異文化を吸収、融合できたところが伸びる――第24回

千人回峰(対談連載)

2008/07/14 00:00

開發敏光

開發敏光

KKIT経営コンサルティング事務所 所長

失敗が目立つオフショア開発

 奥田 海外のソフトメーカーを活用するオフショア開発はそうしたソフトの大規模化が背景にあるわけですね。

 開發 そうです。分散開発の一環として海外にリソースを求めようとするのがオフショア開発ですが、実際には成功例をほとんど聞きませんね。例えば、日本、中国、インドの会社に分散発注した場合、インテグレートするとき必ずといっていいほど失敗しているんです。当初は、人件費の安い海外で開発したほうが開発コストが安くて済むなど、安易な発想だったわけですが、ソフト開発には文化の違いが出てきてしまうんですよ。育ちの違う異国のソフトをインテグレートするとき、協力関係がうまく機能せず齟齬が出てきてしまう。プロジェクト管理の未熟さが露呈するわけです。

 奥田 文化の違いですか。

 開發 そうとしか表現できません。本来、日本人はソフト開発には向いていると思うんですよ。協調性があり、誰かが困っているときは自分を犠牲にしても手助けするという気風があるでしょう。ソフト開発にはこれが向いているんです。とくに分散開発してきたソフトをインテグレートしようとするときなどには、こうした協調性、信頼に基づいた結束がものすごく大切になるんです。

 奥田 ただ最近、その気風が希薄になってきてるようにみえますね。

 開發 そうなんですよ。私もそれを心配してます。

 ところで、さっき文化の違いと言いましたが、じつはソフトの価値を高めたり、大規模システムのプロジェクト管理を高度化するためには、異文化に学び、その融合を図るというのは極めて重要なテーマだと考えているんですよ。異文化がつながるといいものができる。これは芸術の世界だけの話ではなく、もの作り、とくにソフト開発においては重要だと思っているんです。

 奥田 混血児には美人が多いといいますが、それと同じですか。

 開發 そうそう。情報というのは使わないと腐ってしまい、組み合わせることで新しいものが生まれてくるんです。しかもその組み合わせは、異質のもののほうが情報量は大きく膨らみ、新しいアイデアに結びつく可能性が高いんです。

 いま私がコンサルティングで関わっている先では、同じ仲間と何度も飲みに行っても、同じ新聞だけを読んでる人間が集まっても新しいアイデアは生まれないよ、とよく話します。とにかくこれからは異文化を吸収し、新鮮な情報で知恵を結集したところだけが大きく伸びていくことになるでしょう。

 奥田 コンサルタントとしては、ほかにどんなことを強調なさってますか。

 開發 他社とはひと味違う技術やサービスを持とうといってます。御社は何に強いんですかと聞かれて、即座に回答できないようでは生き残れなくなるのは目に見えています。

 奥田 ありがとうございました。今後も独自のものの見方、考え方をまとめて、広めていってください。

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Profile

開發敏光

(かいはつ としみつ)  1939年4月生まれ。長野県松本市出身。1963年早稲田大学第1理工学部卒業、同年東京芝浦電気(現・東芝)入社。ソフト開発部長、技師長を経て、1993年東芝退職。東芝ソフトウェアエンジニアリング(現・デジタルメディアエンジニアリング)の社長など歴任。1999年三井造船顧問。2006 年6月に三井造船退職と同時にKKIT経営コンサルティング事務所を開設し現在に至る。