国の安全のため、日本は独自のセキュリティソフト持つべきだ――第25回

千人回峰(対談連載)

2008/07/22 11:27

成田明彦

成田明彦

セキュアブレイン 社長

 強運の持ち主だと思う。転職はすべて、自分の意思と言うよりも外部からの働きかけによって行われたが、そのタイミングは絶妙で、すべて成功した。最終的には59歳で起業、「日本発のセキュリティソフト」の開発に情熱を燃やす。「3年半をかけて種まきをしてきて、どうやら形になってきた」と先行きに自信を示す。【取材:2008年4月17日、セキュアブレインのオフィスにて】

 「千人回峰」は、比叡山の峰々を千日かけて歩き回り、悟りを開く天台宗の荒行「千日回峰」から拝借しました。千人の方々とお会いして、その哲学・行動の深淵に触れることで悟りを開きたいと願い、この連載を始めました。

 「人ありて我あり」は、私の座右の銘です。人は夢と希望がある限り、前に進むことができると考えています。中学生の頃から私を捕らえて放さないテーマ「人とはなんぞや」を掲げながら「千人回峰」に臨み、千通りの「人とはなんぞや」がみえたとき、「人ありて我あり」の「人」が私のなかでさらに昇華されるのではないか、と考えています。
株式会社BCN 社長 奥田喜久男
 
<1000分の第25回>

※編注:文中に登場する企業名は敬称を省略しました。
 

コンピュータの「コ」の字も知らずにユニバックに入社

 奥田 大学は慶応の商学部ですか。まじめな学生だったんでしょうね。

 成田 いえいえ、大学のそばまでは行くけど、校舎には入らない、そんな生活を4年間続けていましたね。学生運動とかスポーツをやっていたわけでもなく、いま思うと無意味な4年間だったなと…。そんな状態ですから、就職に際して著名企業への推薦状などもらえませんでした。

 奥田 社会人のスタートは確か、日本ユニバックでしたね。

 成田 父の関係で、こんな会社があるがどうだという話になり、入社することにしました。それまで、コンピュータの「コ」の字も知りませんでしたが、調べて見ると将来性がありそうだなと思いました。ただ、コンピュータがなくてはすべてが成り立たないほど世の中に貢献するようになるとは、想像もしていませんでしたがね。

 奥田 部署はどこだったんですか。

 成田 営業で、製造業を担当しました。自動車関連の企業などを積極的に回りましたが、工場は交通の便の悪いところにあるでしょう。夏などは、汗だくになりながら歩き回ったものです。ユニバックという会社名もそれほど知られていたわけではなく「ハンドバック!? そんなもんいらないよ」と断わられたりして…。

 奥田 最初に売ったマシンを覚えておられますか。

 成田 当時のユニバックは9000シリーズ、1100シリーズなどを擁し、とくにオンライン・リアルタイムシステムでは世界の先頭を走り、IBMをも凌いでいました。

 私は、IBM機のリプレースを狙ってあるメーカーに9000の売り込みをかけていたんですが、最初に売れたのはPCS(パンチカードシステム)のカードをマージする機械でした。月額レンタル料は70万円。9000シリーズなら最小モデルでも月額150万円になったけれど、残念ながらそこまではいかなかった。でも、サポートに力を入れ、最終的にはメインフレームのリプレースにこぎつけることができましたよ。
 

米国駐在で人生観変わる

 奥田 米国にも行かれたのでしたね。

 成田 1978-82年の間、米UNIVAC本社で仕事をしました。米国企業のコンピュータの先進的利用方法を研究して日本に報告するとか、日本のユーザー企業の担当者を招いて工場や研究所の案内をしたり、米国に進出している日本企業へ売り込みに歩いたりといったことがメインでしたが、とにかくこの米国駐在で私の人生観は一変しました。

 奥田 ほほう。どんなふうにですか。

 成田 日本ユニバックはスペリーランド社と三井物産の合弁会社だったけれど、外資系ながら営業部はゴテゴテの日本風土の会社でした。私自身も、“会社あっての私”というふうに考えていたくらいですから。

 ところが、アメリカで経験したのは、「俺はこれだけ売れる力を持っている、だから会社にはこれだけ貢献しているんだ、その俺の力をもっと高く評価してくれるところがあれば、当然そっちに移る」という考え方でした。会社に対するロイヤリティよりも、自分の仕事に対するロイヤリティのほうが高いわけです。

 目からうろこが落ちるといいますか、「あっ、このような人生観もあるんだな」という思いを強く持ちました。

 奥田 転職することに抵抗がなくなったというわけですか。

 成田 ま、そういうことです。米国駐在の経験がなければ日本ユニバックに定年までいたでしょうね。

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