようやく差しかかったというレベルを指すものと私は考えています。ですから、まだまだ進歩すると思いますし、他の業界と組むことによって新しいものをつくり出す可能性を秘めていると感じています。

 ただ心配なのは、「ネットはタダで利用するものだ」というイメージが広がっていることです。つまり、会員からお金を集めて事業を行なうことがむずかしい環境になってしまったため、しっかりとしたサービスやサポートを提供できなくなる可能性も考えられるのです。「オープン、フリーなものをつぶすな」という声もありますが、事業として発展させるためには、それだけではいけないと思いますね。

 奥田 今日は、非常に意義のある、興味深いお話を聞かせていただきました。ありがとうございました。

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Profile

古河建純

(ふるかわ たつずみ)  1942(昭和17)年11月17日生まれ。1965年、慶應義塾大学工学部計測工学科卒業、同年、富士通信機製造株式会社(現・富士通株式会社)入社。情報処理事業本部企画部計画部長、パーソナルシステム事業本部長代理などを経て、94年、取締役就任。2000年、常務取締役。01年、ニフティ株式会社に移り、02年、代表取締役社長に就任。07年、代表取締役会長。08年、常任顧問となり現在に至る。