今度はオンラインゲームに挑戦――第20回

千人回峰(対談連載)

2008/04/14 00:00

梶並伸博

ベクター 代表取締役社長 梶並伸博

成長期に入ったオンラインゲーム

 奥田 それはそうと、オンラインゲーム市場というのは成長市場なんですか。

 梶並 2000年にはなきに等しかった市場ですが、ここ数年は年率30%以上の成長を続けています。

 日本の場合、多様な娯楽手段があるため、オンラインゲームにのめり込む人は少ないという背景があるのですが、面白いゲームさえ登場すれば、もっともっと普及していくでしょう。

 奥田 現在のタイトル数、市場規模はどのくらいなんですか。

 梶並 日本では約200本がリリースされています。課金方法は、通常の月額課金と、基本料金は無料でアイテムに課金するアイテム課金があります。アイテムというのは、プレイヤーが使う道具のことで、使うアイテムによってゲームの楽しみ方が変わってきます。

生き残れるのはせいぜい10社

 奥田 競争は厳しいのでしょうね。

 梶並 参加しているメーカーは約90社ほどですが、先行した韓国や台湾では約10社ほどに集約されてきました。日本でも淘汰が進み、生き残れるのはやはり10社ほどになるでしょう。

 奥田 生き残る決め手はどんなところにあるとみていますか。

 梶並 タイトル、プロモーション、運営が大事と考えています。まず1本は当たるタイトルを持っていることが前提でしょう。現在、当たっているタイトルは40億円くらい稼いでいますね。いまのところ当社は9タイトルを持っています。今後は他社との合併・吸収などを積極的に行い、タイトル数を増やしていくつもりです。

 次にプロモーション、これも大きな課題です。最初はタイトルが少なかったので、ユーザーの側で見つけてくれていたのですが、今は供給過剰で、知ってもらうのにかかるコストがどんどん上がっているんです。当社の場合、それなりに知名度はあるので集客はできていると思っています。

 そして運営の面。これについてはゲームマスターなどと呼ばれるプロフェッショナルを育てていく必要があります。その意味もあって、(2007年)9月1日付でオンラインゲーム運営事業を子会社ベルクスに統合しました。

 映画などは完成されたものが公開されますね。それに対して、オンラインゲームはユーザーが参加することで完成度を高めていく世界なんです。ユーザーの要望をどんどん追加していき、完成度を高めていくわけです。ただ、ユーザーが参加できるということは悪意を持った人間-ボットと呼ばれている連中-がバグを忍び込ませるなど嫌がらせをすることもできることを意味します。

 こうしたボットを排除しつつ、楽しめるイベント、企画をどんどん追加していくことが重要だと考えています。

 奥田 いろいろな事業に挑戦してこられて、いまはオンラインゲーム。この世界でもリーダーになってください。期待しています。

前へ

Profile

梶並伸博

(かじなみ のぶひろ)  1957年、栃木県宇都宮市生まれ。80年3月、東京工業大学社会工学科卒業、同4月、栃木県庁入庁。81年、日経マグロウヒル社(現:日経BP社)入社。89年、ベクターデザイン設立、社長に就任。2000年、ナスダック・ジャパン(現:ヘラクレス)に上場。