「家業の哲学」を経営に生かす――第26回

千人回峰(対談連載)

2008/08/04 00:00

山田哲也

山田哲也

サンワサプライ 代表取締役社長

「サンワ2.0」という新しいステージ

 奥田 今も同じ哲学でやっておられるのですか。

 山田 いや、いまは少し違います。「サンワ2.0」、つまりサンワサプライにとって次のステージに差しかかっています。業界全体を見ても、30年の時を経てすべてが変わりつつありますからね。

 昔はスタンドアローンでしたが、いまはネット時代になって、すべてがつながっています。そしてパソコンだけがネットワークされるのではなく、いろいろな機器がネットワークに組み込まれる。次世代に入って、それが本当の意味での実用の時代に入ったといえるでしょう。それも単一機能ではなく複合機能になってきた。つまり、ハード、ソフト、ユースウェアが一体にならなければ商品化できない。たとえば、iPhoneですが、キーを押すのではなく指先で情報画面を展開させるというのは、やはり次のステージの発想だと思うんですね。

 だから、いまは次のステージにうまく移れるような方向を探っています。それと同時に、立ち上げの時代のような私の独断で物事を進めるのではなく、ある程度の説明をし、コンセンサスを得て、各部署の連携をとるということが必要になってきました。それはもちろんすでにやっていることですし、いわば普通の会社になるということですね。

 ただ「サンワ2.0」といっても、過去を否定するものではありません。いままでは100点が取れて、それはよかった。そして次のステージでも100点が取れるようにする、という発想でいます。

 奥田 ふたりのご子息が跡継ぎということになると思いますが、「サンワ2.0」にあたって、会社の事業体としての方向性をどのように考えていますか。

 山田 出発点だけは本社と上海という形にしましたが、やる本人たちが、自分たちのキャパシティ、熱意、方向性に合わせて、会社の方向性を決めるのが「2.0」だと思っています。そうでないと、事業は続きません。

 これからの30年、40年で大きな変化が必ず起きると思います。そのときに、その波に合わせて事業を行なっていくためには、それなりに自分自身で考えた方法を持っておく必要があります。他人の意見も参考にするものはすべて参考にし、客観的な立場で見るべきものは客観的に見るべきです。けれど、最後は自分の考え、自分の判断だと思いますね。

 バトンタッチの時期はいつでもいいのですが、流れに任せようと思っています。実際にはまだまだ「三寒四温」という感じです(笑)。

 奥田 「2.0」で思い出したのですが、はじめて「セカンドライフ」について私に教えてくれたのは山田さんでした。

 山田 これからの時代、やはりベースとなるものは、IT、ネットワーク、コンピュータパワーといったものであると私は考えています。これらは、知的要素を乗せたひとつの強力なインフラといえるでしょう。

 ITの強みは、シミュレーションができること。バーチャルワールドがつくれるわけです。たとえば、第三次世界大戦をシミュレートしたとすれば、それがいかに悲惨な結果をもたらすかが誰にでもはっきりと理解でき、そんなことはやめようということになる。だから、いまバーチャルワールドにはすごく興味がありますね。

 実は、6つの世界を想定してみたんです。それは、いま私たちが生きている現実の世界、バーチャルなセカンドライフ的世界、そして重力のない宇宙の世界で、それぞれにハード的な表の世界と、精神とか思考とか心のありようといった裏の世界があると考えているんです。3レイヤー×2ですね。もちろんこれだけでなく、もっと別の世界もあるかもしれません。いずれにせよ、そのなかで、私たちは人間としてうまく生きていくことが求められると思います。

 コンピュータのなかった昔は、バーチャルな世界は絵に描くぐらいのもので、絵を動かすこともできなければ、その情報を共有することなど不可能でした。仮想社会の「セカンドライフ」は事業としては未知数ですが、大きな可能性を秘めており、バーチャルといえども、どこかで現実社会に関係してくるように思いますね。

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