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「母の日」の贈り物でよみがえった、「買い物には夢がある」という気持ち

販売戦略

2021/05/22 17:00

【家電コンサルのお得な話・45】 先日の「母の日」では、皆さんも大切な人と色々な「共通の思い出」をつくられたことだと思う。筆者は妻に「頭皮エステ」を贈った。モノを贈るのには当たりはずれがあり、以前の失敗した経験から、今回は喜んでくれるかどうか、毎回、結構な不安を感じる。しかし、喜んでもらったときの感動は大きい。そう、買い物には夢があるのだ。


 妻に贈り物をする際は、毎回不安を覚えるが、今回はテレビを見ていた妻が「これ(頭皮エステ)って気持ちいいよ」と、以前どこかの店で体感したときの感想をつぶやいていたことを覚えていたため、大成功だった。この妻の笑顔を見て思い出したのが、「買い物には夢がある」という気持ちだ。

 若かりし頃のソニーのウォークマンから始まり、CDラジカセ、ビデオデッキ。そして、30数年前の結婚したての頃、ドラマで使われていた「当時、出たてのコードレス電話(約6万円)」を購入するため、二人で貯めたお金を握りしめて向かった家電量販店で、実際に商品を手にした時の感動もよみがえる。

 妻と共通の「がんばった」という達成感や「早く手に入れられた」という優越感、これからさらに「生活が便利になる」という期待感など、いろんな感情が湧き、確かにそこには「夢」があったと思う。
 

 それからしばらくして、筆者は家電量販店に転職したが、そこで感じたことが二つある。ひとつは「最新の家電製品に囲まれて働ける嬉しさ」、そしてもうひとつは「家電製品の購入にあたって、妻との共通の買い物体験がなくなった寂しさ」である。

 家電量販企業で勤めだすと、家電は従業員販売で購入できるのに加え、商品知識がある分、商品選びがどうしても機械的になり、コードレス電話を選んだ時のようなワクワク感は全く無くなってしまった。特に、妻は筆者が家電量販企業を退職するまで、家電量販店に足を運んだことがなかったと思う。

 これに加え、いつしか家電製品も前述のようなこれまでの生活になかったような活気的な新カテゴリーの商品が生まれにくくなり、単に「壊れたから買い替える」という買い替え中心のものとなったことも、買い物の楽しさの半減につながっている。

 しかし、カテゴリーは従来通りでも、省エネ性や使い勝手などの機能は進化している。家電量販店にありがちな「機能・スペック」、何ができるという「利点」の説明だけでなく、「使って喜ぶ顔」、プレゼントのように「貰って喜ぶ顔」、その笑顔を見て贈った人も得られる「満足感」「充実感」などを顧客に想起してもらうことがメーカー、販売店にとって大切なことだと思う。

 メーカー、販売店に「夢」を語ってもらえるよう、これからも研修の現場では、テクニックだけでなく、「気持ち」を伝えていきたい。その大切さを再確認できた「母の日」だった。(堀田経営コンサルタント事務所・堀田泰希)


■Profile

堀田泰希
1962年生まれ。大手家電量販企業に幹部職として勤務。2007年11月、堀田経営コンサルティング事務所を個人創業。大手家電メーカー、専門メーカー、家電量販企業で実施している社内研修はその実戦的内容から評価が高い。