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事故被害を減らす柔らかボディの幻の車、「rimOnO」を実際に触ってみた!

時事ネタ

2019/07/14 17:00

 近ごろ、交通事故に関する報道がにわかに増えたと思えるが、事故の被害を減らすにはどうしたらいいのか。その一つの答えとして、2016年頃に注目を集めていたのが、当時開発中だった発泡ウレタンでできた柔らかボディの電気自動車「rimOnO」だ。現在は開発を休止しているが、試作機「PROTOTYPE-01」に出会う機会があったので、実際に触ってみた。

開発休止中の幻の車。
発泡ウレタン製ボディが特徴的な二人乗り電気自動車「rimOnO」

 rimOnOとは、先述のとおり、柔らかいボディの電動自動車。サイズは全長2.2m、全幅1.0m、全高1.3mと小ぶりで、車両重量は320kgと車にしては超軽量。最高時速は45km、走行距離は50kmが目標だ。乗車定員は大人二人、または大人一人と子ども二人。電動アシスト自転車のような交換式バッテリーを動力源にしている。

 発案したリモノの伊藤慎介代表取締役社長CEOは、「高齢になっても要介護者の送迎や生活環境など、さまざまな事情で運転免許を手放せない人は少なくない。そうした人でも安心して乗ることができる車として開発した。また、ちょっとした運転ミスで車に小さな傷をつけてしまう場合は多い。そのような、小さい事故に遭遇しても、布製のボディなら被害を和らげることができる」と開発コンセプトについて話す。
 
リモノの伊藤慎介代表取締役社長 CEO

外観は柔らかく、可愛らしく

 ボディに触れてみると、少し硬いスポンジのような感触で車とは思えないほど柔い。フレームは金属製。屋根には船の帆のように水を弾く素材を使用している。伊藤社長は、「可愛らしい見た目を追求して、スマートフォンのカバーのように、好みに応じて着せ替えることができるようにした」と楽しそうに話す。細かいステッチなども可愛さの演出に一役買っている。

 タイヤにはバイク用タイヤを採用してコストを抑えた。手入れの手間を軽減するため、樹脂製のエアレスタイヤの採用も検討していたという。
 
タイヤにはバイク用タイヤを採用。
コストを抑えるための工夫が随所にみられる

内装は危険を排除した設計

 足腰が衰えても乗り込みやすいように、運転席は回転式になっている。乗り降りの際は横に向けることで座りやすく、そして立ち上がりやすい設計だ。座ってから座席の下にあるノブを回すとロックが解除され、方向を変えることができる。座る前は足元が狭いと思っていたが、実際に座ってみると足を伸ばすことができるほど広い。それどころか、いくら伸ばしてもアクセルもブレーキも見つけることができない。
 
運転席は回転式で、足腰が思うように動かなくても乗りやすい設計

 それもそのはず。アクセルやブレーキはバイクと同じバーハンドルに集約されているため、足元にはなにも設置していないのだ。この仕様なら、高齢者と若者に多いとされる「アクセルとブレーキの踏み間違え」を防ぐことができる。また、ハンドルが丸くないので、タイヤの方向を見失うこともない。
 
バーハンドルに設置されたメーター類もシンプルなデザイン

 フロント部分には、カーナビ代わりのタブレット端末スタンドや、USB端子を備える。スピーカーを接続すれば、好みのステレオ環境を整えることができそうだ。後部座席の下にはバッテリーが積まれているほか、座席を倒せば少し大きな荷物も積みこむことができる。
 
後部座席を倒せば大きな荷物を積みこむことができる

 ショールームの中で車両を押してもらいながらハンドルを切ってみると、素直に曲がることができた。バーハンドルで車を運転したことはないが、これなら初めてでも安心して運転することができそうだ。

 実証実験でもrimOnOは好評で、「ことあるごとに商品化について、多くの問い合わせが寄せられる。開発を休止した後も連絡が入るほど」と伊藤社長は話す。特に、70代後半でも運転しなければならない人、そうした人の家族、年配の要介護者を抱える人などからが多いという。「需要はあるが、応えることができないのはもどかしい」(伊藤社長)。

 「量産も想定して、ベンチャー企業でも作りやすいように素材や設計を工夫していた」と、伊藤社長は明かす。それほど計画が進んでいたrimOnOがなぜ、開発休止に追い込まれたのか。次回はその理由に迫りたい。(BCN・南雲 亮平)